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第3章 つづき2

入隊試験 つづき2

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食堂からロビーに出てくるヤマト。
 「そこの錨マーク」
 「情けないよね。子供や女性にたしなめられるなんて」
 ふいに声をかけられ振り向くヤマト。
 見ると背の高い男性と細身の女性がいる。二人とも機械生命体である。
 「別にあんたなんかいなくてもいいし、やめちゃえば」
 「おまえがここにいれる理由はバルベータス殿のおかげなんだよ」
 意地悪く言う男女。
 歯切りするヤマト。
 なんで自分がここまで言われなければならないのか。
 「掃除屋やってたんだからさ。別にやめればいいのよ」
 「俺たちの仕事をとるんじゃねえよ」
 ののしり舌打ちする男女。
 ヤマトは思わず背の高い男を殴り、押し倒して馬乗りになる。せつな細身の女に蹴られヤマト
はひっくり返った。
 「ここではチャラ男はいらないの」
 見下すような目で言うと女はさっきの男と腕を組んで言ってしまう。
 「なんなんだよあいつら」
 舌打ちするヤマト。
 「レトロな船」
 「オンボロ船」
 「必殺技以外何もない船」
 その横を試験前にからかってきたくだんの三人組が通り過ぎていく。
 「アルビス遺跡の仕事が終わったらやめてやるよ」
 ヤマトは突き放すように言うとロビーを出て行った。
 駐機場に行くとバルベータス、バスチアン
デビット、アイシャ、リオンとクロウ・タイタスがいる。
 「惑星をアルビスの管轄しているカイロス星へ寄って許可を取る。全員乗ってもらう」
 バルベータスが言った。
 
 数十分後。
 カイロス星付近の宙域にワープしてくるGフォースの調査船。
 調査船は惑星軌道上にある宇宙コロニーのドックへ入港した。出入口のゲートにカイロス人
兵士やコロニーで働く従業員たちが忙しく行き来している。
 カイロス人は鳥から進化した異星人である。
 体は人間。頭部と顔はフクロウやサギ、猛禽類と人間のようにいろんな顔とクチバシを持っている。
もちろん体毛は羽毛に覆われている。サギやカナリア、フクロウといった頭部を持つカイロス人が行政
や商業を担当してワシやタカといった猛禽類が警備員や兵士といった職業を担当。飛べない鳥が
体力を使う仕事をしていた。
 ゲートをくぐり二階の商業施設に入るとそ商業エリアは観光客でごったがえてしてい
た。バルベータスたちはホテルに入った。
 バルベータスはカウンターで入室手続きをする。
 ヤマトたちはロビーのソファに腰を下ろす。
 「ヤマト。ブルーウオーターにいてくれるの?」
 リオンが無邪気な顔で聞いた。
 「いや・・・そのわからない」
 言いよどむヤマト。
 解決策が見つかれば地球へ戻る予定だ。
 「ヤマト。人に何か聞く時は”何か手伝うことはありますか?”とか”ありがとう”とか敬語を使えばある
程度人の話の輪に入れるのよ」
 アイシャは微笑むと彼の胸に触れる。せつなヤマトの頭の中で水の波紋が広がる。
 「ヤマト。友達になってほしいなら殴ったらだめだよ」
 たしなめるリオン。
 「なんで俺が十一歳のガキと十八歳の小娘に説教されないといけなんだよ」
 ムッとするヤマト。
 「その子供みたいな所を治せって言っているんだよ」
 すまし顔で言うデビット。
 歯切りするヤマト。
 タイタスとバスチアンはため息をついた。
 ホテルの隣のカフェでカウンター席に座っていた人間の男性が突然倒れた。
 異星人たちがのぞきこむ。
 男性は口から泡を吹き目を剥き痙攣をはじめる。胸郭が盛り上がり皮膚を破って金属で出来た大蜘蛛
