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ー閃光ー94

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 とりあえず俺は雄介にお風呂に入ってもらうよう促すと、それこそ、本当に今度は新城たちの方へと視線を向けて話し始めようとしたのだが、どうやら新城は俺の性格みたいなものが分かっているからなのか、先に疑問に思ったことについて聞いてくるのだった。

「今日、私たちが昼の休み時間に、私と実琴がトイレでしてる時に、吉良先生は個室の外でしゃがみ込んでましたよね?」

 その新城の言葉で、俺の方も昼間あったいろいろなことを思い出してしまったかのように思える。

 そこで俺は視線を天井へと向け、唾だけを飲み込む。

 それを新城が気付かないわけがないだろう。

「唾なんて飲み込んで、吉良先生が今抱え込んでいる悩みを飲み込んでしまったって、何も解決はできませんよ。それに、悩みっていうのは誰かに相談して少しでも吐き出していくのがいいことなんですからね。それに一人で考え込んだって解決できるわけじゃないですからね。だから、相談とかして、それで最終的に決断するのは自分だと思ってますから。それに、昼間の食堂にいる時から、吉良先生は私たちに目で訴えてきてたんですからね。『相談に乗ってくれって』ね」

 その新城の言葉に、俺は目を見開く。やはり新城は医者というだけあるのだろう。そこは和也以上に人間分析ができるということなのかもしれない。

 俺はその新城の言葉で諦めたようにため息を吐く。

「やっぱり、新城先生には嘘つけないってことなんですね。全く俺とあまり付き合っていないのにも関わらず、俺のこと分かってるっていうのか、今まで病院でたくさんの人を見てきての人間分析だと思うので、本当に頭が下がる思いです」

 そこまで言うと、どうやらもう雄介はお風呂から上がってきたらしく、俺の背後に立っていたのだ。

 きっとお風呂から上がったはいいものの、どうしたらいいのかが分からなかったのだろう。

「ん?」

 と言い、俺は、

「もう寝てていいからな。俺たちはまだ話があるからよ」

 今日はとりあえず雄介に普通に話しかけられた俺。すると雄介は、今日はこれだけの人間がいるからなのか、素直に、

「分かりました」

 そう言って昨日寝ていた部屋へと向かうのだ。

 そこで、俺は変なため息をついてしまう。

 とりあえず雄介を寝かせることができてひと段落したところで、今一度息を吐くと、

「昨日の夜は、雄介と俺とで二人きりだったのですが、雄介がいつもと雄介らしくなくて、『俺たちっていうには、結婚しているのだから、体を求めてもいいんだろ?』っていう感じで俺に迫ってきたんですよね。だけど、雄介は普段そういう人間ではないんですよ。むしろ、俺のことを一番に考えてくれて、俺が疲れてそうなら、雄介からは体を求めてきませんしね。それに、そういうことに関してはすごく優しくて俺のことを考えてくれて……なのに、昨日の雄介はそうじゃなかったんです。だから、俺はそんな雄介から逃げ出したくなったっていうことなんですよね」
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