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ー至福ー45

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「ぁ……」

 と俺の方はその裕実の行動に何か声を掛けたかったんだけど、俺の口から出た声っていうのは、小さな声でもしかしたら裕実の耳にも聞こえてないような声だったのかもしれない。 だけど俺の行動っていうのは確実に瞳で裕実に何かを訴えてい他という事だろう。

「……え? どうかしました?」
「え、あー……」

 そう裕実に声を掛けられて、直ぐに視線を逸らしてしまう俺。 それも俺の悪い癖なのかもしれない。

 自分は本当に素直になれない性格だ。 裕実には大分素直になってきたつもりだったのだけど、こう雄介と喧嘩した時の自分っていうのは、いつも以上に誰にも素直になれていないっていう事なのかもしれない。

 その俺の言葉と行動に裕実の真剣な瞳が俺の事を見つめて来る。 しかも裕実にしてみては俺の二の腕を両手でしっかりと握ってまでだ。

「望さん!」

 しかも今まで裕実の口からは出た事がないようなホント真剣な声で俺の名前を呼んできて、

「どうしたんです? 今日の望さんは望さんらしくないですよ……」
「あ、あのさ……」

 俺は再び裕実から視線を逸らすと、少しずつではあったのだけど裕実に対して口を開くのだ。

「なんかな……雄介ってさぁ、なんか、俺に沢山秘密みたいなのがあるような気がするんだよなぁ? 秘密っていうのか? 隠し事っていうのか? 俺ってさ、実際問題、雄介の事なんか全然知らないっていうのかな? 雄介って何が好きで何が嫌いなのか? 食べ物だって何が好きで何が嫌いなのか? っていう簡単な事さえも知らねぇんだよ。 それが、今の俺からしてみたら引っかかってる所なんだよなぁ。 そう、前だって雄介にお姉さんが居る事だって知らなかった事だしなぁ。 なんか、雄介からしてみたら俺って信用されてないのかな? って思ったら、寂しくなってきたっていうのかな?」

 俺と裕実はベッドの端っこに座って、俺の方は今の心の中にある雄介への想いを語り始める。

「やっぱり、そういう事だったんですね。 いや、別に、自分が思っている事とは違ったのですけど。 確かに雄介さんって自分の事を語りたがりませんもんね。 僕だって雄介さんの好きな物とかって知りませんよ。 あ、いや……望さんが雄介さんの事を知らないのに僕が知ってたら怖いですけど……。 ホント、何でしょう? 雄介さんはこうも自分の事を語りたがらないのはね。 だから、僕にも望さんが不安になるのは分かりますよ」

 そう言って裕実も俺の意見に同意しているのか、俺の方を見ながら笑顔を送ってくる。

「はぁああ……だよなぁ……」

 俺はその場で思いっきりため息を吐いた後に項垂れるのだ。

 きっと今の俺の問題っていうのは、雄介が隠し事をしているっていう事だろう。 それで雄介との結婚に対して躊躇してしまっているのかもしれない。
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