が出てきた。全長は三〇センチ位で赤く光る複眼が八つもある。
 おののきあとづさる客たち。
 金属蜘蛛の触覚から赤いレーザーが発射される。手前にいた女性が頭を射抜かれ倒れる。
 悲鳴を上げて逃げ出す客たち。
 金属蜘蛛は容赦なく逃げる客やバーテンたちを赤い光線を連射した。
 数人の客が胸や頭を撃たれて倒れた。
 「なんだ?」
 ホテルのロビーにいたヤマトたちは振り返る。客たちが逃げていくのが見えた。
 置いてあった携帯電話が変形して金属の蜘蛛になり、オブジェのバイクが変形してロボットになった。
ボデイは黒色で無骨な金属骨格の上に円筒型の頭部がのる。頭部には顔はなく海中電灯のランプ部分
のようなものがくついており不気味に赤く光っている。
 「捕食者じゃ!!」
 駆けつけてくるバルベータス。
 「捕食者?」
 聞き返すヤマト。
 「変形するロボットだ。こいつらも一種の機械生命体なんだ。でも違うのは侵略することしか頭にないこと」
 バスチアンは片腕を銃に変えて飛びかかってきた金属蜘蛛そ撃つ。
 「集団で目星をつけた惑星を襲って占領して惑星自体を改造して資源を吸い尽くしたら他の惑星を襲う
連中だ。図書館で資料読まなかったのか?」
 デビットは近づいてきたロボットを撃った。
 「読んでなかった」
 きっぱり言うヤマト。
 「君は失格だね。Gフォースやエルダーサインの隊員は任務に着く前に赴任先の情報は読んだり
知っておくのは当たり前だよ」
 バスチアンは別の金属蜘蛛を撃つ。
 「調査船へ走るぞ」
 タイタスは手招きする。
 クロウ・タイタスたちはホテルを飛び出す。
 通路で置き去りにされていたスピーダーバイクが変形して二足歩行のロボットになる。
 人々は脱出ポッドに乗って次々コロニーから出て行く。脱出ポッドの行き先はカイロス星である。
 ヤマトは片腕を銃身に変えて接近してきた数体のロボットを撃っていく。
 タイタス、リオン、アイシャ、バルベータスは調査船に乗り込む。
 ヤマト、バスチアン、デビットは発着デッキからエアロックを抜けドックへ出る。人々は脱出ポッドを使って
出て行っているのかドックには誰もいない。
 宇宙へ飛び出す三人。彼らはコロニーを離れ、青白い蛍光に包まれ宇宙船に戻っていく。
 するとコロニーから金属蜘蛛やロボットが飛び出し合体して変形していく。
 調査船を捕まえるデビット。
 くだんのロボットの大群は合体して巨大な金属蜘蛛になった。
 ヤマトは艦首の砲口を向けて舌打ちした。
 巨大蜘蛛の背後にカイロス星が見えた。
 「撃てないか?地球から来た戦艦よ」
 金属蜘蛛は抑揚のない電子音で言う。
 歯切りするヤマト。
 自分の波動砲は人工天体や移動性ブラックホールを破壊するほどの破壊力がある。今発射したら
惑星を破壊してしまう。
 「それがおまえの弱点だ」
 金属蜘蛛が動いた。ヤマトが動く前に船体に金属の触手を巻きつけた。
 艦首ミサイルや煙突ミサイルに精神を振り向けるヤマト。
 ミサイルは金属蜘蛛に全部命中した。しかし大きく穴が開いても足が一本なくなっても別のロボットが
合体してその穴を補う。
 金属蜘蛛は鋭い足で船体を突き刺した。
 ヤマトの電子脳に船体が受けたダメージがすべて痛みとして送信される。
 「おまえのコアをもらう」
 金属蜘蛛は触手を船体中央部に突き刺す。
 ヤマトはくぐくもった声を上げ船体を激しく揺らす。しかし揺らしてもミサイルや主砲で撃っても主錨で
殴っても金属蜘蛛ははずれない。
 「おまえに邪魔されては困る。だから消去する」
 金属蜘蛛は笑いながら何度も鋭い足で突き刺し触手で何度も突き刺す。
 「おまえなんかに・・・コアを取られてたまるか!!」
 ヤマトは声を荒げた。せつな船体が青白いオーラで覆われ、船体中央部から二対の鎖が飛び出す。
