沈丁花

はるた

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魔法使いと女の子

キリンしか見えない

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「センリってほんとうにまほうつかいなの?」

 家事と娘の面倒を見るという条件で住まわせて貰っているセンリは今、暖かい日が差すリビングでミアと一緒にお絵描きをしている。
 わんちゃん、ねこちゃん、うさぎさんにリスさん、白い紙にはクレヨンで描かれた動物が溢れていて、カラフルだ。

「うん、そうだよ。」

 センリは、次はキリンさんを描こうかなぁと黄色のクレヨンを手に取る。

「でもでも、わたしセンリがまほうつかってるとこみたことないよ?」

「そうだねぇ。」

 お絵描きに飽きたのかミアはおしゃべりをしたいらしい。しかし、センリは筆が乗ってきて、お絵描きが楽しくなってきたところだった。
 キリンはどんなだったっけ?とりあえず首を長くして。模様があった気がする。まだら模様の放置して時間が経ったバナナみたいな感じの……とセンリはキリンの姿を頭に思い浮かべる。
 そんな感じで今、センリの頭の中にはキリンのことでいっぱいなので、ミアに対する返事はテキトーだ。
 ただし、当たり前だがミアはセンリの意識がキリンに向いていることなんて知らないため、ミアはおしゃべりを続ける。

「まほうってどんなかんじなの?なんでセンリはまほうをつかわないの?」

「うーん、そうだなぁ。」

 ミアの質問にどう答えるか迷っているようで、この男の頭にはキリンのことしかない。
 角があったけど、"ツノ"って感じの角か、丸みを帯びた"つの"って感じの角だったか……。
 そして、センリはこう言った。

「ミアちゃん、この家に動物図鑑ってあったっけ?」

「えっ?」

 センリのトンチンカンな発言にミアは一瞬はてなを浮かべた。しかし、気付く。

「もうっ!わたしのはなしぜんぜんきいてないでしょ!」

 ぷくうっと頬を膨らませて明らかに怒ってますよと主張するミア。
 ミアの様子を見て、さすがにキリンからミアに意識を向けるセンリだが、何の話をしていたんだっけ?とキリンに思いを寄せていたこの男には思い出せない。

「あー、ごめんねミアちゃん。お絵描きに集中しちゃっててお話よく聞けてなかった。ごめんね。」

「ゆるしません。」

 ぷいっとセンリから顔を背けるミアに、機嫌悪くなっちゃったなぁと自分が悪い癖に他人事のように思うセンリ。しかし、一応悪いとは思っているのか、どうしようかなと小さく零す。
 キョロキョロと辺りを見渡すが、ミアの機嫌を直してくれそうなものは見当たらない。お菓子でも買ってくるかと立ち上がろうとした時、自分とミアで描いた動物がいっぱいの紙が目についた。 
──あぁ、これにしよう。
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