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第 1話 転生したら農夫でした。

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「リフリー、今回の魔獣の討伐依頼、他の冒険者に任せることはできないのか?」

「ザイン?何をそんなに心配しているの? 魔獣の討伐なんていつものことじゃない?」

俺の心配をよそにリフリーはいそいそと討伐準備をしている。

俺の名前はザイン、とある村で農夫をしている。

リフリーは俺の嫁、冒険者をしている。

小さな村の耕す場所のほとんどない農夫に収入などあるはずもなく、俺はほぼリフリーに養って貰っている。

この村の住人は魔法を使える者や力強い者は冒険者になり、それ以外の者は遠くの街に出稼ぎに行く。

そういうことで魔法が使えて力の強い我が嫁のリフリーは冒険者になり。

力も弱く魔法も使えない俺は耕す場所もない農夫をしている。

討伐の準備を終えたリフリーが俺に声をかける。

「ザイン、キャロの事お願いね。」

キャロとは俺とリフリーの娘のあだ名、正式にはキャルロットと言うのだが呼びにくいのでもっぱらキャロと呼ばれている。

今年6歳を迎え、少し生意気になってきたが、まだまだかわいい盛りだ。

最近はことある毎にリフリーの味方をして俺に反抗する。

そのキャロは今、村の友だちと遊びに行っている、戻った時にリフリーが出かけたことを知ったら、また俺にあたるだろう。

キャロのこともあるが今回の依頼、俺には気がかりがある、俺はもう一度リフリーを引き止める。

「なぁ、リフリー。」

「キャロが帰ってお前がいないと心配するぞ?」

「ザ・イ・ン! もう決まったことなの!」

「今回の魔獣はそんなに大きくないし、こちらの人数も充分よ」

「夕方には帰って来るわ、夕食を作って待っていてくれる。」


       ☆


そう言って2日、まだ帰って来ない。

キャロは心配からか昨日からほとんど食事を食べていない、ずっと俺の側から離れずに、「パパ、ママはまだ帰って来ないの?」と俺を質問攻めにする。

いままでのにこんなことは一度もなかった、リフリーが所属する冒険者パーティーは街の冒険者ギルドを含めても強い部類に入るパーティーで、街のギルドでこなせない難しい依頼もこなしてきた。

「ねぇ!ママはまだ・・・」

キャロが泣き顔で俺の服を引っ張る。

そもそも今回の依頼、何かおかしかった魔獣の出現した位置が村に近かったと理由で依頼が村にまわってきたのだろうが魔獣の情報が少な過ぎる。

リフリーが俺に教えていないだけかもしれないが、魔獣の種類も出現した場所もわからないのだ。

考えられることは2つ、この依頼が悪意を持って村に依頼されたか、最初に依頼を受けた冒険者パーティーが魔獣の情報を伝える前にやられたかだ?

悪意とは、最近メキメキ腕を上げてきたリフリーのパーティーを妬んだ他の冒険者パーティーが居もしない魔獣の話しをでっち上げてギルドに依頼して、その依頼を受けたリフリーのパーティーを罠に掛けるというものだが、そもそもリフリーのパーティーがその依頼を受けるとは限らない。

まぁ、村で1番強いリフリーのパーティーが依頼を受ける可能性が高いのだが。

2番目の可能性は最初の冒険者パーティーが情報を伝える前にやられた場合、こちらは相当に厄介だ。

村で依頼を受けたのはリフリーのパーティーが最初、もし先に依頼を受けたパーティーがいるとすれば街の冒険者パーティー。

いくらリフリーのパーティーが村で1番と言っても、街の冒険者ギルドにはリフリーのパーティーより強い上位ランクの冒険者パーティーもいる。

『・・・俺が鍛えた冒険者の子供達もいるはずだが?・・・』

もし、上位ランクのパーティーが依頼を受けて失敗していたとしたら。


どちらにしても危険な依頼であることに変わりはない。

村の外は大騒ぎになっている、救援隊を出そうと冒険者を含めた大勢の人間が集まっている。

俺も救援隊に参加する。

離れたくないと嫌がるキャロを無理矢理にキャロの友だちの家に預けて村の広場に向かっている。

広場には村の冒険者を含め15人の人間が集まっていた、その中の知り合いが俺の側に来て声をかける。

「ザイン!お前も参加するのか?」

「リフリーが戻らないのだから当たり前の話しだが、お前、足手まといになるなよ!」

彼が悪態をつくのもうなづける、この村で冒険者を生業としている両親の子供として転生した俺の、才能の無さに早くから気付いた両親は、俺に農夫になることを勧めた。

生まれてすぐに自分の才能の無さに気付いていた俺はあっさりその提案を受け入れた。

リフリーとは、冒険者見習いとしてこの村を訪れたリフリーを両親が自宅に招いたことから始まる。

冒険者の親父と気が合ったリフリーは、たびたび家を訪れるようになり、そんな中俺といい雰囲気になって今に至る。

俺を子供の頃から知っている彼もずっとニートの俺を当てにはしていないという口ぶりだ。


救援隊のリーダーらしい冒険者の指示が飛ぶ、いよいよ救援隊が出発する時がきたようだ、村のみんなが心配そうに見守る中、冒険者を先頭に15名の救援隊が村を出発した。








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