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第3章 つづき

入隊試験 つづき

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翌日
バルベータスとバスチアンが部屋に入った。
部屋に等身大の穴が開き空が見えている。
 「あのトラブルメーカーめ」
 苦虫をつぶしたような顔で舌打ちするバルベータス。
 「バスチアン。あのバカを連れ戻して来るんだ」
ため息をつくバルベータス。
目を離すとこれか。これでは子供と変わらないな。
 「わかりました」
 バスチアンは答えた。
 その頃。ヤマトは街中を歩いていた。
 アルテアじゃねえな。どこだ?
 ヤマトはメインストリートを行く。
 周囲はヨーロッパチックな中世の建物が立ち並ぶ。でも地球ではない。それに限りなく近い星だろう。
ここに住む住民も地球人に近い。
 容姿もかなり地球人に似ている。しかし違うのは顔の両頬にアラブ語のような入れ墨が入っている
ことだろうか。それ以外は人間と変わらない。
 大通りを横切り路地を抜けると公園に出た。
その公園のそばは海が広がっていた。公園から宇宙港と漁港が見えた。
 ヤマトはベンチに座る。
 「Gフォースのヤマトだ」
 ふいに声がして振り向くと三人の子供が近づいてきた。
 「俺の名前を知っているのか?」
 身を乗り出すヤマト。
 「君は小惑星帯の魔物と邪神眷属群を一撃で倒した。すごいよ」
 子供の一人が無邪気な顔で言う。
 「そんなに有名になったんだ」
 少し驚くヤマト。
 自分は自分のいた世界でも名前が知れていて有名だった。
 「Gフォースやこの周辺の惑星や星団では眷属群や魔物を一撃で倒したって有名だよ」
 「君は地球っていう星からこの世界へ迷い込んできたんでしょ」
 他の子供が無邪気に笑う。
 「なんかアルテアで掃除屋やってたほうがマシだったかな」
 めんどくさいという感じのヤマト。
 なんで子供に言い寄られなければいけないんだ。試験を受けただけで有名になるとは思わなかった。
 「あのさあ。ここはどこだ?」
 ヤマトは話を切り替えた。
 「この星はブルーウオーター。アルテアのある星系から六十万光年離れたヘリオン星系にある。そして
今いる所は首都オリヴェラのプリマビスタ市よ」
 いきなり割り込んでくる女性の声。見ると高校生位の少女が近づく。種族は人間だろう。
 「おまえは?」
 「私はアイシャ・スチュアート。この星には留学生として来ているの」
 女性が名乗った。
 「僕はリオン。友達のロンとローラ」
 無邪気な顔で自己紹介する少年。
 無言になるヤマト。
 なんか基地に帰ろうかな。
 「機械生命体の入隊試験はね。周辺の惑星に通達されるのよ。あなたはトップクラスの成績で入隊合格よ」
 ニコッと笑うアイシャ。
 「なんでそこまで知っている」
 詰め寄るヤマト。
 「ねえ。ヤマト。友達になろうよ」
 無邪気に言うリオン。
 「機械生命体と人間は友達にはなれない」
 きっぱり言うヤマト。
 第一に体の作りも寿命もちがう。
 「いいじゃない。友達になったって」
 微笑むアイシャ。
 ヤマトの両目の瞳が銀色に変わり振り向きざまに飛びかかってきた犬を殴った。犬はギーという金属が
こすれる音を出して身構える。
 だがそれは犬ではなかった。ワニの頭部と体に大型犬の太い足に尻尾が生えている。口にはサメ
のような鋭い牙がびっしり生えていた。犬もどきは一匹だけでなく数十匹いる。
 「ヤマト。それは”ティンダロスの猟犬”よ。時間の果ての角度をよぎってくるわ。狙われたらしつこいわ」
 アイシャたちは子供たちをかばう。
 「そうみたいだな」
 ヤマトは飛びかかってきた猟犬を蹴り飛ばす。別の猟犬が彼の腕に噛み付く。彼は思いっきり殴る。
