上 下
1,681 / 2,140

ー決心ー86

しおりを挟む
「な、和也……この事故があったの何時だか分かるか?」
「いやぁ? 情報がねぇから分からねぇよ」
「でもさぁ、俺等が帰ろうとしてた時間だよな?」
「確か、そうだな」

 望と和也は一段落した所で話をしている。

 既に時刻は夜の九時を過ぎていた。

「あ、いや……気のせいならいいんだけど、さっきっから、胸騒ぎがして仕方がないんだよなぁ。 今までにこんなことはなかったんだけど……」
「胸騒ぎ? まさか、病気とかか?」

 そう和也はふざけて言ったのだが、どうやら望は本気らしく、

「あのなぁ、こんな時にふざけている場合じゃねぇだろうが……!」

 と望は和也に突っ込みを入れるのだが、何かを思い出したのか顔を青くさせる望。

「もしかして!? 雄介は? 雄介がその電車に乗ってて事故に巻き込まれたとか!?」
「え!? そうなのか!? と、とりあえず……今はまだ患者さんが来る気配がないから、雄介に電話してみろよ! それで、繋がれば、雄介が無事かどうか位は分かるだろ?」
「あ、ああ! そうだな!」

 望は一旦、自分達の部屋へと向かうと、携帯をスーツの内ポケットから取り出し雄介へと電話を掛ける。

 だが何回かのコールの後に留守番電話サービスへと繋がってしまうのだ。

 その後、望は何回も雄介に電話をしたのだが、雄介が電話に出る気配はなかった。



 と、その頃、雄介は望の思った通りというのであろうか。 雄介は『電車の追突脱線事故』に巻き込まれていたのだ。

 この事故が起きたのは夕方の帰宅ラッシュが始まった頃。 乗客を沢山乗せた上り列車と下り列車の衝突事故であった。 先頭車両は二台とも先頭部分が潰れ、両車両共、二両目後も脱線していた。

 事故から数時間も経っているのにも関わらず、救急車のサイレンは鳴り響きレスキュー隊も対応に追われている。

 街の中にある線路は電車だけではなく脱線したことで周辺の住宅も被害を受けている為、この事故により被害者は相当いるようだ。

 そう雄介はこの電車に乗っていた。 先頭車両ではないのだが、雄介はこの事故に巻き込まれていたのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ
恋愛
「──それをあなたが言うの?」

家の中で空気扱いされて、メンタルボロボロな男の子

こじらせた処女
BL
学歴主義の家庭で育った周音(あまね)は、両親の期待に応えられず、受験に失敗してしまう。試験そのものがトラウマになってしまった周音の成績は右肩下がりに落ちていき、いつしか両親は彼を居ないものとして扱う様になる。  そんな彼とは裏腹に、弟の亜季は優秀で、両親はますます周音への態度が冷たくなっていき、彼は家に居るのが辛くなり、毎週末、いとこの慶の家にご飯を食べに行く様になる。  慶の家に行くことがストレスの捌け口になっていた周音であるが、どんどん精神的に参ってしまい、夜尿をしてしまうほどに追い詰められてしまう。ストレス発散のために慶の財布からお金を盗むようになるが、それもバレてしまい…?

キスから始める恋の話

紫紺(紗子)
BL
「退屈だし、キスが下手」 ある日、僕は付き合い始めたばかりの彼女にフラれてしまった。 「仕方ないなあ。俺が教えてやるよ」 泣きついた先は大学時代の先輩。ネクタイごと胸ぐらをつかまれた僕は、長くて深いキスを食らってしまう。 その日から、先輩との微妙な距離と力関係が始まった……。

竜王妃は家出中につき

ゴルゴンゾーラ安井
BL
竜人の国、アルディオンの王ジークハルトの后リディエールは、か弱い人族として生まれながら王の唯一の番として150年竜王妃としての努めを果たしてきた。 2人の息子も王子として立派に育てたし、娘も3人嫁がせた。 これからは夫婦水入らずの生活も視野に隠居を考えていたリディエールだったが、ジークハルトに浮気疑惑が持ち上がる。 帰れる実家は既にない。 ならば、選択肢は一つ。 家出させていただきます! 元冒険者のリディが王宮を飛び出して好き勝手大暴れします。 本編完結しました。

理想の妻とやらと結婚できるといいですね。

ふまさ
恋愛
※以前短編で投稿したものを、長編に書き直したものです。  それは、突然のことだった。少なくともエミリアには、そう思えた。 「手、随分と荒れてるね。ちゃんとケアしてる?」  ある夕食の日。夫のアンガスが、エミリアの手をじっと見ていたかと思うと、そんなことを口にした。心配そうな声音ではなく、不快そうに眉を歪めていたので、エミリアは数秒、固まってしまった。 「えと……そう、ね。家事は水仕事も多いし、どうしたって荒れてしまうから。気をつけないといけないわね」 「なんだいそれ、言い訳? 女としての自覚、少し足りないんじゃない?」  エミリアは目を見張った。こんな嫌味なことを面と向かってアンガスに言われたのははじめてだったから。  どうしたらいいのかわからず、ただ哀しくて、エミリアは、ごめんなさいと謝ることしかできなかった。  それがいけなかったのか。アンガスの嫌味や小言は、日を追うごとに増していった。 「化粧してるの? いくらここが家だからって、ぼくがいること忘れてない?」 「お弁当、手抜きすぎじゃない? あまりに貧相で、みんなの前で食べられなかったよ」 「髪も肌も艶がないし、きみ、いくつ? まだ二十歳前だよね?」  などなど。  あまりに哀しく、腹が立ったので「わたしなりに頑張っているのに、どうしてそんな酷いこと言うの?」と、反論したエミリアに、アンガスは。 「ぼくを愛しているなら、もっと頑張れるはずだろ?」  と、呆れたように言い捨てた。

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

弟いわく、ここは乙女ゲームの世界らしいです

BL
――‥ 昔、あるとき弟が言った。此処はある乙女ゲームの世界の中だ、と。我が侯爵家 ハワードは今の代で終わりを迎え、父・母の散財により没落貴族に堕ちる、と… 。そして、これまでの悪事が晒され、父・母と共に令息である僕自身も母の息の掛かった婚約者の悪役令嬢と共に公開処刑にて断罪される… と。あの日、珍しく滑舌に喋り出した弟は予言めいた言葉を口にした――‥ 。

処理中です...