【1/完結】ノンケだった俺が男と初体験〜ツンデレ君には甘いハチミツを〜

ー崩落ー78

   今日の二人は本当に下らない事で花を咲かせ久しぶりに二人だけの時間を過ごすのだ。

　だが、こんな幸せな時が過ごせるのも後数時間だけなのかもしれない。

　明日からは望も仕事に復帰する。　そして雄介の方も明日は仕事だからだ。

　再びお互いにすれ違いな日々を過ごす事になるだろう。



　それからあの日、望が雄介に告げた旅行の日がやってくる。

　いつもなら望は雄介とほぼ同時刻に起きるのだが今日は雄介よりも先に起きて出掛ける準備を始めたようだ。　そして雄介の方はその物音で目が覚める。

　昨日は夜遅くまで仕事をしていた望。　昨日は帰宅してからは雄介とは長い時間一緒にいられなかったが今日は雄介も早く起きて来た事でもう少しの間一緒にいる事が出来る。

「もう、行く時間なんか？」
「まぁな、バスの出発予定時刻が六時だからな」

　そう言われて雄介がフッと辺りを見渡すと、まだ外は薄明るくなって来た感じだ。

　冬の朝日が出る時刻というのは朝の七時位で今の時刻では、まだその明かりさえも部屋内には入ってきていない。

「お前の方は後三時間位寝れるんだろ？　それまでゆっくりしてればいいんじゃねぇのか？」
「せやけど、後一時間位しか望と居られんのやったら、その時間まで起きておるわぁ」
「そっか……雄介がそう言うんだったら俺の方は別に構わないんだけどな」

　望はそう言いながら一泊分の洋服を鞄の中へと詰め今度は下へと向かうとお風呂場へと向かうのだ。

　本当に望はお風呂に入るのが癖なんであろう。　必ず出掛ける前にはお風呂に向かうのだから。

　雄介の方も下へと向かい望がお風呂から上がって来るのをテレビでも見て待っていた。

　テレビでは今日の天気予報をやっている。　今日は全国的に晴れだと言っている。

　やがてシャワーの音が止み望がお風呂から上がって来たのだ。

「ホンマ、望は相変わらず毎朝風呂に入るんやなぁ？」
「ん？　朝から風呂に入っちゃいけねぇのか？」
「別にそういう事言っておる訳じゃあないんやけどな」
「ま、いいけどさ」

　今日は流石にの雄介に頭を拭いてもらっている暇ないようで望はドライヤーを使って乾かし始める。

　本当に今時間というのは静かな時間だ。

　車の走る音もまばらで鳥が鳴いている声がたまにしか聞こえて来ない。

　昔の人は『早起きは三文の得』とは言っていたのだが、早朝という時間帯というのは確かにそうなのかもしれない。