腕にナイフでえぐられるような痛みが襲う。
 再び飛びかかる猟犬。
 ヤマトは掌低を突き出した。せつな腕から手が変形して銃身になり銃口から青白い光線が放出され
数匹の猟犬が塵と化す。
 別の数匹の猟犬がアイシャたちに飛びかかる。ヤマトの背中から四対の鎖が飛び出し鎖の先端が
分胴の形に変形。その先端部で巻き付け地面にたたきつけた。
 しかし猟犬はまた数十匹増えてヤマトたちを囲んだ。
 ここでは波動砲は使えない。都市を吹っ飛ばしてしまう。
 その時である。鋭い呪文を詠唱する声が響き白い光線が猟犬たちにふり注ぎ一瞬にして塵と化した。
 「けがはないですか?」
 バスチアンやデビットの他に他の隊員たちが駆けつけてくる。
 「おまえはとんだトラブルメーカーだ」
 バルベータスはため息をついた。
 「俺たちは巻き込まれたんだ。俺だけじゃなくアイシャを狙ってきた」
 感じたことを言うヤマト。
 自分も目標だがアイシャも標的という感じだろうか。
 「あの猟犬が狙うのはよほどのことを何かやったということじゃな」
 眼光が鋭くなるバルベータス。
 「実は私の父は何かを研究していたみたいなんです。先日これが届きました」
 アイシャは重い口を開いてバックからピンク色のクリスタルを出した。せつなヤマトやアイシャの脳裏に
水滴が落ちて水面に波紋が広がる映像が見えた。
 隊員たちに保護されるリオンたち。
 我に返るヤマトとアイシャ。
 「クリスタルに共鳴したな」
 うーむとうなづくバルベータス。
 「おまえの親父はどこだ?」
 我に返るヤマト。
 「ブルームーンにある研究所なんですが連絡が取れなくなっているんです」
 アイシャは口を開く。
 「ブルームーンってどこだ?」
 ヤマトはバスチアンにささやいた。
 「ブルーウオーターの衛星だよ。地球でいう月のような天体だね」
 小声でバスチアンは言う。
 うなづくヤマト。
 バカだな。自分から面倒なことに足を突っ込もうとしている。
 「そのブルームーン研究所へ行こう」
 何も言わないつもりが口に出たことは正反対のことだった。
 「ワシとおまえとバスチアン、デビットで行く。基地にあるテレポート台を使って月面都市
ブルームーンへ行くことにする」
 バルベータスが言う。
 「じじいも行くのか?」
 驚くヤマト。
 「ワシはおまえの身元引受人であり保護者であり師匠でもある」
 バルベータスは言った。
 「面倒くさいじじいがついてくるのか。それに俺は保護者とか師匠になってくれなんて頼んでない」
 はっきり言うヤマト。
 いつの間にそういうことになったんだ。
 「おまえさんワシがいなければ一生掃除屋で終わっていた。チャンスは大切にしろ」
 じろっとにらむバルベータス。
 「今は掃除屋でよかったと思うな」
 フンと鼻を鳴らすヤマト。
 「素直じゃないのう。つんけんしておると誰にも相手にされなくなるぞ」
 「別に。友達とか仲間なんてほしいとは思ってないから」
 しゃらっと言うとヤマトは先に言ったバスチアンとアイシャのもとへ走っていく。
 「あの戦艦は性格がよくないな」
 センダックがバルベータスに近づく。
 「コミュニケーションを知らんだけだ。一人ぼっちになってしまったらその時は遅いのだよ」
 フッと笑うバルベータス。
 「一隻で奴らと戦うのは危険ですよ」
 クロウ・タイタスが口をはさむ。
 「だからワシらも同行するんじゃ」
 バルベータスは言った。
 
 ブルームーンにある役所から出てくるヤマト、バスチアン、デビット、バルベータスとアイシャの五人。
 都市ブルームーンは都市全体が透明なドームに覆われている。当然青い空でなく宇宙が見える。
 「タクシーでも拾うのか?」
 ヤマトが聞いた。
 「レンタカーを借りた」
