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ー至福ー157

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「なんか、裕実って、やっぱ凄いよなぁ?」

 そうしみじみと言う俺。

「へ? 何でなん?」

 雄介の方は裕実との真剣な話を終えて、気が抜けてしまったのであろうか。 本当に気が抜けたような声で言っているのだから。

「え? 俺だったら、こう直ぐにお風呂まで雄介の様子を見に行く事が出来ないからな」
「へ? あ、あー! そういう事なぁ。 そこの所は裕実は関係無いやろうなぁ?」
「え? あ、まぁ……そういう事になるんだろうな」

 そんな気が抜けたような話をしていると、俺達の心配をよそに和也はいつもにように元気良くリビングへと戻って来る。

「ん? 和也、大丈夫だったのか?」
「へ? 何で、そうなるんだよー。 別に、俺の方はお風呂で寝てもねぇし、溺れてもねぇんだけどな」

 その和也の言葉にハテナマークなのは俺もなのだけど、雄介もらしい。 こう俺と和也の事を交互に見ているのだから。

「あ! 成程ねぇー、そういう事?」

 変に一人納得している和也。 本当に和也っていう人間は頭の回転が速いというのか空気を読めるというのか、やっぱそこの所は凄いと思う所だ。

「だってさぁ、雄介が裕実と話をしたかったんだろ? なら、俺の方はお風呂に入って早く出る事は出来ないじゃんか……そこで、和也君の方は空気を読んだ訳ー。 そしたら、後は出るタイミングだろ? こう早めに出過ぎても話終わってない訳だし、なら、俺はお風呂の浴槽でまったりとしてようと思ったんだよな。 それに、こう雄介と裕実って話をした事がなかっただろ? この機会だし俺的にも雄介に裕実の事を預けてみようと思った訳だ。 で、話が終わって、俺が長く入っている事に気付いたのなら、裕実が呼びに来てくれると思ってたからな」

 それを聞くと、本当に和也という人間は凄いと思ってしまう程だ。

 いや和也に関しては昔っから空気を読む事が出来る人間だとは思っていたのだけど。 いやしかしみんなそれぞれに特技ではないのだけど、何か凄い事が出来る人間がここに集まっているような気がするのは気のせいであろうか。 寧ろ、みんなそれぞれに性格が違うからこそ人と付き合うのが楽しいのかもしれない。

 今日はみんなのそれぞれの得意としている事が垣間見えた日だ。

「……で、裕実の方は雄介と話してみて、納得したのか?」

 何だかそういう事は脱衣所で話してくるもんだと思っていたのだが、和也の方はやはり空気を読めるからなのか、そういう所は堂々と聞いているようにも思える。

「え? あ、はい!」

 そう元気よく答えてくれているからこそ、今雄介が裕実に話した事は無駄にはなっていないという事だろう。 そこに安心する俺。

 これで俺等というのは、一ヶ月後には東京に向かえる事になった。

 また人生の新たな一歩として歩み始める。
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