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第 16話 動き始めた計画 3
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「して、ビューネイの庵にはたどりつけたのか?」
ロフトは駆け引きの時間は終わったとばかりにグイグイ俺に質問する。
完全に主導権を取っているとでも言いたげだ、俺も今後の事を考えると下手にばかりでてはいられない。
俺は勿体ぶった言い回しをする。
「辿り着けました、辿り着けましたが。」
ロフトは椅子から体を少し浮かして問う
「が?がとはなんじゃ?」
「会えなかったと申すか?」
ロフトが椅子から体を浮かした時点で主導権は此方に移りつつある。
此処は一気にいってしまう。
「会えましたが、ビューネイ本人ではなく、ビューネイの弟子だと言う者が出迎えてくれました。」
ロフトは椅子に座り直すと声のトーンを少し落とした。
「弟子とな?うん、まぁそうだろうな。」
ロフトもビューネイ本人がこの時代に生きているとは思っていない、ビューネイは数百年前の人物なのだ。
「で、その弟子殿はお前に何を?」
中々もどかしい、本当にロフトが俺に聴きたい事は、俺がビューネイの知識、王国の脅威と成るべく魔法の知識を得たかというところだろう。
俺は計画を進める上でロフトの力が絶対に必要になる事を考え全てを曝け出す。
「私に魔法の素質はありません、ビューネイの知識は得られませんでした。」
ビューネイの知識を得られなかったと俺から聞いたロフトは少し落胆したが、俺は構わず話しを続ける。
「しかし、弟子殿から今の王国にとって有益な情報を得ております。」
「それはもちろん破壊する者を倒す方法です。」
ロフトは目を閉じたまま俺の話しを聞いた後、口を開く。
「しかしな、その件は既に国軍が動いている」
「いかに、破壊する者が強大とはいえ我が国軍をもってすれば討伐できよう」
「万が一の為にギルドにも命をくだしたのだ」
ロフトが一筋縄でいかない事はわかっている、俺もここで引き下がれない。
「しかし、弟子殿の申すには破壊する者には如何なる攻撃も効かないとか」
「かの騎士団も全滅したかと」
ロフトは俺の騎士団という言葉に反応して遠い目をする。
「騎士団かぁ、我が敬愛する方もその戦いで無くしておる。」
「あの日、もう少し時間があれば、違う見送り方も出来たろうに」
ロフトの言葉は俺達に向かって言ったものではない、そうわかった上で俺は言葉を挟んだ。
俺が言おうとしたわけではない、俺に融合した騎士団長の魂が発した言葉。
「ロイド、あの日貰った勲章は先の戦いで貰ったどの勲章より輝いていた。」
この言葉にロフトは椅子から転げ落ちそうな勢いで俺に近づき座り込むと俺の顔を両手で掴み目を大きく見開いて顔を見た。
あの日の勲章とは破壊する者討伐、出陣の朝、ロフトがまだロイドと呼ばれていた時の事、ロイドは消して出来がいいとは言えない手作りの勲章を俺にくれ、笑顔で見送ってくれた。
モンスターの討伐だ、無事に帰れるとは限らない、不安で泣きたい気持ちを我慢して笑顔で見送り俺も笑顔で答えた。
「・・・ザイン、おじさん・・」
そう呟いたロフトの目から涙が一筋落ちる、もちろんここで言うザインは俺のことではない、騎士団長の俺だ。
ロフトはその涙で我にかえると立ち上がり何事もなかったように椅子に座り直して俺に質問した。
「ザインよ、ビューネイ殿の庵では破壊する者の討伐方法を教わる以外にも何かあったのか?」
「いや!回りくどい言い回しはやめよう、ザイン、お主は何者じゃ!」
俺も回りくどいことは好きではない、ここはストレートに返す。
「わかりました、お答えします。」
「私は破壊する者に対抗する為、ビューネイ殿の秘術を使って幾つかの魂と融合しております。」
「その魂の中には閣下の良く知る魂も含まれます」
ロフトはもう一度立ち上がる。
「なんと!融合とな!」
「其方の中にザインおじさんの魂が?」
この話しにはロフトだけでなくリフリーや森の護り手のメンバーを驚きのあまり立ち上がってしまった。
俺はあくまで冷静を装って膝跨いだまま答えた。
「閣下、その通りです。」
ロフトはこの閣下という言葉に反応した。
「閣下は止めよ!」
「余などザインおじさんから見たら幼な子も同然、閣下などとは恥ずかしいわ」
早く本題に入りたい俺にとってはこんなやり取りはもどかしいが仕方ない、俺はロフトに聞き返す。
「では、何とお呼びすれば?」
ロフトは少し考えると呟く。
「・・・ロイド・・ロフト・・ロフト殿」・・・コホン!
ロフトはひとつ咳払いすると、「貴方には今の私はどの様に見えますか」と騎士団長の魂の俺に問う。
「この国にとって宰相殿はなくてはならないお方かと」
俺は思わずそう答えてしまった。
その言葉にロフトはまた涙を流しながら「・・そうか・・・そうか」と頷いている。
そして人目も憚らず涙を拭うと先ほどまでとは人が変わった様に俺に尋ねた。
「ザインよ、私に破壊する者の対処方法を教えてくれ。」
俺は答える。
それは、
【王国の大地を緑で埋め尽くすのです】
一瞬、この場が静かになった後、ロフトが口を開く。
「ん?すまん、良く聞こえなかった」
「もう一度言ってくれないか」
俺の直ぐ後ろで聞いていたギルド長が慌てて俺の口を塞ごうとしたが、俺は構わず言う。
【王国の大地を緑で埋め尽くすのです】
そうきっぱり言い放った。
ロフトは駆け引きの時間は終わったとばかりにグイグイ俺に質問する。
完全に主導権を取っているとでも言いたげだ、俺も今後の事を考えると下手にばかりでてはいられない。
俺は勿体ぶった言い回しをする。
「辿り着けました、辿り着けましたが。」
ロフトは椅子から体を少し浮かして問う
「が?がとはなんじゃ?」
「会えなかったと申すか?」
ロフトが椅子から体を浮かした時点で主導権は此方に移りつつある。
此処は一気にいってしまう。
「会えましたが、ビューネイ本人ではなく、ビューネイの弟子だと言う者が出迎えてくれました。」
ロフトは椅子に座り直すと声のトーンを少し落とした。
「弟子とな?うん、まぁそうだろうな。」
ロフトもビューネイ本人がこの時代に生きているとは思っていない、ビューネイは数百年前の人物なのだ。
「で、その弟子殿はお前に何を?」
中々もどかしい、本当にロフトが俺に聴きたい事は、俺がビューネイの知識、王国の脅威と成るべく魔法の知識を得たかというところだろう。
俺は計画を進める上でロフトの力が絶対に必要になる事を考え全てを曝け出す。
「私に魔法の素質はありません、ビューネイの知識は得られませんでした。」
ビューネイの知識を得られなかったと俺から聞いたロフトは少し落胆したが、俺は構わず話しを続ける。
「しかし、弟子殿から今の王国にとって有益な情報を得ております。」
「それはもちろん破壊する者を倒す方法です。」
ロフトは目を閉じたまま俺の話しを聞いた後、口を開く。
「しかしな、その件は既に国軍が動いている」
「いかに、破壊する者が強大とはいえ我が国軍をもってすれば討伐できよう」
「万が一の為にギルドにも命をくだしたのだ」
ロフトが一筋縄でいかない事はわかっている、俺もここで引き下がれない。
「しかし、弟子殿の申すには破壊する者には如何なる攻撃も効かないとか」
「かの騎士団も全滅したかと」
ロフトは俺の騎士団という言葉に反応して遠い目をする。
「騎士団かぁ、我が敬愛する方もその戦いで無くしておる。」
「あの日、もう少し時間があれば、違う見送り方も出来たろうに」
ロフトの言葉は俺達に向かって言ったものではない、そうわかった上で俺は言葉を挟んだ。
俺が言おうとしたわけではない、俺に融合した騎士団長の魂が発した言葉。
「ロイド、あの日貰った勲章は先の戦いで貰ったどの勲章より輝いていた。」
この言葉にロフトは椅子から転げ落ちそうな勢いで俺に近づき座り込むと俺の顔を両手で掴み目を大きく見開いて顔を見た。
あの日の勲章とは破壊する者討伐、出陣の朝、ロフトがまだロイドと呼ばれていた時の事、ロイドは消して出来がいいとは言えない手作りの勲章を俺にくれ、笑顔で見送ってくれた。
モンスターの討伐だ、無事に帰れるとは限らない、不安で泣きたい気持ちを我慢して笑顔で見送り俺も笑顔で答えた。
「・・・ザイン、おじさん・・」
そう呟いたロフトの目から涙が一筋落ちる、もちろんここで言うザインは俺のことではない、騎士団長の俺だ。
ロフトはその涙で我にかえると立ち上がり何事もなかったように椅子に座り直して俺に質問した。
「ザインよ、ビューネイ殿の庵では破壊する者の討伐方法を教わる以外にも何かあったのか?」
「いや!回りくどい言い回しはやめよう、ザイン、お主は何者じゃ!」
俺も回りくどいことは好きではない、ここはストレートに返す。
「わかりました、お答えします。」
「私は破壊する者に対抗する為、ビューネイ殿の秘術を使って幾つかの魂と融合しております。」
「その魂の中には閣下の良く知る魂も含まれます」
ロフトはもう一度立ち上がる。
「なんと!融合とな!」
「其方の中にザインおじさんの魂が?」
この話しにはロフトだけでなくリフリーや森の護り手のメンバーを驚きのあまり立ち上がってしまった。
俺はあくまで冷静を装って膝跨いだまま答えた。
「閣下、その通りです。」
ロフトはこの閣下という言葉に反応した。
「閣下は止めよ!」
「余などザインおじさんから見たら幼な子も同然、閣下などとは恥ずかしいわ」
早く本題に入りたい俺にとってはこんなやり取りはもどかしいが仕方ない、俺はロフトに聞き返す。
「では、何とお呼びすれば?」
ロフトは少し考えると呟く。
「・・・ロイド・・ロフト・・ロフト殿」・・・コホン!
ロフトはひとつ咳払いすると、「貴方には今の私はどの様に見えますか」と騎士団長の魂の俺に問う。
「この国にとって宰相殿はなくてはならないお方かと」
俺は思わずそう答えてしまった。
その言葉にロフトはまた涙を流しながら「・・そうか・・・そうか」と頷いている。
そして人目も憚らず涙を拭うと先ほどまでとは人が変わった様に俺に尋ねた。
「ザインよ、私に破壊する者の対処方法を教えてくれ。」
俺は答える。
それは、
【王国の大地を緑で埋め尽くすのです】
一瞬、この場が静かになった後、ロフトが口を開く。
「ん?すまん、良く聞こえなかった」
「もう一度言ってくれないか」
俺の直ぐ後ろで聞いていたギルド長が慌てて俺の口を塞ごうとしたが、俺は構わず言う。
【王国の大地を緑で埋め尽くすのです】
そうきっぱり言い放った。
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