1,218 / 2,140
ー崩落ー98
しおりを挟む
「な、何がだよ……」
その二人の会話に対して颯斗の方はクスクスとしている。 その証拠に頭を俯けて肩を震わせてしまっているのだから。
それを見た望は、
「おい! 何で、お前まで笑ってるんだよー!」
「いやね……吉良先生の弟さんの方が言葉巧みだなぁーって思ってね」
確かに颯斗の言う通り歩夢の方は言葉巧みなのは分かっているのだが、そこは兄として認めたくない所なのかもしれない。
「吉良先生……そろそろ観念した方がいいんじゃないんですか? 弟さんに言葉で負けているようじゃあ我々には勝ち目はないんですからね。 それに、吉良先生にとって一番頼りがある梅沢さんもこの場には居ませんですしね」
「俺がそんな恥ずかしい事、死んでも言う訳がねぇだろ? ただ単に俺が口を割らなきゃいいだけの話なんだからな……誰が観念するか……お前等に方が馬鹿か?」
そう勝ち誇ったかのように言うと息を吐く。
「じゃあ、さっきの僕との交換条件は?」
「それは、お前が勝手に決めただけであって、俺の方はそれに同意はしてねぇからな……だから、契約にはなってねぇ訳だし」
「なんだよそれー! それって、僕の喋り損じゃん!」
歩夢は頰を膨らませながらため息を吐く。
「そう思うならそう思ってろよ。 まだまだ俺はお前に負ける訳にはいかないんだからな」
そんな事を言ってると、みんなの所にお菓子を配っていた和也と裕実が戻って来る。
「後は僕達の分ですよ」
そこにはスナック菓子が二袋残っていた。
「とりあえず、これで数日間保たせなきゃならないんだよな?」
「そういう事になりますね」
そう裕実は答えると和也と一緒にその場に腰を下ろすのだ。
「あー! 梅沢さん! いい所に来た!」
そう歩夢は笑顔で言うと今度は和也の隣に座り、
「ねぇ、梅沢さん……兄さんが梅沢さんと兄さんの事話してくれなかったからさぁ、梅沢さんから聞かせてくれなーい?」
その歩夢の言葉に和也は驚いたような表情をし、
「え? 望……まだ、コイツ等に話してなかったのか?」
そう和也は望に振るのだが、
「ああ、まぁな。 ただ単に和也と俺が話しなきゃいいんだって言ったら、黙ったからな……だから、俺等が言わなきゃいいだけの話だ」
その望の言葉に和也も自信を持ったのか和也の方も、
「んじゃあ、俺の方も話さない……。 つーか、過去の人の心の傷をえぐるような事はしないでくれ。 まぁ、それがあったから、俺は前向きになれたっていうのはあるんだけどな。 それと、今は望と一緒にいられるだけで幸せだし」
和也はひと息吐くと歩夢に向かい、
「お前もさぁ、他人のばっかり欲しがってねぇで……本当に幸せと想える人と好きになった方がいいんじゃねぇのか? そしたら、自分にもちゃんとした幸せが訪れると思うしな」
和也はそこまでいうと笑顔で裕実の視線に視線を合わせる。
「そうですよー。 僕は和也と今一緒にいられて凄く幸せですからね」
裕実の方も笑顔で和也の視線に合わせると幸せそうに和也の手を取る。
「そういう事だ……」
望は一瞬、裕実の行動を見ていたのだが直ぐに視線を離し、さり気なく携帯のテレビの方に視線を移す。
そこには未だに大型機械を操りトンネルの前にある土砂を掘り出している救助隊の姿があった。
そんな姿に望は急に切なそうな表情を浮かべる。
テレビの向こう側には恋人がいるのに会えそうで会えない。
このテレビの向こう側に恋人が居るのに全く手の届かない場所に未だにいる恋人。
たった一言だけでもいい不器用な自分だけどテレビの向こう側に恋人に伝えたい。
『俺は今この中に居るから、早く、助けてくれないか?』
そう伝える事が出来れば、もしかしたらもっと早く助けに来てくれるのかもしれないのだから。
……せめて、声だけでも向こう側に届いてくれればいいのに……。
「やっぱり、まだだよな?」
