上 下
722 / 881

ー閃光ー13

しおりを挟む
 そこに怯んだように見えたのは、むしろ、雄介の方だ。

 いきなり琉斗からの無理難題に困ってしまっている雄介。いや、俺だってこの問題は関係者でもある。

 だけどこの俺が何かアドバイス的なことを言えるわけもなく、二人して完全に琉斗のその無理難題に固まってしまっていた。

「……ほな、どうしたらええの?」

 そう言う雄介に、何かこう琉斗の方が勝ち誇ったように思える。

 こう何か琉斗には策みたいなのがあるというのであろうか。まさかと思うのだが、今日ここに来た狙いみたいなのは、実はこの話をしに来たっていうことだったのであろうか。

 そう思うと、琉斗は子供なりの恐ろしい子供だって思ってしまう。

「雄介叔父さんが、僕のことを抱いてくれたら、雄介叔父さんのこと諦めてあげる。って言ったら?」

 その琉斗の言葉に再び俺たちが凍り付いてしまったのは言うまでもないだろう。

「そ、それは……さすがに、な……」

 そう完全に言葉を濁すように言っている雄介。

 そこははっきりと琉斗に言っていかないといけないところだと思うのだが。親戚だから、俺たちからしてみたら、琉斗は子供なのだから、もしかしたらそんなに強く言えないところなのかもしれない。

 だがしばらくして雄介は、

「あー! スマンっ! ホンマに琉斗が俺の事を好きになってくれているのは嬉しいねんけど……今は、本気で望の事が好きやし、結婚もしておるし、琉斗とは親戚やし、望が目の前におんのに、俺的には絶対に琉斗にはそんな事出来へんっ! 悪いねんけど、今日はもう帰ってくれへんか? 俺らのせいで姉貴が今大変だっていうのも分かっとるし……琉斗のところには散々俺らが迷惑かけておるのも分かっとる……せやから、琉斗が俺たちの事を困らせに来ているのも分かっとる……そういうことやろ?」

 その雄介の言葉に、俺も琉斗も一瞬時が止まったようにも思える。

 でも、一体、今雄介が言っていた意味っていうのはどういうことなんだろうか。俺からしてみたらさっぱり意味が分からなかったようにも思える。

 しかも琉斗の場合には瞳孔まで開かせていたのだから、気持ち的に雄介の言葉に焦っているという証拠だろう。そして瞳までも完全に宙へと浮かせてしまっているのだから。

「ほらな……そういうことやねんやろ? ホンマ、ゴメンなぁ……。俺らのせいで、琉斗のお母さん取ってまってるみたいやし……そやな……確かに、俺らが悪いんやって……自分たちの子供のために、琉斗のお母さんを利用してるんやもんなぁ……そりゃ、琉斗が俺らを困らせたくなるに決まっとるやん」

 再び雄介の言葉に、俺と琉斗は目を丸くさせていた。

 本当に雄介っていう人間は凄いと思う。ここまで子供についての心理学というのか、心理について詳しくなってきているとは思ってなかったことなのかもしれない。それに琉斗が完全に目を見開いて反撃してこないところをみると、完全に雄介が言っているまんまっていうことなのであろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

少年達は淫らな機械の上で許しを請う

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...