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ー鼓動ー56

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「ま、そうやんなぁ。 ま、それはそれでええとして、望の方は終わったんか?」
「え? あ、まぁ……まぁな」
「ほなら、後は俺に任せて、望はゆっくりしておいたらええよ」
「え? あ、ぅん」

 俺的にはまだ雄介の側に居たかったのだけど後はもう雄介に任せるしかなかったのだから、とりあえずリビングテーブルへと向かうのだ。

 しかし本当に雄介とこういう時間を過ごすのは久しぶりだった。

 でも前よりも話が出来るようじなったのは気のせいであろうか。

 ……ま、俺がそんなに恥ずかしがらなくなったからなのかな?

 一年以上前というのは春坂病院で外科医として働いてたし雄介だって小児科医として働いていた訳だし何だかんだで休みが重なったとしても、どちらかが病院に呼び出されてしまえば二人だけの時間というのはあまりなかったようにも思える。

 休みのようで休みじゃない。 要は休み中でも自宅待機と変わらない感じだったからだ。

 ……ま、やっぱり、同じ医者になれたとしても結局忙し過ぎて二人きりの時間っていうのはあまりなかったのかもな。 要は頭の中でのイメージと現実とでは違ったって事なんだろうな。

 と改めて思う。

 今だってそうだ。 本当に二人だけの時間っていうのは実際問題無いに等しい。

 島での生活は和也達も一緒な訳だし殆ど二人だけのプライベートな時間っていうのは無い。 それでも寝る前にほんのちょっとだけあるのだけど毎日のように緊張感を持っているようなもんだから、やっぱりゆっくりとした時間というのは無いように思える。

 でも今回は雄介のおかげというのか一週間だけ東京に来られるようになっただけでも時間と心に余裕が持てたという事だ。

 本当に今の時間というのは何も考えなくてもいい。 そして本当に今は二人だけの空間。

 少しだけ落ち着けるような気がする。

 とりあえず雄介と明日春坂病院に行って検査が終わって何も無ければ、それからずっと本当にゆっくりとした時間が送れるだろう。

 今の所、雄介にこれといった症状がないという所から、きっと検査しても何も出てこない可能性の方が高い。 それに当の本人もそう言っているのだしな。

 ゆっくりのんびりと考え事をしているとキッチンの方から油が跳ねる音が聞こえて来る。

 ……これも何だか懐かしい感じがする。
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