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ー閃光ー49

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やはり、雄介には完全に記憶がないと、俺も美里もその質問で確信したようだ。そして、悲しいことに、俺と雄介が結婚しているという事実も、雄介の記憶の中には完全に存在しないように感じられる。

 俺の鼓動が緊張で高鳴り始めた。

 今まで表面上では確かに冷静でいられた俺だが、今の雄介からの質問に動揺しない人間などいないだろう。だからこそ、変に心臓が高鳴ってしまうのだ。

 俺はもう完全にパニック寸前だ。

 だが、こういう時こそ冷静でいなければならない。医者として、余計にそう思う。

 俺は一旦心を落ち着かせるために、深呼吸をした。

 そこでふと、美里のことが頭をよぎった。

 俺だって、雄介が記憶を失くしてしまったことで、危うく冷静さを失いそうになったのだから、当然、美里も冷静さを失う可能性がある。しかも、美里の場合、今は俺と雄介の赤ちゃんをお腹に抱えている。だからこそ、こういったトラブルを避けたかったのだが、もう避けて通れない状況になってしまった。本当に頭を抱えたいところだ。美里が一人になった時、どうなってしまうのかが心配だ。

 とりあえず、今は雄介を検査に向かわせないと、今の雄介がどうなっているのかが分からない状態だ。

 今、ここにいる三人がそれぞれパニック状態だから、まずは一つ一つ冷静に対処して、自分たちの頭や心が整理しやすいようにしていくべきではないだろうか。

「とりあえず、雄介、検査に行こうか?」

 その言葉に少し間が空いた後、

「……なぜ、私は検査しなきゃいけないのかが、まだ、分からない……」

 そこは俺が雄介を説得しなければならないところなのかもしれない。

 俺は雄介の言葉を受けて一呼吸し、

「だからな。確かに、今のお前には全く記憶がないのかもしれないが、雄介は、少し前に船の事故で人を助けに行って、そこで一日中海の中にいたんだ。それからのことは俺には分からないけど、海の中で彷徨って、ある島に辿り着いて戻ってきたんだ。それで、頭を打ったか何かしたらしく、一度病院で検査を受けたんだが、その時は特に異常はなかった。でも、今になってその影響が出てきたみたいで、今の雄介には記憶がない。だから、それを調べたいだけなんだ。記憶喪失っていうのは分かるか?もしかしたら、その可能性が高いから、一度、検査してみた方が、より状況が分かるって言ったら理解できるか?」

 俺の言葉に、雄介は少し考えているように見える。

 俺の説明はかなり長かったからかもしれない。今の雄介にとって、それを理解するのに時間が掛かるのだろう。
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