上 下
45 / 898

ー鼓動ー45

しおりを挟む
 俺達もその船へと乗り込むと出発時間までのんびりとした時間を過ごしていた。

 流石に親父達の近くに座る事は出来ず、ちょっと離れたような所に座る俺達。

 俺は窓際で雄介はその隣りに座っている。

 すると船内には汽笛の音が鳴り響き、やっと東京へと向けて船が出発する。

 それはたった一ヶ月前にも経験した事だったのだが、それでも懐かしいと感じるのは気のせいなのであろうか。

 一ヶ月前は期待と不安でしかなかったのだが、今回は久しぶりに東京に向かえる事だけあってか嬉しい気持ちでいっぱいなのかもしれない。

 船が少しずつ島から離れて行く。

 そう島が段々と小さく見えるようになってきたからだ。

 とそんな気持ちに浸っていると、

「ねぇ! 君達って、望君と雄介君なんでしょう!」

 そう言われて俺と雄介は声がした方へと振り向くと、そこには俺達の親父と年代位の女性の姿があった。

「え? あ、そうですけど?」

 俺からしてみたら本当に知らないおばさんにしか見えない。 だから首を傾げながら答えるしかなかった。 しかし何で俺の名前を知ってるのであろうか。

「なら、良かった。 自己紹介の方遅れましたけど、私は梅沢和也のお母さんって言ったら分かるかしら?」

 ……あー! そうだ! あの船の事故の時、一瞬は見た筈だったし、今回、和也はそんな事言っててずっとヘコんでたんだっけな。

「和也くんのお母さんでしたか」

 その和也のお母さんは頭を頷かせていた。

「……今回は和也とあんまり話せなかったのだけど、あの子、ちゃんと仕事出来てるのかしら?」

 流石は親という所だろう。 しかも母子家庭って和也は言っていたのだから息子の心配をするのは当たり前な事なのかもしれない。

「え? あ……大丈夫ですよ。 和也君は俺からしてみたら最高なパートナーですからね」

 そう俺は笑顔で和也のお母さんの事を見上げる。

「それなら、良かったわぁ。 あの子ったら、小さい頃からドジばっかりで、看護師になった時には、もう! ホント、毎日のようにヒヤヒヤとしてたんですからね。 ドジばっかやって、いつか医療ミスをしてしまって、新聞やニュースになるんじゃないかと思ってた位なのよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...