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ー至福ー51

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「なら、裕実にでも、望の事聞いてもらうようにしようか? 望の事だから裕実には話してくれるんだろ?」

 そう和也の方は半分諦めた風に言って行くと、和也は今度裕実の耳側でコソコソと何かを話始めるのだ。 まぁ、相変わらず、最初は和也が裕実の耳側で話す事を嫌がっていたのだけど、きっと何か言葉を言って気になったのか耳を傾けてくれたようだ。

 どうせ今の俺との会話を裕実に吹き込んだ。 っていうのか、今和也が裕実に聞いてもらえるように言いに行ったに決まっている。 だってさっき和也はそんな事を俺に言っていたのだから。

 まだ俺はここで待機してるかな。 と思いながら俺はソファで和也達の会話が終わるのを待っていた。

 まだ内緒話をしている二人を横目に再び新聞へと視線を向ける俺。 だけどあれから全く二人は俺の方へと聞きに来る事はなかった。 何だかそこは拍子抜け状態なのかもしれない。 その後も裕実や和也は特に変わった様子もなくリビングテーブルの方へと着くと、その頃には雄介の方も朝ご飯が出来たようで、

「望ー! ご飯やでー!」

 と自然に俺の事を呼んできてくれるのだ。 寧ろそういった事に関しては普通に話しかけて来てくれると言った方がいいのかもしれない。

 だから俺は軽く新聞を畳むとガラステーブルの上にそっと置き、みんながいるリビングテーブルへと向かうのだ。

 俺がリビングテーブルへと付くと、みんな揃って「いただきます」。 この島で働くようになってからは、ほぼ毎日この四人で食事を共にしている。 そうあの時を除いては……朔望達がこの島に船で向かっていて、台風がこの島に近付いているのにも関わらず船は東京から出港し、この島に着く前に転覆してしまい雄介は俺達の静止を振り切ってまで海に飛び込んで転覆してしまった船に救助に向かって次の日まで帰宅して来なかった時だけだ。 後は本当にこの四人で絶対に食事をしている。

 食事をしながら俺はフッと雄介の横顔をチラッと見つめる。

 相変わらず雄介と和也というのは食事中っていうのに会話していた。 寧ろ、食事の時はこの二人が話をしていて聞いているのは俺達なんだけどな。

「なぁなぁ、雄介……望に隠し事してんのか?」

 そんな質問を和也は急にするもんだから、俺が食べていた味噌汁を吹きそうになってしまっていた。

 しかしあまりにも和也っていうのは言葉がストレート過ぎるというのであろうか。 もう少しオブラートに包んで欲しいもんだ。

 俺の方も今の和也の質問に吹きそうになっていたのだけど、雄介の方も俺に負けない位に吹きそうになっていたようだ。 いや喉に詰まらせてしまっていたのか、胸の辺りをトントンと叩いていた。

 いや本当に雄介からしてみたら気不味い質問だったのかもしれない。 そうじゃなきゃ、焦って食べ物を喉に詰まらせるような事はしないのだから。
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