上 下
846 / 881

ー閃光ー138

しおりを挟む
 その言葉に、裕実と和也は再び視線を合わせ、今度は和也が、

「いいんじゃねぇのか?」

 と笑顔で言ってくるのだ。

 きっと二人は俺のことを心から応援してくれているのだろう。

 確かに俺は和也たちには春坂に来なくていいとは言ったのだが、やっぱり来てくれて良かったのかもしれない。

 そこもさすが和也ってところなのだろう。

「じゃあ……」

 そう言ってその場に立ち、もう一枚、和也たちへ掛け布団を持っていく。
 その後、自分と雄介の部屋へと入る俺。

 雄介はすでに寝ている。部屋の中にはベッドの近くにある電灯だけが点いている。

 雄介はこの電灯を点けて寝ないと眠れないのだろうか。それとも、俺がいつ戻ってきてもいいように点けてくれているのだろうか。真意はわからないが、その淡い光が辺りを照らしていた。

 そんな中で薄っすらと見える雄介の姿。

 どうやら珍しくうつ伏せで寝ているらしい。

 いつもの雄介なら、うつ伏せではなく仰向けで寝ていることが多いのに。記憶を失ってからの雄介は、うつ伏せで寝ていることが多いのかもしれない。

 もっとも、雄介が記憶を失ったのは一昨日のことだから、その傾向があるのかどうかはわからない。ただ、昨日も今日もそうなのだから、その可能性は高いのだろう。

 とりあえず俺はそっと雄介の布団の中へと入る。

 すると、背後のほうで何か声が聞こえてきたような気がした。

「……望……来てくれたのか?」

 その言葉に一瞬で反応する俺。

 雄介の太くて温かい腕が俺の体を包み込む。

「……っ!」

 俺の頭の中でパニックが起きそうになる。

 今の雄介は記憶喪失の状態で、俺が知っているいつもの雄介ではないはずだ。それなのに、雄介はしっかりと俺の体を太くて温かい腕で包み込みながら、若干関西弁っぽい口調で話してきている。

 そう、記憶のない雄介とはまったく正反対の雄介だった。むしろ、いつもの雄介みたいな口調で、こんな行動をしてくるなんて。

 まさか、雄介が元に戻ったのだろうか。

 もしそうだとしても、さすがに早すぎやしないか?

 いや、記憶が戻るのに早すぎるも何もない。むしろ、早く戻ってほしいのだから、それはそれでいいのかもしれない。

 俺は思い切って雄介のほうに体を向ける。

 そう、今まではずっと雄介に背中を向けて寝ていた。反対側に体を向けていたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

少年達は淫らな機械の上で許しを請う

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...