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「ちょ、ちょっと! 待ってて下さいね!」
と俺は慌てた感じで急いで玄関へと向かうのだ。
さっきまでチャイムの音にさえイライラしていた筈なのに、来たのが聖修だと分かった途端普通に戻ってしまっていた俺。 寧ろ来たのが聖修なのだからニコニコ顔で行ってしまっていたという事だろう。
そりゃ、ま、そこは人間なのだから自分が好きな人が訪れて来たんだからイライラなんか全くもって何処かに吹っ飛んでしまうもんだ。 その逆にニコニコ顔になるのは当たり前な事だと思う。
そして玄関に向かってドアを開けた先には本当に聖修の姿があった。
「あ……」
また声が裏返ってしまっていた俺。
昨日はほんのり酔っていたから記憶とかって曖昧だったのだけど、今はちゃんと完全に酔いが覚めている俺だ。 目もパッチリとしてるし頭もちゃんとシャキーンとしているのだから。
目の前に起きている現実に目をパチクリとさせていると、
「昨日、話していた通り、挨拶しに来ました。 昨日、隣りに引っ越してきた奥井聖修です」
そう聖修は俺に挨拶して来てくれる。
確かに聖修がアイドルしている時というのは俺からしてみたら雲の上の人っていう感じだったのだけど、今の聖修というのは完全にプライベートな時間なのだから一般人と変わらないという感じだ。 だから挨拶しに来てくれたという感じなのであろう。
しかし目の前に本物の聖修がいるっていう事に、俺はまだ本当にこれは現実なのか!? って思う程だ。
「あ、はい……。 ど、どうも……」
緊張のあまりどもってしまうのは仕方がない。
そう言って聖修は俺に引っ越し蕎麦を渡してくる。
「あ、ありがとうございます……」
しかし俺はちゃんと対応出来ているのであろうか。 緊張のあまりそこのところの記憶というのか色々と本当に曖昧だ。
あまりにも緊張し過ぎて手汗も掻いてきてしまってる位なのだから。
手渡された引っ越し蕎麦。
あの聖修が俺にお土産を持って来るなんて思ってもみなかったことだ。
しかも俺は聖修のファンで、いつもなら俺の方が聖修にお土産とか渡している立場なのに、今日はその逆で……ホント、こういう事って嬉しすぎる事で、ご近所中いやSNSとかで自慢したい所だ。
今の時代、SNSとかネットブログとかっていう時代だから色々と発信出来てしまう時代でもある。 だから自慢したいのだけどーー! やっぱりそんな事、俺には出来ない。 昨日、聖修が言っていた言葉には深い意味が込められているからだ。 そう『聖修がこのマンションに住んでるのは誰にも内緒』という言葉だ。 俺が色んな人に話してしまうと、このマンションに聖修が住んでいるのがバレてしまう可能性がある。 そうなった場合、ファンが殺到してしまって聖修にも迷惑が掛かるし周りの住人にも迷惑が掛かる事になるだろう。
いくらアイドルでも人間なのだから、家にいる時位はゆっくりしたいもんだ。
最終的にそんな答えが出た俺は、絶対に隣りに聖修が引っ越して来た事を誰にも話さない事を心に誓うのだ。
「じゃ、今後ともよろしくお願いしますね……」
そう笑顔で言う聖修はアイドルの時とは違う笑顔のような気がする。 きっとプライベートでの笑顔だからライブとかの聖修とは違う笑顔なのであろう。
これだけは本当に俺だけしか見れない笑顔だ。 俺だけのものであって宝物だ。
「あーー! ちょっと……」
もっともっと聖修と話したいことがあったのだけど、まだ出会ったというのか、ただ挨拶回りに来た聖修なのだから止めることは出来ずにそこで言葉を止める俺。
その俺の言葉で聖修は一瞬、首を傾げてしまっていたのだけど、俺はとりあえず作り笑顔をし、
「あ、いや……な、なんでもありません! あ、ありがとうございました!」
とそこでも俺は何故か聖修に向かい頭を下げてしまっていた。
「いえいえ……」
そう言って聖修は部屋へと戻って行ってしまうのだ。
ドアを締めた後に溜め息を漏らす俺。
自己嫌悪ってやつかな?
