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ー未知ー23

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「なんやろな? めちゃくちゃ歌詞にある男性像に憧れがあるっていうんかな?」

 そう急に語り始める雄介。

「それに、今の俺達にピッタリだと思わん?」
「え? あ、確かにな……」

 雄介にそう言われて、俺の方も納得する。 だって、雄介の言う通り歌詞がこう何だか優しくて純粋で一途な人だからだ。

 この曲、雄介が好きっていうんなら、俺も好きになれそうな気がして来た。 いや雄介が好きなアーティストだからではなくて、今聞いてみて俺も好きになれそうな歌詞でもあって曲調でもあって、優しい歌声だったからでもあるのかもしれない。 曲調だっていつもクラッシックを聴いている俺の耳にも心地良い感じなのだから、俺からしても初めてこのアーティストが好きになれそうな気がした。

 この車内にゆったりと流れる曲調、しかも今の俺達にはピッタリな歌詞で体から力が抜けてしまうような感じにもなってしまうのは気のせいであろうか。

 しかし逆に考えれば、朔望もこの曲が好きなのだから、何だか急に複雑な気分になって来る。 だって朔望はこの歌詞とは全くもって逆の性格とかだからだ。

 そこで俺の方は一瞬で気分が台無しになる。

 今は朔望の事考えなきゃ良かったと思ってももう遅いだろう。

 気持ち的に俺の方は雄介には意味が分からず頬を膨らませていると、

「え? あ、スマン……ついつい、俺の勝手でCDを流してもうて……」

 俺のそんな様子に勝手に謝って来たのは雄介だ。

「……へ?」

 逆にそんな雄介に声を裏返したのは俺の方だ。

「だってな……そのCDのせいで望が気分を害したんやったら、スマンって……」
「あ、いや……そこは、大丈夫だからさ……。 寧ろ、俺だって、この曲昔聞いた事あるなぁ。 って思ってた所だし、歌詞聞いてたら、素敵だなぁ。 って思えたしな。 何だか、この歌詞の主人公が雄介に思えて来たっていうの?」

 その最後の俺の言葉を聞いて、雄介は俺の方へと目を丸くしながら視線を向けて来る。 そう丁度赤信号で車を止める事が出来たからであろう。 だけど直ぐに雄介は視線を正面へと向けて、

「あー、まぁ……ちょっとは意識してるのかもな……。 だって、なんかカッコいいやんか……恋人に一途で純粋で、こう歌詞の表現の仕方で頭にその情景が浮かんでくる感じがええって言うのかな?」

 その雄介の言葉に俺の方はクスリとし、

「確かに、それはあるのかもな。 そう! 歌詞が頭に入って来て、凄くいい感じなんだよなぁ……」

 そう考えるとちょっとだけ朔望に感謝したい気分にもなって来る。 だって一応、朔望はこのCDを買っていて、ここに置いておいてくれたのだから。 もし雄介が聞かなかったら、俺も雄介もこんな気分にはなってなかったかもしれないのだから。
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