【1/完結】ノンケだった俺が男と初体験〜ツンデレ君には甘いハチミツを〜

【番外編】夏祭り3

　そう望は前にも友達とお祭りに来ていて、今とまったく同じ状況になってしまい、結局、最後まで合流出来ずに望は一人で帰宅したという出来事があった。　だからそれ以来、望はお祭りが嫌いになりトラウマになっている。

　望は仕方無しに、一人人混みから遠ざけ夜空を見上げていると望の携帯の音が鳴り響くのだ。

　この携帯の着信音は望の恋人である雄介にしか設定していない曲。

　望は慌てて携帯を取ると電話の向こうから聞こえて来た声は、望が思っていた期待通りの人物で不安そうな顔から一変し安心したような顔をする望。

『望……大丈夫か?』

　昔と違うのは携帯があるということだ。

　携帯はどんなに遠くにいても話せて連絡が取る事が出来る。

『ゴメンな……望と離れてまって……。　望、今、何処に居るん?』
「えーと……」

　望は再び雄介と出会う為に周りを見渡し何か目印になるような物を探すのだ。

「今は……たこ焼き屋の近くだ……」
「そうか……ほなら、今から、そっちに向かうから……そこから動かんと待っててな……」
「ああ……」

　望は雄介の優しい声に安心すると、今言ったたこ焼き屋の前で雄介のことを待つことにする。

　すると雄介は五分も経たないうちに、この人混みを掻き分け望の元へと向かうのだ。

　そして雄介は望の前へと辿り着くと、

「良かったわぁ、無事で……。　ほな、行こうか……」

　雄介は望のことを見つけると、雄介の方も安心したような顔になったようで、今度は望と離れないようにと望の手を取る。

「ゆ、雄介……。　流石にこんな人の中で、これは、恥ずかしいから……」
「分かっとるよ。　せやけど、もう、望と離れるのは嫌やなんやって……。　それに、この人混みやったら、人に見られる心配は無いと思うねんけどなぁ」

　その雄介の言葉に望は微笑むと、今度はお互い離れないように、しっかりと手を握ったようだ。

　どうやら今回のことで望が苦手だった夏祭りは克服出来そうな気がする。

　そう昔と違うのは携帯が普及したことと、恋人なら必ず迎えに来てくれるということであろう。

　来年も再来年も二人は素敵な夏祭りを楽しむだろう。

【END】