上 下
192 / 881

ー鼓動ー191

しおりを挟む
「そう言われて見ればそうやんな。 でも、急にどないしたん?」
「いや……俺さぁ、この病院まともに見たの久しぶりでさ、こんなでかい所で働いてたんだな……って思ってな」
「ま、島の診療所に比べたら確かにでかいのかもしれへんわぁ」
「あ、いや……そういう意味じゃなくて。 なんていうのかな? 普通の病院よりかはでかいっていうのかな?」
「あ、ぁあ! そっちな。 ん、まぁ……そう言われてみればそうやんな。 ま、俺は患者さんとして来ておったから、そう感じへんかったけど……まぁ、救急もあるわけやし、でかいと言えばでかいのかもしれへんわなぁ」
「そうだろ?」

 そう言うともう一度春坂病院の方へと視線を移す。

「そういや……雄介って、この病院に何回も来たんだったよな?」
「へ? あ、まぁ……そうやったなぁ。 ま、その分、入院も多かったんやけど」
「そうだったな。 最初の頃は本当に沢山あったかと思うのだけど?」
「ま、なぁ。 坂本の事があったし」
「あ、ぁあ! 坂本さんの事な。 何回目だったかな? お前が坂本さんに刺されて来た時あっただろ?」

 そう言っていると頼んでいたコーヒーが運ばれて来る。

 そして砂糖とミルクをちょっと入れて俺はそれを掻き回しながら、

「あん時は……俺、本当に心配してたんだぞ……いや、本気でお前の事心配してたんだからな。 診察だってまともに出来てなかったっていうか……まぁ、昼前だったから幸いにも患者さんが来てなかったから良かったっていうのか」

 その言葉に雄介は目を丸くしていた。

「ほら、お前に告白されて……和也のせいで、まだ告白の返事をできてなかったんだけど、もう、お前の事が気になってたっていうのかな?」

 俺は恥ずかしからなのか雄介の顔をまともに見る事は出来ず、さっきからずっとコーヒーを混ぜながら言う。

「……へ? そうだったん? ってか、今だから聞いてええか? その……望はいつから俺の事好きになったん?」
「……へ?」

 まさか、こんな所でそういう事を聞いてくるとは思っていなかった俺は裏声を出しながら雄介の事を見上げる。

「俺が雄介の事を好きになった時か!?」

 そう聞かれると実際分からないと言った所であろうか。 確かにいつの頃からか雄介の事を意識するようになっていたのだから。

「そうだな……気になりだしたのは……まぁ、最初は絶対にありえないだろ? だって、お前は俺に対して女だと思っていた訳だし。 そんな奴の事好きになる訳がないと思ってたしな」

 そこまで言うと俺は今度窓の外を見つめる。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

少年達は淫らな機械の上で許しを請う

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...