地震列島

塩爺

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地震その後で

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田島が勤めている出版社は東京都内ということもあり、被害は少なく、地震の翌日には社員全員で情報収集に走り回っていた、田島もその中で出来る事を探して携帯電話をかけまくっていたが、どうしてもあの時の電話が頭から離れなかった。

紋章術で地震を起こす?

そんなことが出来る訳が無い!

しかし、実際に地震が起きている。

馬鹿げた話し、だが、田島は調べずにはいられなかった。

紋章術、地震、雲を掴む様な話しだが、超常現象を扱う出版社の為か、会社のデーターベースから田島が真淵の名前に行き当たるまでにそんなに時間を要さなかった。

真淵 秀樹 地質学者 ○○大学の助教授 地質学の観点から日本各地の地脈を調査する。

紋章術と名付けた経緯に付いては雑誌のインタビューの中で真淵は語っている、刺激を与えると反応し合う地脈の繋がりその形状が紋章術の魔法陣の形に似ている為、学生受けを狙って名付けたそうだ。

田島はここまで読んで、半ば呆れながら大学の先生なのに、くだらない研究をしているものだと思いため息をついた、が、次の文章に移った時、田島の顔がみるみる青ざめた。

そこには地脈、特に竜脈に刺激を与えた時の現象に付いて書かれていた、研究によると竜脈に1メガトンの刺激を与えると地殻が連鎖崩壊を起こしてマグネチュード9を超える地震が起こる可能性があると記されていた。

1メガトンの刺激?

田島は頭で想像した事を掻き消すように首を振り、「この日本で核爆弾が⁉︎ 」と呟いた。

荒唐無稽な考えだが実際に地震が起きている、電話の事といい偶然の一致にしては出来すぎている話しである。

田島は考えることをやめ真淵に連絡を取る為に行方を探す。

真淵の行方がわかったのは、地震発生から10日経っての事だった、その一報は2年前のご当地アイドルの取材の折にお世話になった福島県の記者よりもたらせられた。

東京の大学の研究室に居るはずの真淵は何故か地震の発生源の近く福島県にいた、否、いたと言う表現は正しくなかった、発見されたと言う表現が正しいだろう。

田島は取材道具だけ持つとそのまま車に飛び乗りエンジンをかけ、出発しようとした時に、急に助手席のドアが開き、
私も同行するわ と冴子が乗り込んできた、東條 冴子、彼女は2年前に社に入社したばかりの新人であったが、どんな裏技を使ったのか、いきなり田島の上司に抜擢された。

田島も最初は抗議したが、会社命令と押し切られ今に至る。

地震の影響はあるものの車は順調に栃木県を抜けたが福島県に入るに従って道の通行止箇所も増えて、その被害の大きさに田島は言葉を失った。

彼らの車が目的地に到着したのは午後3時を回ってしまっていた。

その場所はある学校の体育館、幸い連絡をくれた記者が待っていてくれており、係員に話しを通してくれていた為か、スムーズに中に入ることが出来た。

しかし、気持ちの整理をしないままスムーズに入れた事を田島は後悔した、静まり返った体育館の重苦しい雰囲気はこれまでの記者生活で幾度か戦場を経験した田島でも思わず息を呑まずにはいられなかった。

その雰囲気の中で真淵を探す田島。

「田島さん、こっちです。」

ウロウロしている田島を見かねて案内してくれた記者が声をかける。

記者に案内されて真淵の(元)に来た田島、予想していた通り変わり果てた姿になっていた真淵を見た田島の第一印象はずいぶん痩せているな?だった。

あらかじめ社のデータベースから真淵の顔や体型を確認していた田島だが、その変わりように地元の記者に本当に真淵本人なのか聞き返してしまった。

「間違いありません、身元を示すような物は何も所持していませんでしたが、田島さんから連絡をもらった後、私でも真淵助教授について調べてみました。」

「田島さんから伝えられていた特徴も一致しています」

確かに鼻の横にある特徴的なホクロが彼を真淵本人だと示している、しかし、この痩せようは?

確かに学者なら研究に打ちこむ余り食事を忘れる事もあるかもしれないがここまでやつれるものなのか。

「田島さんも気になりましたか、」

知り合いの記者が田島に声をかける。

「私が真淵助教授を発見出来た理由もそこです。」

「真淵助教授の亡骸は救助隊によりあるビルで発見されましたが、地震で亡くなったとは思えないその姿に事件性を疑って警察が動きました。」

「警察署に詰めていた私はその関係でこの場所に辿り着き真淵助教授を探し出せたと言うわけです。」

「事件性ですか、それで、警察のほうではなんて?」

「捜査はほとんど進んでいません、発見された部屋でいくつかの物は見つかっているみたいですが、この混乱ですから」

俺の疑問を解明する手がかりが途切れてしまった。

俺に地震の前にかかってきた電話、真淵は福島のこの地で自分の身もかえりみず電話をかけてきたのだろう。

真淵、お前はあの電話で俺に何を伝えたかったんだ。

人工地震なんて国家的陰謀、いっかいの記者の俺には手に余る。

・・・・?

電話⁉︎

「所持品の中に電話はありませんでしたか?」

突然の俺の質問に記者はキョトンとしたが記者らしくちゃんと答えてくれた。

「発見された品物の中に電話があったとは聞いていませんが、」

俺はここまで案内してくれたお礼を記者に伝えると、記者は次の取材があるからとこの場を後にした。

俺は今まで忘れていた一緒に来ていたはずの冴子の存在を思い出して体育館の中を見回した。

体育館の中に冴子の姿は見つからなかった、体育館の外に居るのか?

彼女も記者とはいえこの重苦しい雰囲気には慣れないだろう、いや、記者とはいえこの雰囲気に慣れてはいけない、俺は真淵をもう一度見てから冴子を探しに体育館の外に出る。

外の目立った所に冴子の姿は見当たらない。

俺は体育館の裏に回った、すると体育館の裏の人目を避けた場所に冴子はいた、冴子だけではない、明らかに一般人とは違う雰囲気を纏った男達2人とだ。

冴子は俺に気付くと何事もなかったように2人の男と別れ俺に向かって歩き出すし、ここで何をの俺の質問を無視して俺の車に乗り込んだ。

いろいろ不満だったが、ここでできる事は無いようだ、俺も仕切り直しの意味で一度東京に戻る為車に乗った。












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