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陰謀
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東京に向かう車の中は重苦しい空気が漂っている。
田島と冴子の2人の間に会話は無い。
真淵にたどり着いたにもかかわらず何の答えも見つけられなかった事もあるが、冴子に対するモヤモヤが田島の頭から離れなかったからだ。
あの2人の男達は何者だ、喉まで出かかっているその質問を田島は飲み込んだ。
そんな間抜けな質問、記者が記者にする質問では無い、何もわからない自分自身が余計に田島をイラつかせた。
「田島さん、あなたはもうこれ以上この事件に関わるべきではないわ!」
事件?
俺は冴子に電話の事はおろか真淵の事さえ話していない、今日ここに来た理由だって、それがなぜ事件だと言い切れる。
田島は車の運転中にもかかわらず思わず冴子の方を振り向いてしまった。
冴子も俺の方を向いている、その表情は新人とは明らかに異なり、数十年、戦場を彷徨いあるいたジャーナリストのそれである。
田島は車を道端に止めると、改めて冴子に振り向いた。
「冴子、お前は何を知っている。」
俺の認識はもう冴子を新人とは思っていない、自分のイラつきも相まってつい語彙が荒くなってしまった。
「もう一度言うわ、あなたはこれ以上この件に関わらないほうがいい、もう個人でどうこうできる段階ではなくなったのよ」
関わるなと言われてもそう簡単には引き下がれない、もう十分巻き込まれているのだから。
俺は冴子に食い下がる。
「冴子、お前は何者なんだ?体育館の裏で話していた男達は一般人じゃないだろう」
どうせ本当の答えなど返ってくる事はないだろう、それでも田島は言葉を吐いた。
が、冴子からは呆気ないほどの答えが返ってくる。
本名 坂上 冴子(さかがみ さえこ)、二十八才、内調のエージェント。
内調とは、内閣調査室の略称で対テロが主な任務との事だ。
内調では以前より幸福の未来科学という教団に目を付けており、2年前の福島県知事急死事件で教団に関わった田島の監視役として冴子を送り込んできたのだ。
この冴子の説明になぜ新人の冴子が突然俺の上司になったのか理解してしまった。
社の人間も冴子が内調の人間とは聞かされてはいないだろう、おおかた大口スポンサーの推薦みたいな形をとってごり押しした形だ。
しかし、この説明で納得したわけではない、俺は既にこの件の当事者なのだ。
「あの男達も内調なのか」
その質問には少し間を置き冴子は答える。
「彼らは公安よ。」
公安⁉︎
また怪しいワードが出てきた、公安まで関わっているのか?
冴子の説明によると教団の最初の計画は地震の噂を広める事で社会不安を煽り、信者を獲得するのが目的だった。
それが国が絡む事で計画は途方もないものになってしまった。
国と言っても一部の暴走した国会議員だが、その議員の目的が本当に地震を起こして地震からの復興という名目の大規模都市開発だったから始末が悪い。
更に最悪だったのが、その議員が米軍とのパイプを持っていた事である、米軍は人工地震の話しを議員から聞いて議員の思惑とは別に人工地震を兵器として使用できないか検討していた。
米軍が検討していた?
まさか米国まで関係しているなんて田島の想像を超えている、米国が関係しているのならばこの馬鹿げた計画も現実味を持つ、しかし、同盟国の日本に対して核爆弾を使うことなどあるのか?
田島は冴子が言った検討していたと言う言葉が気になり冴子に質問した。
「では、今回の地震に米軍は関係ないのか?」
冴子は首を振り答えた。
「わからないわ、こちらから米国に問い合わせてはいるけど、地震の被害の大きさから米国は無関係だとダンマリを決め込んでいる」
「こちらでも真淵の資料の内容は把握している、人工地震なんて考えたくもないけど現に付近で放射線が確認させている、電力会社の件もあり断定はできないけど、あなた考えてる事と一致するかもしれないわね」
確かに電力会社の一件で
「暴走した国会議員はすでにこちらで抑えているけど、教団との関係はまだはっきりしてないわ」
「つまりは何もわからない、あなたについていく事で真淵から何か掴めるかと思ったけど、それも駄目みたい」
「あ、それとあなたに真淵がかけた電話、通信機からだったそうよ、もう回収済みだけど完全に壊れていて分析には時間がかかるみたい」
田島はここまでの冴子の話しを聞くと大きくため息をつき、確かに俺が関われる次元の話しではないことを納得してしまった。
田島は冴子にこの件から手を引くことを約束すると、ここでいいわと冴子は車から降りてしまった、こんな所でと田島は引き止めたが、後ろから車が近づいてきたのに気づいて、あゝ監視されていたんだなと納得してドア閉め車を発進させた。
田島と冴子の2人の間に会話は無い。
真淵にたどり着いたにもかかわらず何の答えも見つけられなかった事もあるが、冴子に対するモヤモヤが田島の頭から離れなかったからだ。
あの2人の男達は何者だ、喉まで出かかっているその質問を田島は飲み込んだ。
そんな間抜けな質問、記者が記者にする質問では無い、何もわからない自分自身が余計に田島をイラつかせた。
「田島さん、あなたはもうこれ以上この事件に関わるべきではないわ!」
事件?
