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ー過去ー144

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「そうなんだな。 しっかし、この写真はどういう事なんだろうな? 親父にしては珍しく写真に写ってるしさぁ」
「何となくやけど思い出して来たで……。 ほら、俺等男の子同士やろ? せやから、親父達が休みの日に連れて行ってくれたんやと思うわぁ。 ほんで、俺の方が一応、お兄ちゃんやから、望の事引っ張って歩いていた気がするしな。 それも親父に頼まれてな……」

 望は雄介のその話にクスリとすると、

「俺達って初めて会ったって訳じゃあなかったんだな。 俺の方はあまりにも小さくて覚えてなかったんだけどよ」
「俺やって、写真見るまでは思い出されなかった事やしな。 それに、そないにしょっちゅう望と会ってた訳やなかったし……その頃はある意味、最初で最後みたいな感じやったろうしな」
「まさか……お前、こんな小さい頃から、俺の事好きだったって事はねぇだろうな?」

 そこは流石に茶化すように聞く望。

「流石に、そないな小さい頃から、男の子に興味なんかなかったわぁ。 その頃っていうのはやっぱ自分の方がお兄ちゃんだからっていう感じやったんやろな」
「まぁ、今もお兄ちゃんだけどな」
「それって、どういう意味やねん」
「そのままだよ……そのまま……俺より年上っていうのは変わりない事だろ?」
「せやけど、少しの間は同じ年やんか」
「まぁな……」

 望は謎が解けたアルバムを閉じるとベッドの横にある小さな机の上に眼鏡と共にその今見ていたアルバムを置くのだ。

「ほら、謎も解けたし、いい加減……お前、寝ろよな」
「やっぱ、寝なきゃやらしてくれへん?」

 そうストレートに聞いてくる雄介に望は真っ赤な顔をしたのだが、次の瞬間には真面目な表情へと変え、

「ダメに決まってんだろ。 さっきから言ってけど、たった一時間だけでも寝ろよな。 正確には四十五分だけでもいいんだからさ。 それだけでも寝ればちょっとは違うって聞くしよ」
「分かった……。 ほな、悪いけど寝かせてもらうわぁ」

 雄介はそう言うと望の横になって目蓋を閉じる。

 すると今まで二人は話をしていたせいか騒がしかった地下室が急に静かな空間へと変わってしまうのだ。 外からも音も何も聞こえて来なくなってしまった空間。

 望はそんな空間で一人天井を見上げる。

 さっきの話からすると望と雄介というのは小さい頃に出会っていたという事だ。 望には全くもって記憶になかった事だったのだが、雄介が覚えていた。

 まぁ、そこは仕方ない所なのかもしれない。 あのアルバムには『望 三歳』と書いてあったのだから。
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