確かにもっと聖修とは話をしたい……だけど何も言葉が浮かんで来なかった。
そう聖修を目の前にしたら緊張し過ぎて言葉になんかならないのが現実だったというのが正しいのかもしれない。
「ま、でも……一般人と有名人が話をする。 ってこと自体無理があるよな……」
そう俺は1人部屋の中で独り言を漏らすとやっと部屋の中に入るのだった。
と俺は慌てた感じで急いで玄関へと向かうのだ。
さっきまでチャイムの音にさえイライラしていた筈なのに、来たのが聖修だと分かった途端普通に戻ってしまっていた俺。 寧ろ来たのが聖修なのだからニコニコ顔で行ってしまっていたという事だろう。
そりゃ、ま、そこは人間なのだから自分が好きな人が訪れて来たんだからイライラなんか全くもって何処かに吹っ飛んでしまうもんだ。 その逆にニコニコ顔になるのは当たり前な事だと思う。
そして玄関に向かってドアを開けた先には本当に聖修の姿があった。
「あ……」
また声が裏返ってしまっていた俺。
昨日はほんのり酔っていたから記憶とかって曖昧だったのだけど、今はちゃんと完全に酔いが覚めている俺だ。 目もパッチリとしてるし頭もちゃんとシャキーンとしているのだから。
目の前に起きている現実に目をパチクリとさせていると、
「昨日、話していた通り、挨拶しに来ました。 昨日、隣りに引っ越してきた奥井聖修です」
そう聖修は俺に挨拶して来てくれる。
確かに聖修がアイドルしている時というのは俺からしてみたら雲の上の人っていう感じだったのだけど、今の聖修というのは完全にプライベートな時間なのだから一般人と変わらないという感じだ。 だから挨拶しに来てくれたという感じなのであろう。
しかし目の前に本物の聖修がいるっていう事に、俺はまだ本当にこれは現実なのか!? って思う程だ。
「あ、はい……。 ど、どうも……」
緊張のあまりどもってしまうのは仕方がない。
そう言って聖修は俺に引っ越し蕎麦を渡してくる。
「あ、ありがとうございます……」
しかし俺はちゃんと対応出来ているのであろうか。 緊張のあまりそこのところの記憶というのか色々と本当に曖昧だ。
あまりにも緊張し過ぎて手汗も掻いてきてしまってる位なのだから。
手渡された引っ越し蕎麦。
あの聖修が俺にお土産を持って来るなんて思ってもみなかったことだ。
しかも俺は聖修のファンで、いつもなら俺の方が聖修にお土産とか渡している立場なのに、今日はその逆で……ホント、こういう事って嬉しすぎる事で、ご近所中いやSNSとかで自慢したい所だ。
今の時代、SNSとかネットブログとかっていう時代だから色々と発信出来てしまう時代でもある。 だから自慢したいのだけどーー! やっぱりそんな事、俺には出来ない。 昨日、聖修が言っていた言葉には深い意味が込められているからだ。 そう『聖修がこのマンションに住んでるのは誰にも内緒』という言葉だ。 俺が色んな人に話してしまうと、このマンションに聖修が住んでいるのがバレてしまう可能性がある。 そうなった場合、ファンが殺到してしまって聖修にも迷惑が掛かるし周りの住人にも迷惑が掛かる事になるだろう。
いくらアイドルでも人間なのだから、家にいる時位はゆっくりしたいもんだ。
最終的にそんな答えが出た俺は、絶対に隣りに聖修が引っ越して来た事を誰にも話さない事を心に誓うのだ。
「じゃ、今後ともよろしくお願いしますね……」
そう笑顔で言う聖修はアイドルの時とは違う笑顔のような気がする。 きっとプライベートでの笑顔だからライブとかの聖修とは違う笑顔なのであろう。
これだけは本当に俺だけしか見れない笑顔だ。 俺だけのものであって宝物だ。
「あーー! ちょっと……」
もっともっと聖修と話したいことがあったのだけど、まだ出会ったというのか、ただ挨拶回りに来た聖修なのだから止めることは出来ずにそこで言葉を止める俺。
その俺の言葉で聖修は一瞬、首を傾げてしまっていたのだけど、俺はとりあえず作り笑顔をし、
「あ、いや……な、なんでもありません! あ、ありがとうございました!」
とそこでも俺は何故か聖修に向かい頭を下げてしまっていた。
「いえいえ……」
そう言って聖修は部屋へと戻って行ってしまうのだ。
ドアを締めた後に溜め息を漏らす俺。
自己嫌悪ってやつかな?
確かにもっと聖修とは話をしたい……だけど何も言葉が浮かんで来なかった。
そう聖修を目の前にしたら緊張し過ぎて言葉になんかならないのが現実だったというのが正しいのかもしれない。
「ま、でも……一般人と有名人が話をする。 ってこと自体無理があるよな……」
そう俺は1人部屋の中で独り言を漏らすとやっと部屋の中に入るのだった。
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