俺は冴子に電話の事はおろか真淵の事さえ話していない、今日ここに来た理由だって、それがなぜ事件だと言い切れる。
田島は車の運転中にもかかわらず思わず冴子の方を振り向いてしまった。
冴子も俺の方を向いている、その表情は新人とは明らかに異なり、数十年、戦場を彷徨いあるいたジャーナリストのそれである。
田島は車を道端に止めると、改めて冴子に振り向いた。
「冴子、お前は何を知っている。」
俺の認識はもう冴子を新人とは思っていない、自分のイラつきも相まってつい語彙が荒くなってしまった。
「もう一度言うわ、あなたはこれ以上この件に関わらないほうがいい、もう個人でどうこうできる段階ではなくなったのよ」
関わるなと言われてもそう簡単には引き下がれない、もう十分巻き込まれているのだから。
俺は冴子に食い下がる。
「冴子、お前は何者なんだ?体育館の裏で話していた男達は一般人じゃないだろう」
どうせ本当の答えなど返ってくる事はないだろう、それでも田島は言葉を吐いた。
が、冴子からは呆気ないほどの答えが返ってくる。
本名 坂上 冴子(さかがみ さえこ)、二十八才、内調のエージェント。
内調とは、内閣調査室の略称で対テロが主な任務との事だ。
内調では以前より幸福の未来科学という教団に目を付けており、2年前の福島県知事急死事件で教団に関わった田島の監視役として冴子を送り込んできたのだ。
この冴子の説明になぜ新人の冴子が突然俺の上司になったのか理解してしまった。
社の人間も冴子が内調の人間とは聞かされてはいないだろう、おおかた大口スポンサーの推薦みたいな形をとってごり押しした形だ。
しかし、この説明で納得したわけではない、俺は既にこの件の当事者なのだ。
「あの男達も内調なのか」
その質問には少し間を置き冴子は答える。
「彼らは公安よ。」
公安⁉︎
また怪しいワードが出てきた、公安まで関わっているのか?
冴子の説明によると教団の最初の計画は地震の噂を広める事で社会不安を煽り、信者を獲得するのが目的だった。
それが国が絡む事で計画は途方もないものになってしまった。
国と言っても一部の暴走した国会議員だが、その議員の目的が本当に地震を起こして地震からの復興という名目の大規模都市開発だったから始末が悪い。
更に最悪だったのが、その議員が米軍とのパイプを持っていた事である、米軍は人工地震の話しを議員から聞いて議員の思惑とは別に人工地震を兵器として使用できないか検討していた。
米軍が検討していた?
まさか米国まで関係しているなんて田島の想像を超えている、米国が関係しているのならばこの馬鹿げた計画も現実味を持つ、しかし、同盟国の日本に対して核爆弾を使うことなどあるのか?
田島は冴子が言った検討していたと言う言葉が気になり冴子に質問した。
「では、今回の地震に米軍は関係ないのか?」
冴子は首を振り答えた。
「わからないわ、こちらから米国に問い合わせてはいるけど、地震の被害の大きさから米国は無関係だとダンマリを決め込んでいる」
「こちらでも真淵の資料の内容は把握している、人工地震なんて考えたくもないけど現に付近で放射線が確認させている、電力会社の件もあり断定はできないけど、あなた考えてる事と一致するかもしれないわね」
確かに電力会社の一件で
「暴走した国会議員はすでにこちらで抑えているけど、教団との関係はまだはっきりしてないわ」
「つまりは何もわからない、あなたについていく事で真淵から何か掴めるかと思ったけど、それも駄目みたい」
「あ、それとあなたに真淵がかけた電話、通信機からだったそうよ、もう回収済みだけど完全に壊れていて分析には時間がかかるみたい」
田島はここまでの冴子の話しを聞くと大きくため息をつき、確かに俺が関われる次元の話しではないことを納得してしまった。
田島は冴子にこの件から手を引くことを約束すると、ここでいいわと冴子は車から降りてしまった、こんな所でと田島は引き止めたが、後ろから車が近づいてきたのに気づいて、あゝ監視されていたんだなと納得してドア閉め車を発進させた。
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