上 下
748 / 834

ー閃光ー40

しおりを挟む
 本当に雄介には驚かされる。まさかカレーまであんな風に作ってしまうとは思わなかった。

「……へ? マジか……」
「ま、まぁな……」

 そして、相変わらず謙虚なところが、雄介の素敵なところだ。

 本当に雄介の場合は、そういったことを自慢げに言わないところが、またいいのかもしれない。

「ホント、雄介が旦那さんで良かったよ……」

 そう、俺も素直に言うのだ。

「ん……ありがとうな。望にそう言ってもらえると、ホンマ、嬉しいわぁ……」

 そう返してきて、笑顔を俺に向ける雄介。

 本当に、今はこういう一瞬さえも幸せに感じる。

 先ほど帰宅したときには、一瞬ドキリとしたものの、今ではもうそんなこともなく、幸せな時間を過ごしている。

 俺たちはご飯を終えると、今度はお風呂の準備を始める。

 そこは俺の役目だ。

 とは言っても、軽く浴槽を洗ってお湯を溜めるだけだが。

 いや、きっと昼間に雄介がお風呂掃除をしてくれているから、軽くシャワーで浴槽を流し、お湯を溜めるだけでいいのだろう。

 ホント、雄介はマメな性格だ。

 昼間は家の端から端まで掃除してくれて、洗濯やお皿洗いまでしてくれる。だから、俺は本当に雄介に対して何も言うことがないくらいのパーフェクトな人間だと思っている。

 俺がお風呂にお湯を溜めて戻ってくると、雄介はテレビの前で、コーヒーを啜りながら見ていた。

 もちろん、俺の分のコーヒーも置いてある。

 今の俺は気にせず雄介の隣に座り、コーヒーを啜りながらテレビに視線を向ける。

 以前はバラエティ番組が苦手だったけど、雄介や和也のおかげで見られるようになった。

 二人で笑い合い、二人だけの時間を過ごす。そしてお風呂が溜まったら一緒に入る。それだけの時間が、今は本当に楽しい。昔は、俺は雄介に対してツンツンとした態度を取っていて、よく喧嘩もしていたけど、今は素直になったからなのか、あるいは雄介のことを信じられるようになったからなのか、こうした二人だけの時間を楽しめるようになった気がする。

 恋人の時間や夫夫の時間は、こうやってパートナーと楽しむ時間なんだと、雄介が言わなくても教えてくれたような気がする。

 しかし、そういう時間はすぐに過ぎ去ってしまうものだ。

 もう今日はお風呂に入ったら、後は寝るだけの時間になってしまうのだから。

 当然、寝ている時間というのは、他の人間とは合わない時間だ。だから寝てしまったら、次に起きたときには仕事の時間になってしまう。

 本当はもっともっと雄介と一緒に時間を過ごしたいと思うのは、我儘なのだろうか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

孤独な戦い(1)

Phlogiston
BL
おしっこを我慢する遊びに耽る少年のお話。

我慢できないっ

滴石雫
大衆娯楽
我慢できないショートなお話

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

処理中です...