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二十一
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「透様、起きてください。」
干鰯谷くんがトントンと柊さんの肩を叩く。が、しかし柊さんは起きない。
「透様、起きて。」
干鰯谷くんは、顔にかかっている毛布を避けて、ぐにぃっと柊さんの両ほっぺを伸ばす。餅のように。
それから、鼻を摘んだり、手のツボを押したり、耳元で蚊の飛ぶ音を流してみたりと、干鰯谷くんにやりたい放題されている柊さん。
起きない柊さんもすごいけど、それでいいのだろうか。干鰯谷くん、怒られないのかな。
柏那さんが言うには、僕は保健室で休んでいることになっているらしく、四限の授業は受けようかなと、そろそろ教室に戻る旨を伝えたら、みんなそうしようかという流れになった。柊さん以外は。
そういう経緯で、干鰯谷くんは柊さんを起こそうと色々と試しているけれど、起こそうというより面白がってるよなぁというのが客観的な感想。
「起きないねぇ」と、柏那さんと綾目さんはのほほんと見守っていることからして、これもこの人たちにとっては日常なのだろうか。
「さすがに起こします。」
干鰯谷くんはそう宣言した。
「起こそうとしてなかったんだ……。」
思わず、口に出してしまう。
「この人、満足いくまで寝ないと起きない人だから。なにやってもほとんど意味無い。」
「それじゃどうやって起こすの?」
「鬼。」
僕のえ?と聞き返す声よりも早く柊さんはパッと身体を起こし、構えていた。刀を今にも抜くかのように。
「おはようございます。透様。」
干鰯谷くんは澄ました顔で言った。ついさっきまでイタズラをしていたのに。
柊さんはきょろきょろと周りの様子を伺い、何も無いことを確認したら、力を抜いた。
「……おはよう。宗次郎。」
なるほど。らしいと言えばらしい起こし方だけれど。
「透ちゃんも起きたことだし、みんな戻ろうか。」
「俺は片付けがあるので、透様は佐藤と一緒に先に行ってて下さい。」
「行かないとダメかな。」
柊さんはめんどくさそうに言った。
「透様……。」
対して、干鰯谷くんは呆れるように言った。
「頑張ろうか。透ちゃん。」
柏那さんは背中を押すように言う。
「……はい。」
仕方ないというように。柊さんは本当に学校というものが嫌なんだなと、表情には出ないけれど、嫌々オーラが溢れ出ているために分かった。
「透さん、マドレーヌ包んでおいたので持って行って下さい。授業終わりのご褒美として!」
ねっ!と綾目さんはウインクをした。
「ありがとうございます。紗也子さん。」
しっかりと綾目さんからマドレーヌを受け取る柊さん。甘やかされている。
「では、行きましょうか。」
末っ子のような扱いの柊さんはこの空間において僕に対してだけ、しっかり者になる。
「はい。」
なんだかそのギャップが面白くて、柊さんの背中の陰で思わずそっと僕は笑ってしまった。
干鰯谷くんがトントンと柊さんの肩を叩く。が、しかし柊さんは起きない。
「透様、起きて。」
干鰯谷くんは、顔にかかっている毛布を避けて、ぐにぃっと柊さんの両ほっぺを伸ばす。餅のように。
それから、鼻を摘んだり、手のツボを押したり、耳元で蚊の飛ぶ音を流してみたりと、干鰯谷くんにやりたい放題されている柊さん。
起きない柊さんもすごいけど、それでいいのだろうか。干鰯谷くん、怒られないのかな。
柏那さんが言うには、僕は保健室で休んでいることになっているらしく、四限の授業は受けようかなと、そろそろ教室に戻る旨を伝えたら、みんなそうしようかという流れになった。柊さん以外は。
そういう経緯で、干鰯谷くんは柊さんを起こそうと色々と試しているけれど、起こそうというより面白がってるよなぁというのが客観的な感想。
「起きないねぇ」と、柏那さんと綾目さんはのほほんと見守っていることからして、これもこの人たちにとっては日常なのだろうか。
「さすがに起こします。」
干鰯谷くんはそう宣言した。
「起こそうとしてなかったんだ……。」
思わず、口に出してしまう。
「この人、満足いくまで寝ないと起きない人だから。なにやってもほとんど意味無い。」
「それじゃどうやって起こすの?」
「鬼。」
僕のえ?と聞き返す声よりも早く柊さんはパッと身体を起こし、構えていた。刀を今にも抜くかのように。
「おはようございます。透様。」
干鰯谷くんは澄ました顔で言った。ついさっきまでイタズラをしていたのに。
柊さんはきょろきょろと周りの様子を伺い、何も無いことを確認したら、力を抜いた。
「……おはよう。宗次郎。」
なるほど。らしいと言えばらしい起こし方だけれど。
「透ちゃんも起きたことだし、みんな戻ろうか。」
「俺は片付けがあるので、透様は佐藤と一緒に先に行ってて下さい。」
「行かないとダメかな。」
柊さんはめんどくさそうに言った。
「透様……。」
対して、干鰯谷くんは呆れるように言った。
「頑張ろうか。透ちゃん。」
柏那さんは背中を押すように言う。
「……はい。」
仕方ないというように。柊さんは本当に学校というものが嫌なんだなと、表情には出ないけれど、嫌々オーラが溢れ出ているために分かった。
「透さん、マドレーヌ包んでおいたので持って行って下さい。授業終わりのご褒美として!」
ねっ!と綾目さんはウインクをした。
「ありがとうございます。紗也子さん。」
しっかりと綾目さんからマドレーヌを受け取る柊さん。甘やかされている。
「では、行きましょうか。」
末っ子のような扱いの柊さんはこの空間において僕に対してだけ、しっかり者になる。
「はい。」
なんだかそのギャップが面白くて、柊さんの背中の陰で思わずそっと僕は笑ってしまった。
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