上 下
867 / 898

ー閃光ー159

しおりを挟む
 本当、和也には色々と教わってきているような気がする。

 俺の性格上、コミュニケーションっていうのは苦手だったからなのか、人生の中であまり人と関わってこなかったのだ。

 むしろ、小学校、中学校、高校に大学と、勉強に明け暮れていた人生を送ってきた。父親が医者っていうだけで、俺も医者になるつもりだったのもあるのだけど、常に学校では一番でいなければならないという使命感があったのか、もしかしたら無意識のうちに学校にいたメンバーをライバル視していたから友達を作ろうとも思わなかったのかもしれない。

 だけど俺の中では、別に友達を作ろうなんて思っていなかった。それとも、俺自身が周りの人間に向かって無意識のうちに「近寄るなオーラ」を出していたのかもしれない。

 だけど和也だけは違った。

 きっと俺的には「近寄るなオーラ」を出していたのだろうが、和也の場合には全くそんなことは関係なく、気付いたら俺の近くにずっといて、仕事が終わった後も一緒に飲んだり食べに行ったりしていたのだ。

 今まで全く気付いていなかったが、本当にそういうところが和也のすごいところなんだと思う。

 そういう行動力みたいなところがあるから、まだ知り合い程度だった雄介の家にも行けたのだろう。そして俺のことについて話すことができたのかもしれない。

「……で、その後は、雄介から望に電話はあったんだろ? まぁ、次の日には雄介は笑顔で望の所に迎えに来てたもんなぁ……」

 そう笑顔で和也に言われて、

「ああ、まぁ、確かに、そうだったな……」

 と俺も笑顔で答える。

 今まで和也って気持ち的に鬱陶しい奴だと思っていたけど、今になってよく考えると、和也ってこんなにも俺のために動いていてくれたんだと思い、和也に向けて笑顔を向けたのだった。

 きっと和也のことだから、そんな俺に気付いてくれているだろう。

 思い出話に花を咲かせるのもいいのだが、俺にはまだ明日仕事がある。

 今日の話はそこまでにして、

「そろそろ、寝てもいいかな?」

 と俺は少し遠慮がちに聞いてみる。

「え? あ、そうだったな……望にはまだ明日仕事があるんだもんなぁ……」

 そう言ってくれる和也。だが急に次の瞬間、俺に再び話を振ってくるのだ。

「なぁ、今望と一緒にいる看護師って、どんな感じの人なんだ?」 
「……へ?」

 急にそんなことを聞かれて、思わず声を裏返してしまった俺。

 ある意味、色々な意味で声を裏返してしまっていたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...