800 / 881
ー閃光ー92
しおりを挟む
「あ……」
俺は思わず新城の考えていることに納得してしまい、声に出てしまっていた。
それに気付いたのか、新城は俺に向けてウインクしてくる。
相変わらず新城に先を越されたことにイラッとはしたが、そこはとりあえず抑えて、今は新城に合わせた方がいいだろう。
「……神経衰弱? って、どうやってやるんだ?」
一応、興味を持ったふうに言ってみたが、実際にはこれまでこういったゲームに縁がなく、本気で聞いてしまっていた。
「え? あー!」
一瞬、新城は驚いたような感じを見せたが、さすが頭の回転が早いだけのことはある。その一瞬で俺の言葉から何かを見極めたらしく、その後は丁寧に説明してくれる。
俺もトランプのルールを理解し、そのゲームに参加し始めた。
同じ数字を合わせていくだけのルールで、あとは記憶力が鍵になるゲームだ。
そう、今の雄介にはぴったりのゲームだろう。
記憶喪失というのは、思い出や家族、知り合いに関する記憶がなくなっているのか、日常生活に関する記憶が欠けているのか、さまざまな記憶が失われている可能性がある。だから、こういった簡単なゲームをして、どこに問題があるのか少しでも分かるようにするということなのだろう。
だからこそ、新城はあえてババ抜きや神経衰弱といったトランプゲームを選んで遊んでいるのかもしれない。
どうやらゲームのルールは新城から教えてもらい、雄介もそれを理解してプレイしているようだ。
雄介は間違えることも多々あるが、それでもゲームのルール自体は把握できていると思う。
まずはその点をゲームを通して確認することができたように思える。
そして俺たちは、本当に記憶力が重要な役割を果たしているので、新城と俺の間には微妙な緊張感が流れているのは気のせいだろうか。
確かに今は新城と俺の間でフレンドリーな雰囲気があるが、このゲームに関しては、見えない闘志があるのかもしれない。
一度記憶したことは忘れない。実琴や雄介がミスすると、すぐに俺か新城が取りに行く。
本来は雄介の記憶喪失の具合を見るためのゲームだったはずなのに、今では新城と俺の真剣勝負になってしまっていたのかもしれない。
無意識の攻防戦。
相手に何かを言うこともなく、静かにそのゲームは進んでいた。
そして最終的に、最も多くのカードを保持していたのは、新城と俺だった。
「吉良先生、なかなかやりますねぇ」
「新城先生だって、なかなかですよねぇ」
その言葉からして、新城が俺を意識していたことが明らかだった。
俺は思わず新城の考えていることに納得してしまい、声に出てしまっていた。
それに気付いたのか、新城は俺に向けてウインクしてくる。
相変わらず新城に先を越されたことにイラッとはしたが、そこはとりあえず抑えて、今は新城に合わせた方がいいだろう。
「……神経衰弱? って、どうやってやるんだ?」
一応、興味を持ったふうに言ってみたが、実際にはこれまでこういったゲームに縁がなく、本気で聞いてしまっていた。
「え? あー!」
一瞬、新城は驚いたような感じを見せたが、さすが頭の回転が早いだけのことはある。その一瞬で俺の言葉から何かを見極めたらしく、その後は丁寧に説明してくれる。
俺もトランプのルールを理解し、そのゲームに参加し始めた。
同じ数字を合わせていくだけのルールで、あとは記憶力が鍵になるゲームだ。
そう、今の雄介にはぴったりのゲームだろう。
記憶喪失というのは、思い出や家族、知り合いに関する記憶がなくなっているのか、日常生活に関する記憶が欠けているのか、さまざまな記憶が失われている可能性がある。だから、こういった簡単なゲームをして、どこに問題があるのか少しでも分かるようにするということなのだろう。
だからこそ、新城はあえてババ抜きや神経衰弱といったトランプゲームを選んで遊んでいるのかもしれない。
どうやらゲームのルールは新城から教えてもらい、雄介もそれを理解してプレイしているようだ。
雄介は間違えることも多々あるが、それでもゲームのルール自体は把握できていると思う。
まずはその点をゲームを通して確認することができたように思える。
そして俺たちは、本当に記憶力が重要な役割を果たしているので、新城と俺の間には微妙な緊張感が流れているのは気のせいだろうか。
確かに今は新城と俺の間でフレンドリーな雰囲気があるが、このゲームに関しては、見えない闘志があるのかもしれない。
一度記憶したことは忘れない。実琴や雄介がミスすると、すぐに俺か新城が取りに行く。
本来は雄介の記憶喪失の具合を見るためのゲームだったはずなのに、今では新城と俺の真剣勝負になってしまっていたのかもしれない。
無意識の攻防戦。
相手に何かを言うこともなく、静かにそのゲームは進んでいた。
そして最終的に、最も多くのカードを保持していたのは、新城と俺だった。
「吉良先生、なかなかやりますねぇ」
「新城先生だって、なかなかですよねぇ」
その言葉からして、新城が俺を意識していたことが明らかだった。
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる