上 下
543 / 898

ー未知ー37

しおりを挟む
 本当に雄介の顔が俺の目の前にある。 俺の方は全然今の雄介の表情っていうのは、目が悪くて見えてぼやけてでしか見えてないのだけど、俺が雄介の事を引き寄せたのだなから目の前にいるのは分かっている。

 しかし本当にこんなにも人が愛おしいと思った事なんてあっただろうか。 それだけ俺からしてみたら雄介っていう人間は魅力があるっていう事なのであろう。

 本当に俺が心から好きになった人物。 だからなのか甘えたくなったり、色々な事を言えたりするのであろう。

 もう俺の方も雄介の方も隠し事みたいなのはないと思う。

 そう考えながら、俺は気付いた時には黙ったまま雄介の事を抱き締めていたようだ。 だけど雄介の方は黙ったまま俺に抱き締められていたという事だ。

 本当に雄介という人間は優しい。

 俺が黙ってしまっていてもこうして黙って待っていてくれるのだから。 何だかもう雄介ならいいやと思えてしまう。 それだけ雄介だって俺には我慢して来たのだから、そろそろ我儘な事をさせてもいいのかもしれない。 だからなのか今日の俺は、

「今日はお前がしたい事してもいいぞ……」

 と言ってみる。

「したい事!? って何? どういう意味!?」

 と本当に分からないような様子の雄介にこっちが面食らいそうになる。

「あんなぁ……いつもシてるようにじゃなくて、ちょっと意地悪な事をしてみたり、何ていうのか……いつもとは違うというのか、変わった感じでっていう事かな?」

 流石の俺もその言葉をストレートに言える訳もなく、何処か恥ずかしい言葉なのだから、俺の口からは直接言う事は出来ずに言うのだが、雄介は何か考えているのか、視線を天井の方へと向けていた。

 そんな雄介に、俺の方は目を座らせ、

「今の俺の言葉でピンって来ねぇのかよ……」
「へ? あ、ああ……まぁ……」

 そう嘘偽りもなく答えている所からすると、雄介の場合には本当に今俺が言った意味が分かってないようにも思える。

 そこに軽く息を吐くと、

「……たく。 そこは、ホント、雄介らしいよな。 ってつくづく思うぜ。 お前って、確かに、そういう奴だよなぁ」

 そう言って俺の方はゆっくりと雄介の下から抜け出すのだ。

「マジで分からないんだったら、今日はやっぱ俺がリードしたいかも……」

 俺の方は雄介の下から抜け出した後、再び雄介の事をベッドへと押し倒すのだった。

「……え? 何?!」
「だから、今日は俺がリードするって言ってんの……ってかさ、マジでいつも同じじゃマンネリ化するっていうのよく聞かねぇか? ま、だから、今日はそういう事で……」

 俺の方もそういう事に関しては口にはしたくはない。 だからなのか、かなりオブラートに包んで雄介に伝えるのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...