望がそう一人でテレビを見ていると和也は望の背中から身を乗り出し望が持っている携帯テレビを覗き込む。
「まだ……だよな。 多分、急いでいるんだろうけど……土砂がネックなんだろうな」
「しかし、今の時代は便利だよな。 携帯にテレビが付いていて外の情報が分かるんだからさ」
和也がそう最後まで言葉を言わないうちに報道のアナウンサーが行方不明の名前を一人ずつ上げて行っている。
そう言えばさっきから色んな所で携帯が鳴っていた。
テレビでのニュースを見て身内の誰かが連絡してきているのであろう。
だが和也や裕実颯斗には身寄りが近くにいないのか、そう言った電話はなく今までそんな事に気付かなかった事なのかもしれない。
その二人の会話に対して颯斗の方はクスクスとしている。 その証拠に頭を俯けて肩を震わせてしまっているのだから。
それを見た望は、
「おい! 何で、お前まで笑ってるんだよー!」
「いやね……吉良先生の弟さんの方が言葉巧みだなぁーって思ってね」
確かに颯斗の言う通り歩夢の方は言葉巧みなのは分かっているのだが、そこは兄として認めたくない所なのかもしれない。
「吉良先生……そろそろ観念した方がいいんじゃないんですか? 弟さんに言葉で負けているようじゃあ我々には勝ち目はないんですからね。 それに、吉良先生にとって一番頼りがある梅沢さんもこの場には居ませんですしね」
「俺がそんな恥ずかしい事、死んでも言う訳がねぇだろ? ただ単に俺が口を割らなきゃいいだけの話なんだからな……誰が観念するか……お前等に方が馬鹿か?」
そう勝ち誇ったかのように言うと息を吐く。
「じゃあ、さっきの僕との交換条件は?」
「それは、お前が勝手に決めただけであって、俺の方はそれに同意はしてねぇからな……だから、契約にはなってねぇ訳だし」
「なんだよそれー! それって、僕の喋り損じゃん!」
歩夢は頰を膨らませながらため息を吐く。
「そう思うならそう思ってろよ。 まだまだ俺はお前に負ける訳にはいかないんだからな」
そんな事を言ってると、みんなの所にお菓子を配っていた和也と裕実が戻って来る。
「後は僕達の分ですよ」
そこにはスナック菓子が二袋残っていた。
「とりあえず、これで数日間保たせなきゃならないんだよな?」
「そういう事になりますね」
そう裕実は答えると和也と一緒にその場に腰を下ろすのだ。
「あー! 梅沢さん! いい所に来た!」
そう歩夢は笑顔で言うと今度は和也の隣に座り、
「ねぇ、梅沢さん……兄さんが梅沢さんと兄さんの事話してくれなかったからさぁ、梅沢さんから聞かせてくれなーい?」
その歩夢の言葉に和也は驚いたような表情をし、
「え? 望……まだ、コイツ等に話してなかったのか?」
そう和也は望に振るのだが、
「ああ、まぁな。 ただ単に和也と俺が話しなきゃいいんだって言ったら、黙ったからな……だから、俺等が言わなきゃいいだけの話だ」
その望の言葉に和也も自信を持ったのか和也の方も、
「んじゃあ、俺の方も話さない……。 つーか、過去の人の心の傷をえぐるような事はしないでくれ。 まぁ、それがあったから、俺は前向きになれたっていうのはあるんだけどな。 それと、今は望と一緒にいられるだけで幸せだし」
和也はひと息吐くと歩夢に向かい、
「お前もさぁ、他人のばっかり欲しがってねぇで……本当に幸せと想える人と好きになった方がいいんじゃねぇのか? そしたら、自分にもちゃんとした幸せが訪れると思うしな」
和也はそこまでいうと笑顔で裕実の視線に視線を合わせる。
「そうですよー。 僕は和也と今一緒にいられて凄く幸せですからね」
裕実の方も笑顔で和也の視線に合わせると幸せそうに和也の手を取る。
「そういう事だ……」
望は一瞬、裕実の行動を見ていたのだが直ぐに視線を離し、さり気なく携帯のテレビの方に視線を移す。
そこには未だに大型機械を操りトンネルの前にある土砂を掘り出している救助隊の姿があった。
