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ー鼓動ー60

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 今度は雄介の方が俺のその言葉にむせそうになっていた。

 そして雄介の方は今度心配そうに顔を上げて来て、

「ちょ、今日の望……ホンマ大丈夫なんか!?」
「お前に心配される程じゃねぇよ……至って俺の方は真面目に言ってるんだからさ」

 雄介はまた「ん?」っていう表情をすると、俺の額へと手を当てて来る。

「あ……確かに熱の方は無いみたいやわぁ」
「俺の今までの言葉、疑るのか?」
「あ、いや……そういう訳っていう事じゃなくてな、今日の望があまりにも素直過ぎて……あ、いやー、スマン、ほんの少しだけだけど、疑ってもうてたわぁ。 前に熱出した時に素直になったって事あったやんか」
「あ、まぁ……あったみたいだけどな」
「でも、熱が無いって事は、ホンマのホンマに本心やって事やろ?」
「あ……」
「まぁ、そういう事やんなぁ」

 今雄介に疑われてしまった事で喧嘩しそうになったのだが、雄介の今の言葉で回避する事が出来たようにも思える。

 雄介って凄いと改めて思った瞬間だったのかもしれない。

 ……医者になって、前よりも頭の回転が良くなったって事なのか? それとも今はもう俺と喧嘩したくは無いと思ったからなのかな?

 ま、どっちにしても喧嘩を回避する事が出来た事が良かったのかもしれない。

 そして食事を終わらせる俺。

「ごちそうさまでした」

 そう真面目に言えたのも久しぶりなのかもしれない。

 いや毎日のように食事を作ってくれている雄介には感謝しているのだけど、今までの日々が忙し過ぎて忘れ掛けていた一つだったのかもしれない。

「俺の方もごちそうさまでした」

 そう手を合わせていう雄介に、

「結構、雄介って真面目なんだな」
「へ? 何がや?」
「最後にそうやって手を合わせてみる所とかさ」
「へ? 俺の方は毎日やってる事やで」

 そうさらりと言っている雄介に、

「ゴメン……そんな事、今まで全くもって気付いてなかった事だからさ」
「ま、しゃーないよ……ホンマ島での生活も含めて忙しかったんやからなぁ」

 そう言われて、俺の方は反省する。

「島に居る時っていうのは、特に……みんなと居る訳やろ? せやから、気付かないって事は気付かへんやろな?」
「え? あ、うん」
「あ、いや……そこ、ヘコむとこ違うで……逆や逆。 今、こうやってゆっくりと東京に来れて、心にも余裕が出来て来て気付けた事なんやろ? ほな、それはそれでええ事やんか」

 そう笑顔で言って来てくれる雄介に俺の方も何だか安心してきたようにも思える。
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