 デビットは駐車場にあるエアカーを指をさした。
 「私が運転するから君は後ろ」
 デビットが言う。
 デビットとアイシャが運的席と助手席でヤマトたちが後席である。五人を乗せたエアカーは大通りに出た。
 役所の向かいにある喫茶店から出てくるターバンの巻いた男女。マーカスとルイスである。
 「見つけたぞ。ヤマト」
 マーカスはニヤリと笑う。
 「我々の計画は邪魔させないわ」
 ルイスは言った。
 五人を乗せたレンタカーは都市の郊外にある古風な洋館の前で止まる。
 「住所はここよ」
 アイシャが小包の住所を見ながら言う。
 五人は洋館の中へ足を踏み入れる。エントンランスから二階の書斎や研究部屋が見えた。
 「アイシャさん護身用の銃です」
 バスチアンはアイシャにレーザー拳銃を渡した。
 アイシャはうなづく。
「ワシとデビット、バスチアンは二階。ヤマトとアイシャは一階じゃ」
 バルベータスは指示を出す。
 ヤマトとアイシャは一階の実験棟に入る。部屋にはいくつかのストレッチャーと医療器具が並ぶ。
 「なんの実験をやっていたのかしら」
 心配そうな顔のアイシャ。
 黙ったまま奥の部屋へ進むヤマト。
 この胸騒ぎはなんだろう?今まで感じなかった。
 ヤマトは机の上にあった書類に目を通す。書類には被験者の体内に芋虫のようなものを入れるという
実験のようだ。
 二人は隣の部屋に入る。部屋は教室が二つ分入るくらいに広い。部屋内は薄暗く足元しか見えない。
 懐中電灯を照らすアイシャ。
 部屋内は実験器具が散乱し書類が無造作に散らばっている。
 いきなりヤマトは飛びかかってきた物体を殴った。
 「アイシャ。ここを出るぞ」
 ヤマトはアイシャの腕をつかんで駆け出す。
 襲ってきた物体も追いかけてくる。
 二人はエントランスに飛び出す。
 振り向くと天井や壁を這う物体がいる。体は人間なのに首から上はコブラのような蛇なのだ。体には
軽装備の鎧のようなものを着用している。
 ヤマトの両目の瞳が銀色に変わる。
 蛇人間たちが飛びかかる。
 ヤマトの後ろ回し蹴りが決まりその蛇人間は数十メートル離れた壁にたたきつけられる。
 別の蛇人間がショートソードを振り下ろす。
 ヤマトはそれをかわしその腕をつかみ膝蹴り。三人目の蛇人間に振り向きざまに掌低を弾いた。ひっくり
返った二人の蛇人間の首をつかみ壁にたたきつけられた蛇人間の体を背中から飛び出した
二対の鎖で巻きつける。
 「誰に頼まれた?」
 ヤマトは声を荒げ、力を入れる。
 くぐくもった声を上げてもがく蛇人間たち。
 「ヤマトそいつらはヴァルーシアの蛇人間じゃ。ここから十万光年離れた惑星に住むものたちだ」
 二階のバルコニーから出てくるバルベータスとバスチアン、デビットの三人。
 「アイシャ。君のお父さんは禁止されている遺物や魔術の実験をやっておったようじゃな」
 バルベータスは口を開く。
 うつむくアイシャ。
 「そのクリスタルはアルビス遺跡から盗んだものだ。二階の書斎にあった魔術書で邪神を呼び出す
実験をしていた」
 バルベータスは説明する。
 「アルビス遺跡?」
 ヤマトが聞き返す。
 「ここから30万光年離れた誰もいない惑星があってなその星には超古代遺跡がたくさん残っている。
その遺跡は全部邪神関係のものが封じられていた。それをアイシャの父親たちは封印をあばいたようだ」
 バルベータスははっきり言う。
 「没収する研究所はここですか?」
 洋館に入ってくるGフォースの捜索隊。
 「そうじゃ。全部調べてくれ」
 バルベータスは捜索隊の隊長たちに指示を出す。
 「二階も見ていいか?」
 ヤマトが言う。
 「いいよ」
 フッと笑うバルベータス。
 二階に上がるヤマトとアイシャ。
 二階の書斎の本棚にはぎっしりと怪しげな魔術書が並び、研究室には遺物が置かれている。異物は
タコや魔物をかたどった物ばかりである。
 ヤマトはそのうちの一冊を手に取った。
 それは皮で装丁された分厚い書物である。
 ”ネクロノミコン”と書かれていた。
 もともとはアブドゥル・アルハザードが書いたアルアジフという書物で異世界の神々の知識が記されていた。
いくつかの言語に訳されているが完全なものは五冊しかない。
 (見てはいけない)
 ふと頭の中に声が聞こえた。どこか聞き覚えのある声だ。
 ヤマトは首をかしげながら次の書物を取る。
 ”セラエノ断章”
 旧支配者が旧き神から盗んだ知識や召喚術、精神だけで宇宙を旅する技術などが記されている。
 (ヤマト!見てはいけない)
 また声が頭の中で聞こえた。
 どこかで聞いたことのある声だ。少なくとも書斎にいる奴らではない。
 ヤマトは首をかしげながらセラエノ断章をのぞこうとした。
 「勝手に開くでない」
 持っていた杖でたたくバルベータス。
 「なんだよ」
 ムッとするヤマト。
 「この書斎には禁止されている魔術書や盗まれた書物、遺物が集められておる。素人が読んだり
集めても危険なものが多い。不用意に触るでない」
 注意するバルベータス。
 「わかった」
 うなづくヤマト。
 「バルベータス殿。アイシャさんの父親はもう一つ遺物を誰かに送ったのがわかりました」
 くだんの隊長が入ってくる。
 「誰だ?」
 「エドワード・ヴァシリ。ここの研究員で発掘の仕事をしております。住所はプリマビスタ市西90番地です」
 隊長はバルベータスに住所が書かれたハガキを渡した。
 三十分後。
 ヤマト、アイシャ、バルベータス、バスチアン、デビットは高層アパートの前に立ち止まる。
 周囲を見回すヤマト。
 ここはあの宇宙港と漁港が見える海のそばの公園のそばにある。アパートも公園をへだてた大通りに
面した場所にある。
 エレベーターで目的の階へ降りてデビットはインターホンを押す。
 部屋のドアが開いて中の住人が顔を出す。
 「おまえは」
 あっと声を上げるヤマト。
 「あ、ヤマトだ」
 顔を出したのは公園で出会った小学生だ。
 「リオン。父親か母親はいるか?」
 ヤマトはデビットを押しのける。
 「お母さんは1年前に病気で死んだ。お父さんはおとといから帰ってこない」
 心配そうな顔のリオン。
 「お父さんから何か預かってないか?」
 「昨日になってこれが届いた」
 リオンは小包を見せた。中からルビーのブローチのようなものが入っている。ブローチには金の装飾が
施されつなぎ目がありそれ以前にいくつかのパーツに別れていたようだ。
 「これはアルビス遺跡にあった遺物だ。本当は十三個のパーツに別れていたものを集めて組み
立てたようだな」
 眼光が鋭くなるバルベータス。
 「僕はお父さんと一緒に発掘現場やクリスタルとか見たし、手伝ったことあるんだ」
 リオンが口を開く。
 「彼が見たクリスタルはたぶんアイシャさんが持っていたクリスタルでしょうか」
 バスチアンがささやく。
 「そのようじゃな」
 うなづくバルベータス。
 「どうする?」
 ヤマトは聞いた。
 「ここにいても危険だ。基地へ行こう」
 少し考えてからバルベータスは言った。
 「アイシャとリオンを連れて来てどうするんだよ」
 基地の食堂でヤマトはバルベータスに聞く。
 「あの二人はクリスタルや邪神がらみの事件に巻き込まれている。あのまま置いておいたら奴らが
狙ってくる。丁度あの猟犬のようにな」
 バルベータスはお茶を飲む。
 ヤマトは黙ったまま二人のほうを見る。
 食堂には機械生命体はいない。異星人や人間だけである。機械生命体は太陽エネルギーや電気
などのエネルギーを吸収することによって活動する。だから生物のように食べなくても活動できた。
 Gフォースやエルダーサインの隊員や魔術師にも異星人や人間もいる。彼らも魔術や武術を体得して
入隊試験を受けて基地や出張所に配属されるのだ。
 アイシャやリオンはカウンター席にいる。
「アルビス遺跡ってどこだ?」
ヤマトは出された紅茶を飲む。
口いっぱいに蜂蜜や苦い味が広がる。
「ここから二十万光年離れた惑星がある。そこは誰も住んでおらん。岩石だらけの星で超古代遺跡が
点在する。遺跡には邪神を封じるための遺物や魔術武器や防具があったんだ。しかしこの百年盗掘が
相次いで盗まれたり壊されたりすることが多くなった。リオンが持っていた異物は遺跡のk地点の
一番奥の部屋の封印だ。あの遺物は本来は十四個のパーツに別れていたそれを誰かが組み立てた。
危険を察知したリオンの父親とアイシャの父親は資料と一緒にあの子達に送ったんだ」
ホログラムを出して説明するバルベータス。
「でもあの蛇人間は?」
「ヴァルーシアの連中は操られているだけだ」
「操るって誰に?」
「マーカスとルイスだ。あの者たちたちは
”侵入者”と呼ばれる高度知的精神体だ。彼らの祖先は邪神に継ぐパワーを持っていたと言われている。
彼らの祖先は自由にどの世界でも行き来できブラックホールや時間を操れる技術や科学を
持っていたとされる。ヤマト。あいつらはおまえさんを追いかけてこの世界にやってきたんだ」
 「そんなバカな」
 「おまえさんは地球を守るためにいろいろな場所へ派遣され、戦い守りその度に奴らの計画が潰れた。
連中は趣向を変えておまえを仲間にしようとしている」
 「俺があいつらの?俺は仲間になんかならない」
 きっぱり言うヤマト。
 「それを聞いてとりあえずは安心かのう」
 「どういう意味だよ」
 「おまえさん普通に紅茶を飲んでいる。味がわかるようになったか?」
 話を変えるバルベータス。
 「・・・・」
 黙ってしまうヤマト。
 そういえばさっきから味がわかるしにおいもわかる。
 「ワシらの場合は食べても飲んでもそれらはエネルギーに変換される」
 にやりと笑うバルベータス。
 「そんな・・・」
 絶句するヤマト。
 「あの光を浴びて少しすると痛みを感じ心や意志を持つ。そして人間のように味やにおいがわかるよう
になる。機械生命体はみんなそこから現状を受け入れなければいけない。おまえも変化を受け入れるんじゃ」
 微笑むバルベータス。
 「俺は地球に帰ってやる」
 眉間にしわを寄せるヤマト。
 「受け入れるんだ。なぜ帰れないかそのうちにわかるようになる。わしも若い時はそうだ。師匠からも教わり、
周囲の先輩からも教わる」
 「そんなこと受け入れられない。戻れる方法はあるんだ!!」
 バン!と机をたたくヤマト。
 「おまえもわからん戦艦だな」
 席を立つバルベータス。
 「このクソジジイ」
 ヤマトは思わずバルベータスの胸ぐらをつかんだ。
 「やめてよ!!」
 リオンはヤマトの腕をつかんだ。
 「何でもめているかわからないけどケンカはやめてよ」
 アイシャが制止する。
 ヤマトはバルベータスを離した。
 「バルベータスさん。アルビス遺跡へ行ってください。クリスタルがそこへ戻せっていっているの」
 アイシャが重い口を開く。
 「僕も行く。僕はお父さんと一緒に遺跡の中へ入ったし地図も見てる」
 リオンは真剣な顔になる。
 「おまえさんたちはまだ子供じゃ。まだ知らなくてもいいこともある」
 言い聞かせるバルベータス。
 「僕の耳にもクリスタルから声が聞こえるんだ。だからお願いします」
 リオンは頭を下げた。
 「私からもお願いします」
 アイシャも深く頭を下げる。
 ヤマトとバルベータスは互いに顔を見合わせた。




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