【1/完結】ノンケだった俺が男と初体験〜ツンデレ君には甘いハチミツを〜

【番外編】一年で一回君の記念日1

　今日は雄介の誕生日だ。

「なぁ、望！　今日、雄介の誕生日なんだってな……」

　そう望に声を掛けて来たのは病院で望と一緒に働いている和也だ。

「あ、ああ……まぁな……」

　その和也の言葉に望は耳をピクリと動かし、和也の見えない部分で顔を赤くし顔を俯ける。

「へぇ、望にしては珍しいじゃん！　人の誕生日を覚えてるなんてさぁ」
「べ、別に俺が覚えていた訳じゃないからな……ただ、アイツがな、毎日のようにメールしてくっから、覚えていた訳で……」

　そう言い訳をする望だが、もう望の方は動揺中だ。

「そうなんだな」

　そう言う和也は、そう意味ありげに言うのだった。

　そう今日は雄介の誕生日で雄介にメールで言われなくとも望はきちんと覚えていた。

　今日はこの仕事が終わってから待ち合わせをしている。　そう一応、望は雄介の為に数日前に誕生日プレゼントを買って鞄の中にしっかりしまってあるのだ。

　そして今は和也と二人で今日一日の最後の仕事である自分達の部屋の掃除をしている。

「なら、早く帰りたいんじゃねぇのか?」
「別にそんなんじゃねぇって言ってんだろ……」

　今日はいやに和也が望に絡んで来ているようにも思える。　そう望は溜め息を吐くと、これからの和也が何か言ってきそうな雰囲気があったのか、それさえも無視を決め込んで掃除を続けるのだ。

　そして無意識だったのであろうか、望は早めに掃除を終わらせたようだ。　こういつもより早い行動をしているのを和也に悟られないように、今日は先に部屋を出て行く。

　望は駐車場へと向かうと雄介を迎えに行く為に消防署まで走らせる。

　消防署まで来ると、こういつもの明るい笑顔が望の瞳に飛び込んで来たようだ。

　望は雄介を車へと乗せたのだが、何故だか望は車をなかなか発進させる事をしない。

　不思議に思った雄介は、

「どうしたん？　今日はデートに行くんやろ?」
「あ、ああ……まぁな……」

　確かに毎日のように最近は雄介と会っていたのだが、今日は二人にとっては特別な日で望の鼓動はいつも以上に高鳴っているようだ。

　恋人にどうやって誕生日プレゼントを渡したらいいか分からない望。　望は後部座席に置いてあるA4サイズ位のいつも仕事に持ち歩いている鞄の中が気になって仕方がないようで、時折瞳だけを後部座席の方へと向ける。

　そうその中には今日、雄介に渡すプレゼントが入っているからだ。

「……雄介」

　望はプレゼントのことと誕生日おめでとうの言葉が上手く言えず、雄介の名前を言うだけで言葉を詰まらせてしまう。