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第一章

悪夢です。(7歳。)

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お父様、お母様、お兄様がいるであろう部屋まで私は早足で向かった。

部屋の前に着くと、ロマが何も言わなくても身なりを整えてくれる。

私を襲うのは不安と緊張と胸の高鳴り。

私はドキドキと煩い胸を抑え、重い扉を開いた。

「おぉ、きたのかルーナ。よく起きれたなぁ。」

「あら、ルーナ。まだ寝てなくて大丈夫??」

いつもより早く起きてきたルディリアナを見て驚いた表情を変えない二人。

「えぇ、もうすっかり目は覚めてます!だって、お兄様がいるんですもの!」

いそいそとお父様とお母様のソファーの前に座るお兄様に目をやり、その横にルディリアナは腰掛けた。

金髪に碧眼、更には190近くあるであろう高い身長。笑うとクシャッとなる所もちょっと低めの声も何もかもが好みなロベルト・ディアン伯爵。

お兄様と呼んでるが、実際本当の兄ではない。

10歳離れたお兄様は、ルディリアナが小さな小さな時から遊び相手になってくれていた。

ロベルトの父とマルフェスの仲が良く、よく城にロベルトを連れてきては、領地の話や税の話を二人でしていた。

そして、その間のルディリアナの遊び相手をしていてくれたのがロベルトであった。

身長も高く、顔も良い。だが、ルディリアナにはロベルトの一番好きなところがある。

「おはよう、ルーナ。」

ルディリアナを見てクシャッと顔に皺を寄せ微笑むロベルトを見て、ルディリアナは笑みを浮かべた。

「お兄様!!!!お会いしたかったですわ。」

そう言ってルディリアナはロベルトに駆け寄ると、その大きな体に抱きついた。

あぁ、堪らないわ。簡素なシャツ一枚だけをきたロベルトに抱きつくだけで、伝わってくる。

ロベルトの服の下には、きっと綺麗に割れた筋肉があるのだ。

その硬い筋肉を触ると、ルディリアナはどうしようもなく、幸せにな気持ちになる。

何を隠そう、ルディリアナは7歳にして、超がつくほどの筋肉好きであった。

自分の筋肉をルディリアナが好いているとは知らず、可愛い妹のような存在に抱きしめられて満更でもないロベルトは可愛い少女の頭をそっと撫でてやる。

プラチナブランドの色をした痛みの知らないその髪を掬えばサラサラと自分の指からこぼれ落ちていく。
自分を見て嬉しそうに弧を描く宝石のように青い瞳は溢れるほど大きく、パチパチと目を閉じるたびに動くまつ毛は真っ白な肌に影を落とすほど長い。

「また綺麗になったね、ルーナ。」

ロベルトにそう言われると、ルディリアナの頬は少し赤くなった。

だが、そんな幸せな時間を過ごせたのもその一瞬のひと時である。

家族団欒の中に突如コンコンっとドアをノックする音が部屋の中に響いた。

どうしたのかとドアの方を見ると、そのドアはゆっくりゆっくりと音も立てずに静かに開く。

なんだかとても嫌な予感はしていたのだ。

そして、「失礼します。ルーナの愛しいお兄様が来るとの事だったので、挨拶に伺いましたが、、その手は何でしょうか?」と言った怒気を孕んだ声が聞こえる。

私の頭を撫でるお兄様の手がぴたりと止まった。

先程までの団欒な空気はどこにいったのか、一瞬でその場は凍ったかのように静まった。

お父様とお母様を見るとやばいと言わんばかりに目をキョロキョロとあちこち泳がせて、大変焦っていることがわかる。

私を撫でていたお兄様を見れば、ダラダラと汗を流してこちらもまた焦っていることが伝わってきた。

どうしたもんかと思った。

家族団欒の中にまでこの人は何なのかと思った。

「せっかくお兄様に会えたのに!!何なのですか!いつもいつも私の邪魔ばかり!貴方なんて嫌いです!」

静かな部屋に私の声だけが響く。

父も母も、お兄様でさえも、その声を聞きやばいといった表情になっている。

楽しそうに意地の悪そうにニコニコと笑いながら微笑む男の子以外は、皆恐怖を顔に浮かべた。

「ルーナ、僕は君が大好きだよ。」

その声はいつもと変わらない口調。

なのにどこか怒気を孕んでるふうに感じたのは、私の気のせいだろうか?

「私は嫌いです!」

そう言い返せば、男の子の眉がピクリと動いた。

いつもの笑顔を貼り付けている男の子の笑みが、少し崩れた瞬間であった。

「お兄様!!助けて!怖い!」と抱きついて顔を見上げると、お兄様は困った顔をする。

そして、スッと私を自分から離すとトンッと私の背中を押し、私は別の誰かに抱きしめられた。

見なくてもわかる。最悪だ。最低だ。

お兄様に裏切られた。

私を抱きしめるのは間違いなく、あの男で私を見下ろし「悪い子にはお仕置きだね。ルディリアナ」と恐ろしいほど優しげな笑みを浮かべた。

それをみたルディリアナは、朝見た悪夢を思い出していた。

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