【1/完結】ノンケだった俺が男と初体験〜ツンデレ君には甘いハチミツを〜

ー崩落ー113

「ちょー！　ちょー、何考えてんねん！　たかがキスした位で俺はお前のもんにはならへんからな！」
「そ……でも、普通は男同士じゃあキスはしないよねー？」

　その雄介と歩夢の会話を聞いていた望はそんな二人の様子に体をビクリとさせる。

「悪ぃ……俺、もういいや……」

　望は和也にそう告げると望は切なそうな表情をし歩夢の病室から去って行ってしまったようだ。

「……へ？　あ、ちょ、ちょっと待てよ……！」

　そう和也は望の事を追いかけようとしたのだが、今の望の心情を考えると一人にさせておいた方がいいかと思い和也はとりあえず最後まで二人の会話を聞く事にし再びドアへと耳を当てる。

「今のは、お前が勝手に俺にしただけで、俺がお前の方に振り向いたって事にはならへんやろ！」
「そんなに強く言わなくてもいいじゃない？　……ってさ、雄兄さん……もしかして、本当は僕の事好きなんじゃないんじゃないの？　それに、キスだけで相当やがってるしねー。　もしかして、雄兄さんって優しいから、僕とそういう話誤魔化す為にどちらも傷付かない方法を取っただけなんじゃないの？」
「はぁ！？　なんやねんそれ？」

　雄介は歩夢が言ってる意味が分からないのか素でそう返す。

「……へ？　雄兄さんまさかそこまで本当に考えて無かったって事！？」
「そないな事、全く俺の方は考えてへんで……」
「そうか……雄兄さんって、何も考えてないんだー」
「……って、考えるってなんやねん。　俺は望の事しか考えてへんしな」

　　歩夢はクスリとすると、

「兄さんが雄兄さんの事好きな理由が分かった気がする。　ま、そこは僕もなんだけどさ。　ホント、雄兄さんって何も考えてないんだねー。　普通さ、何か考えて話するもんじゃないんじゃないの？　ま、梅沢さんはすぐに考えて言葉にしてるみたいだけどね。　それに、相手の心とか読んでその先の事も考えてるみたいだしさ」

　今、歩夢が言っている事は雄介からしてみたら意味が分かってないようだ。

「……って、ホンマ何言うてるん？　ま、ええわぁ……そういう事やからな」

　雄介はそれだけを歩夢に伝えると歩夢の病室を出て行く。

　すると歩夢の病室前で和也の姿を見掛ける雄介。

「……って、何でここに和也が居るん！？」
「よっ！」

　そう和也は雄介に向かい笑顔を見せる。

「とりあえずさぁ、雄介、俺等の部屋の方に行かないか？」
「あ、お、おう……」

　雄介はそう和也に言われて望と和也の部屋へと向かうのだ。