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ー閃光ー56

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 とりあえず、俺はソファでゆっくりと考えたいところだが、まだ美里がここにいる。だからおもてなしではないけれど、美里の相手もしなければならないので、ゆっくりしている場合ではない。

 雄介が記憶喪失になってしまったことで、今、俺は美里の相手をしなければならないという状況にある。

 雄介が記憶を失ったことで、今の俺たちの生活はかなり変わってくるだろう。それもまた、今の悩みの種なのかもしれない。

 俺は自分を冷静に保つため、ゆっくりと空気を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。

「美里さん……とりあえず、ここにあるソファに座っていていただけませんか? 俺は帰る用意をしてしまうので……」 
「あ、はい……わかりました……あ、雄介もソファに座らせておいたほうがいいですかね?」 
「あ、そうですね。雄介と二人で座ってても構いませんよ……」

 美潮は帰らせたので、気にせず美里の相手ができるだろう。

 しかし、本当に美潮という人物は面倒くさい。

 どうしてそんなにも融通が効かないのだろうか。

 これがもし和也なら、プライベートなことでも色々と話をすることができるし、そう考えると、和也の存在がどれだけ良かったのかがわかってきた。

 何でも相談に乗ってくれるし、一緒に飲みにも行けたし、家にも呼んだことがある人物でもあったのだから。今さら和也のことを良いと思っても、確かにもう遅いのかもしれない。

 そこで俺はひと息吐く。

 確かに今、和也は自分の側にいないが、たまには連絡とは言わないけれど、後で相談がてら電話してみようと思う。

 俺はロッカーの扉をゆっくりと閉め、息を吐き出した。

 しばらくは自分が一人で雄介や美里の面倒を見なければならないだろう。今は昔と違って、和也や裕実は側にいないので、自分のことを支えてくれる人物なんていないのだから。

 ゆっくりと扉を閉めたことで、逆に言えば、自分に気合いを入れたも同然だ。

 一旦、俺は美里が待っているソファまで行き、

「じゃあ、とりあえず、家に行きましょうか?」
「そうですね」

 と美里は俺に向けて笑顔を向けてくれた。何だかそこにほっとしてしまう自分がいた。

 本当に誰かの笑顔というのは、何だか安心できる。

 俺は雄介を支え、まずは自分の車が止めてある駐車場へと向かう。

 そして雄介を後部座席に座らせ、美里も後部座席に座らせた。それから俺は車を走らせる。

 しかし、こう話すのが苦手な俺は、美里にどう話せばいいのかわからず、車内は未だに静かな状態だ。
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