その鎖の先端は槍のように変形して青白く輝きその鎖で金属蜘蛛を突き刺す。
 金属蜘蛛はギーという金属がこすれるような音を出して触手や足を抜いた。
 「ぬああああ!!」
 ヤマトは精神を金属蜘蛛に振り向けた。
 金属蜘蛛はもがきながら内部から破裂するように砕け散った。
 よろけるヤマト。
 船体の損傷はすぐにふさがっていく。ナイフで刺されるような痛みも消えていく。
 「アルビス遺跡はどこだ?」
ヤマトは調査船にいるバルベータスに無線ごしに聞いた。
 「安心せい。カイロス政府の許可が下りている。アルビスは目と鼻の先だ」
 バルベータスが言う。
 「こいつ自分で何をやっているか気づいているのか?」
 バスチアンは艦内無線に切り替えて言う。
 「気づいていないさ」
 デビットも小声で言う。
 ヤマトには聞こえていないが調査船のリオンたちには聞こえている。
 「その遺跡へ行くぞ」
 
 惑星アルビスのK地点に着陸する調査船。
 ヤマトたち三人は青白い蛍光に包まれて人型ロボットに変身する。
 降りてくるリオンたち。
 バルベータスはヤマトに制御装置である胸当てを渡す。
 ヤマトはその胸当てを着用する。
 「それは何?」
 リオンが聞いた。
 「制御装置だ」
 周囲を見回しながら答えるヤマト。
 「そうなんだ・・・」
 リオンは最後まで言えなかった。隕石が落下してきたからである。隕石は一つだけでなく雨のように
複数落下してくる。
 落下した隕石から手や足がニョキニョキと変形してロボットになる。無骨な金属骨格に顔のない
円筒状の頭部。顔の部分にランプカバーが不気味に赤く輝く。
 「さっきの奴らか?」
 ヤマトは身構えた。
 「いや違うグループだ。奴らは複数のグループで移動している。さっきの連中が呼んだみたいだ」
 バスチアンが声を荒げる。
 「あの遺跡へ入って。呼んでる」
 だしぬけに叫ぶリオン。
 「行くぞ」
 ヤマトはリオンを抱えて駆け出す。
 接近してくるロボットの大群。
 遺跡の中へ飛び込むヤマトたち。
 ロボットの足から飛び出す金属蜘蛛。
 タイタスは長剣を抜くと飛びかかってきた蜘蛛を斬った。彼が持つ剣はただの剣ではなく魔術武器である。
呪文を吹き込めば大型の魔物や邪神眷属群を傷つけられる武器である。
 バルベータスは飛びかかってきた金属の犬を呪文を詠唱しながら殴る。殴られた金属の犬は一撃で
砕け散った。
 「その魔法陣の中へ入って」
 アイシャは行き止まりの通路を指さす。
 ヤマトたちはその魔法陣の中へ足を踏み入れた。とたんに黄金色の光りに包まれて消えた。次の
瞬間別の部屋にテレポートした。
 「ここは?」
 ヤマトやバスチアン、デビットは見回す。
 敵の気配はない。教室程の大きさの部屋に古代エジプトで見るようなレリーフや絵がびっしり
描かれている。
 「ここは今までに知られていない部屋じゃ。初めてだ」
 バルベータスは壁のレリーフを触りながら満足げにうなづく。
 燭台にクリスタルを置くアイシャ。
 「超古代にやってきた我々の祖先は人類や異星人の祖先に邪神や邪神眷属群との戦い方を教え、
文明を教えた。つまり文明や魔術を教えた彼らは旧き神や翼を持つ者、星の戦士と一緒に邪神を
追って来た者たちだった」
 バルベータスは説明する。
 クリスタルが輝きだし真上にホログラム映像が飛び出す。
 そこに映るのは”古のもの”と呼ばれるかつてここの惑星の住民たちである。古のものとは木の幹
のような体にタコ足のような足と触手のような手。頭部は花のガクのようなものを持った種族である。
その種族と襲来してきた邪神クトウルーとその配下の眷属群と交戦していた。彼の高度な科学力と
技術はこの襲来に対して懸命に応えていた。しかしそれでも彼らが不利なことは目に見えていた。
徹底的に不利というときに古のものの一人がモニュメントに乗って他の星にいる仲間を予防として
宇宙に飛び出すと他の邪神が待ち伏せていた。そのあとは光とスパークの連続で説明ができない。
わかったのは古のものが邪神に負けたことは確かだった。
 「彼らはどうやって勝利したのかそれが不思議でしょうがないのだよ」
 バルベータスがつぶやく。
 映像では去っていく邪神たちが映し出されている。
 黙ったままのタイタス。
 それがわかれば勝つ方法あるのだ。
 「なぜ俺たちに映像を見せる?」
 ヤマトは疑問をぶつける。
 「それは君がいた世界ではほとんど役目が終わっていたからって言っている」
 リオンが代わりに口を開く。
 「あなたは地球での役目はほぼ終えて記念艦として博物館に展示されることになっていた。
地球では別の船がその役割をして艦長たちもその任務に就いている」
 アイシャが複雑な顔で説明する。
 ヘナヘナ座りこむヤマト。目からひとすじの涙が流れ落ちる。
 「君はクリスタルに選ばれたんだ。僕たちも選ばれたんだ」
 リオンが言う。
 「勝手に決めるなよ。このクソ石!!」
 ヤマトは目を吊り上げ大またでクリスタルに近づいた。
 「バカ者!!」
 「やめろヤマト!!」
 バルベータスたちの声が交錯する。
 ヤマトがクリスタルをつかもうとしたせつなクリスタルから赤い光線が伸びた。ズン!と突き上げる
ような痛みに身をよじりのけぞりくぐくもった声を上げた。何かがコアや生命維持装置をつかみ万力
で締め付けるようなそんな息苦しさにのけぞる。
 電子脳の中にイメージが入ってきた。宇宙空間を漂う自分。自分は戦艦に戻っている。目の前に
ひし形に輝く光が現れてその光るたくさんの触手が船体を突き刺した。
 くぐくもった声を上げてもがくヤマト。
 「やめて!!そんなことしなくても彼は受け入れるよ!!」
 ヤマトをかばうリオン。
 するとクリスタルからの光線はやんだ。
 肩で息をするヤマト。
 「あなたは一人ではないのよ」
 アイシャはヤマトに抱きつきキスをした。
 あっと声を上げるリオンたち。
 我に返るヤマト。
 アイシャの心臓の音や体温を感じた。そしてキスされている唇の感覚も。
 ヤマトは思わずアイシャを押しのけ赤面して後ろを向いた。
 あの暖かい体温といいキスの感覚。自分は普通の船でなくなっている。いやでもわかる。自分は
艦長たちのように感情をもち心がある。そして皮膚のセンサーを通して体温や心音。部屋のひんやり
感も感じるのだ。もう完全な機械生命体だ。認めざるおえない。
 「俺に何をしてほしいんだよ」
 ヤマトはクリスタルの方を向いた。
 「祭壇の間の奥にいる邪神の下僕を退治するかまたは封印を守るかを依頼している」
 リオンが説明した。
 「都合のいい石め」
 悪態をつくヤマト。
 ため息をつくバルベータスたち。
 「あの魔法陣に乗って」
 リオンは反対側を指さす。
 アイシャはクリスタルをバックに入れた。
 「持っていくのか?」
 嫌そうな顔のヤマト。
 「ここに置いておいては危険でな。ぺテルギウス大図書館に保管する。その方が安全というものだ」
 バルベータスはフッと笑う。
 フン!と鼻を鳴らして魔法陣の上に乗るヤマト。彼を追ってタイタスたちもその中に入った。次の瞬間、
姿を現したのは円形の部屋である。円形の部屋から廊下が伸びている。天井は高く壁に絵が
描かれている。その絵は邪神クトウルーやその眷属群と古のものが戦う場面である。
 その回廊を駆け抜けるヤマトたち。
 回廊を抜けるとそこは祭壇がある部屋だった。
 「やあ。ヤマト。また会ったね」
 祭壇の前にマーカスとルイス、五人の蛇人間がいた。
 「今度は何をしようとしている?」
 ヤマトは声を低めた。
 「別にいいだろ。ヤマト。君は向こうの世界でも地球を守るために奔走していた。なのになぜここでも
奔走している」
 「おまえに関係ないだろ」
 「我々なら君を元の世界に帰すことも可能だよ。でも元の世界ではなんの役にも立たない
記念艦としてね」
 はっきり言うマーカス。
 歯切りするヤマト。
 確かにそうだ。向こうの世界では危機のたびに出撃して迫る危機を解決してきた。でも長年渡って活動
して老朽化で記念艦になることが決まり最後の航海で亀裂に入りこんであの光を浴びた。あの世界では
別の新しい新造艦に取って代わっていた。
 「図星のようね。宇宙戦艦ヤマト。あなたは地球に見捨てられた。なぜこいつらと一緒にいる?」
 クスクス笑うルイス。
 「侵入者よ。おまえたちは銀河連邦、Gフォース、エルダーサインの監視下に置かれていることを
忘れるな」
 厳しい口調で言うバルベータス。
 「バルベータス。かつては英雄と呼ばれたオデッセイア将軍と呼ばれた宇宙船よ。ひさしぶりだね」
 マーカスは見下すように言う。
 「しかし今では何にも脅威はない」
 ルイスはニヤッと笑う。
 歯切りするバルベータス。
 「地球に見捨てられた哀れな戦艦よ。どうする?記念艦になるか。こいつらと一緒に行くかだよ」
 マーカスはからかうように言う。
 ヤマトは持っていたサバイバルナイフを投げた。正確にマーカスの胸に刺さる。
 「哀れな戦艦だ。おまえに帰る場所などないんだよ」
 「黙れ!俺は地球に見捨てられたんじゃない。役目を終えたんだ」
 声を荒げるヤマト。
 向こうの世界では役目はなくなったのだ。それだけはいえる。
 ルイスと蛇人間たちが動いた。
 タイタスは長剣を抜いて蛇人間の槍や剣をかわし袈裟懸けに切った。
 ルイスの蹴りやパンチをかわすデビット。
 マーカスが動いた。リオンやアイシャにはその動きは見えなかった。彼は祭壇の前に立ち遺物を見せた。
 「それは!!」
 驚きの声を上げるリオンとアイシャ。
 マーカスが持っていたのは十四個からのパーツからなる遺物である。
 ヤマトとバスチアンが同時に動いた。二人の速射を受け流すマーカス。彼は全部かわしながらニヤリと
笑い掌底を弾く。二人は弾かれ壁にたたきつけられた。
 バルベータスとマーカスが同時にパッパッと動いてマーカスに蹴られ地面に転がるバルベータス。
 ヤマトやバスチアンのパンチや蹴りをいい歩も動かずにかわすマーカス。彼の開脚蹴り。ヤマトと
バスチアンは壁にたたきつけられた。
 マーカスは祭壇の奥にある壁のくぼみにその遺物をはめた。
 扉に赤い光りの模様が浮き上がり重々しい音を立てて観音開きに分厚い扉が開く。
 「ああ滅亡の音が聞こえる」
 恍惚な顔で両手を高く差し上げるマーカス。
 タイタスとデビットが振り向く。
 タイタスの足元に蛇人間の死体が転がる。
 マーカスとルイスは笑いながら消えていく。
 分厚い扉の奥は洞窟が広がっている。奥行きや高さは暗くて見えない。途方もないほど広い洞窟だ。
その柱や壁に体長が三十センチあろうかという芋虫や体は人間なのに手足や頭部がトカゲという
生物が蠢いていた。
 「トーラスだ。邪神の下僕だ」
 バルベータスが息切れしながら立ち上がる。
 ヤマトは洞窟の中をのぞく。
 自分なら退治できる。
 なぜそう思ったかわからない。どこまで洞窟が広がっているかわからないがこれを吹っ飛
ばせるのは自分だけだ。
 「俺がやる」
 ヤマトは制御装置を外してデビットに渡して片腕をバズーカーのような砲身に変形させた。
 「最大パワーにするなよ」
 注意するバルベータス。
 うなづくヤマト。
 「気をつけてね」
 リオンが声をかける。
 「俺は大丈夫だ」
 ヤマトはフッと笑うと洞窟の中へ入っていく。
 「調査船へテレポート」
 タイタスは呪文を唱えた。彼らの姿が消え調査船の船内に姿を現す。船が上昇する。しかし遺跡の
周囲にいたロボットたちは調査船を無視して警備をしていた。
 洞窟内に魚が腐ったような臭いが漂いトーラスの大群がせまってくる。
 「波動砲発射」
 ヤマトは叫んだ。青白い光線が一気に放出された。
 遺跡の上空から離れていく調査船。
 その下界では遺跡内部から閃光が走り青白い光のドーム状の衝撃波が同心円状に広がり遺跡と
警備のロボットごと一瞬にして塵に変えた。
 「凄まじい威力だ」
 バルベータスはつぶやいた。
 「あの戦艦を造った地球人には敬服するよ。よく制御してきたな。あの爆発規模は古代魔法の
”アルテマ”や”メルトン”に匹敵するかそれ以上だ。プラズマ爆弾と同等の威力を誇る」
 うなづくタイタス。
 調査船のレーダーに船影が映る。
 海上を航行する船そっくりの形といい無骨な砲身や艦橋といいどこから見てもヤマトである。
 「吹っ飛ばしてきた。全部退治したから大丈夫だ」
 ヤマトは無線ごしに言う。艦橋のスクリーンに調査船の船内映像が入る。
 「よくやったと言いたいがおまえさんどこへ帰る?Gフォースをやめてもいいが借金は払ってもらう。
Gフォースの保護を離れると街金に権利が移る。トイチで払ってもらうから十日で一億になるな」
 しゃらっと言うバルベータス。
 「あなた本当にやる気あるの?」
 疑問をぶつけるアイシャ。
 どうしようやめさせられてしまう。
 「え?なんで?」
 ヤマトが聞いた。
 「あのバカが」
 あきれかえるバスチアンとデビット。
 こいつはどこまでわかっているのかわからない。
 「なんでって、あなたがGフォースをやめさせられないように言っているだけよ!!」
 イライラをぶつけるアイシャ。
 「君はやめようとしていたんでしょ」
 ズバッと言うリオン。
 黙ってしまうヤマト。
 「うるさい奴ら。俺はやめる気はないね。まだ借金払ってないからな。数千万もの大金掃除屋で
派遣じゃ払えないだろ」
 つっけんどうに言うヤマト。
 顔をほころばせるバルベータス。
 「ブルーウオーターに帰るぞ。地球みたいにそっくりなのがそこなんだから砂漠の星には帰らない」
 はっきり言うヤマト。
 自分でもこれほどはっきり言ったのは初めてだ。それに掃除屋に戻るよりはマシだ。
 「じゃあGフォースやめないんだ」
 無邪気な顔で言うリオン。
 「あのクソ石にはムカつくけど他にやることがないからな。それにあのマーカスや邪神のゲテモノ
をなんとかしないとまた何かやりそうだから俺はやめる気はない」
 はっきり言うヤマト。
 「それを聞いて安心だ。帰るぞ」
 バルベータスは言った。
 アルビスの月の裏から飛び出す一隻の船。
 船型は葉巻型である。船内にマーカスとルイスの他に魔物たちが乗っていた。
 「マーカス、ルイス。やっかいなものが迷い込んできた」
 魔物のリーダーらしい者が口を開く。頭部はタコを思わせ体は人間に似ているがゴム状のこぶに
覆われている。クトウルーの眷属である。
 「そう思えますか?」
 マーカスの顔から笑みが消える。
 「なぜそう思えますか?」
 ルイスが聞いた。
 「あの波動砲は我々を一撃で葬り去る。それにあの戦艦の行動は周囲に影響を与える。我々も
計画を考え直さないとだめであろう」
 その眷属はそう言うと船内から消える。
 配下の魔物たちもかき消えるように消えていく。
 「邪魔させないさ。祖先の兵器はもうすぐ見つかるのだからね」
 マーカスはニヤリと笑った。
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