そんな姿に望は急に切なそうな表情を浮かべる。
テレビの向こう側には恋人がいるのに会えそうで会えない。
このテレビの向こう側に恋人が居るのに全く手の届かない場所に未だにいる恋人。
たった一言だけでもいい不器用な自分だけどテレビの向こう側に恋人に伝えたい。
『俺は今この中に居るから、早く、助けてくれないか?』
そう伝える事が出来れば、もしかしたらもっと早く助けに来てくれるのかもしれないのだから。
……せめて、声だけでも向こう側に届いてくれればいいのに……。
「やっぱり、まだだよな?」
望がそう一人でテレビを見ていると和也は望の背中から身を乗り出し望が持っている携帯テレビを覗き込む。
「まだ……だよな。 多分、急いでいるんだろうけど……土砂がネックなんだろうな」
「しかし、今の時代は便利だよな。 携帯にテレビが付いていて外の情報が分かるんだからさ」
和也がそう最後まで言葉を言わないうちに報道のアナウンサーが行方不明の名前を一人ずつ上げて行っている。
そう言えばさっきから色んな所で携帯が鳴っていた。
テレビでのニュースを見て身内の誰かが連絡してきているのであろう。
だが和也や裕実颯斗には身寄りが近くにいないのか、そう言った電話はなく今までそんな事に気付かなかった事なのかもしれない。
0
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
淫紋付けたら逆襲!!巨根絶倫種付けでメス奴隷に堕とされる悪魔ちゃん♂
朝井染両
BL
お久しぶりです!
ご飯を二日食べずに寝ていたら、身体が生きようとしてエロ小説が書き終わりました。人間って不思議ですね。
こういう間抜けな受けが好きなんだと思います。可愛いね~ばかだね~可愛いね~と大切にしてあげたいですね。
合意のようで合意ではないのでお気をつけ下さい。幸せラブラブエンドなのでご安心下さい。
ご飯食べます。
出産は一番の快楽
及川雨音
BL
出産するのが快感の出産フェチな両性具有総受け話。
とにかく出産が好きすぎて出産出産言いまくってます。出産がゲシュタルト崩壊気味。
【注意事項】
*受けは出産したいだけなので、相手や産まれた子どもに興味はないです。
*寝取られ(NTR)属性持ち攻め有りの複数ヤンデレ攻め
*倫理観・道徳観・貞操観が皆無、不謹慎注意
*軽く出産シーン有り
*ボテ腹、母乳、アクメ、授乳、女性器、おっぱい描写有り
続編)
*近親相姦・母子相姦要素有り
*奇形発言注意
*カニバリズム発言有り
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
クソザコ乳首くんの出張アクメ
掌
BL
おさわりOK♡の家事代行サービスで働くようになった、ベロキス大好きむっつりヤンキー系ツン男子のクソザコ乳首くんが、出張先のどすけべおぢさんの家で乳首穴開き体操着でセクハラ責めされ、とことんクソザコアクメさせられる話。他腋嗅ぎ、マイクロビキニなど。フィクションとしてライトにお楽しみください。
ネタの一部はお友達からご提供いただきました。ありがとうございました!
pixiv/ムーンライトノベルズにも同作品を投稿しています。
なにかありましたら(web拍手)
http://bit.ly/38kXFb0
Twitter垢・拍手返信はこちらから
https://twitter.com/show1write
ある宅配便のお兄さんの話
てんつぶ
BL
宅配便のお兄さん(モブ)×淫乱平凡DKのNTR。
ひたすらえっちなことだけしているお話です。
諸々タグ御確認の上、お好きな方どうぞ~。
※こちらを原作としたシチュエーション&BLドラマボイスを公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる