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ー至福ー71

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 俺が前にデパート火災で記憶喪失になってしまって、その後後遺症で熱が出ると積極的になってしまう事があった。

 雄介はきっとそれを俺に聞いて来ているのであろう。

 だけど今の俺っていうのは、至って普通だ。 寧ろ、俺からすると普段通りだったりする位なのだから。 熱だって風邪だって引いてる気配というのは無い。

「何を疑ってんだよっ!」

 それを思い出した俺は、気持ち的に冷めた瞳で雄介の事を見上げる。

「あー……スマン……!」

 そう言って雄介は手を合わせ頭まで下げるのだ。

「何に対して俺に謝ってるのか分かってるのか?」
「ほらさ、望って熱が出ると、なんていうんか……積極的になるやつやろ? だから、それなんかな? って思っただけやって」

 そう後頭部を掻きながら視線を逸らして言っている雄介。

 俺はそんな雄介に気持ち的に頰を膨らませると、腕を組んで、

「それは、数年前までの事だろ? 今はもうそんな後遺症なんて出ないと思うぜ」
「あ、そっか! ほな……」

 そこでまた雄介は何か悩んでしまっているようにも思える。

 そして俺の腕を掴んで来て、

「望も俺との約束守って来てるって事なんやぁ」
「え? あ……」

 もうその約束に関しては意識してやってる事では無いような気がする。

 そうだ。 前に雄介と言い合った時に、雄介は『決断力を付ける事』と俺の方は『素直になる』という事を約束した。

「もう、そんな約束じゃなくて、俺は本気で……あー、素直にしてるつもりなんだけどな」

 こう俺の方は流石にそこまで真剣に聞いて来る雄介に、真っ直ぐに言える訳もなく、視線を逸らして答えるのだ。

「あー……また、スマン! そんな言い方じゃ、俺が望の事、疑っているようにも思えるもんなぁ」

 ホント、雄介ってそういう所はカッコいいのかもしれない。 こう自分が悪いと謝って来る所だ。

 だから俺はあの時、雄介の事を許せたのであろう。

 そうレスキュー隊員になれて、俺に何も言わずに異動してしまい、その後直ぐに俺等が住んでる地域で地震が起きて雄介達が助けに来てくれた時の雄介は言い訳等せずにただひたすら謝って来た事だ。

 言い訳をしたのは、俺が雄介の事を許した時。 ホント、そこまで雄介は俺に謝って来るだけで本当に何も言ってなかったようにも思える。

 本当にそこは雄介の凄い所なんだろう。 和也だって、今までそこまでした事が無いようにも思える。

 ま、和也の場合、雄介にみたいに謝るような事はしてないからなのかもしれないのだけど。

「ま、とりあえず、そこはいいとしてさ……。 今日は俺が動いていいんだろ?」
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