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ー波乱ー112

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「そういう事だったんですか……なら、安心しました」

   裕実は望に笑顔を向けると、

「そういう事らしいですよ」
「ああ、分かってる。 和也はそういう奴だからな」

 そう裕実に対し笑顔で返した望だったのだが、急に悲しそうな顔をした裕実に気付く。

「本当に望さんと和也って、心が通じ合ってる親友なんですね。 寧ろ、何かこう……恋人みたいな感じがするんですけど……」
「何言ってんだ……俺達は絶対に恋人同士になんかならないから安心しろ。   俺にも和也にも恋人がいるんだろ? ただ一緒にいて長いだけだし、お互いの事分かってるからな。 お前達はこれからずっと一緒にいるつもりなんだろ? なら、俺と和也以上に心が通じ合えるようになればいいんじゃねぇのか? それに、今、この俺が邪魔だって言うなら、俺は帰るし……」
「ちょ、ちょっと待てよ!」

   和也は二人の会話に割って入って来る。

「なんだよー、和也。 今は俺達話してんだから黙ってろよ」
「分かってんだけどさ。 今、望が家に帰ったら、まずいんじゃねぇのか?」
「和也! 余計な事を言うんじゃねぇよ! ちょっと、こっちに来い!」

 望はそう言うと和也の手首を掴んで部屋の端の方に連れて来て、裕実には聞こえないような小さな声で、

「今、裕実がお前への愛情を確かめてやってるんじゃねぇか! それを止めるんじゃねぇよ! お前は裕実と俺、どっちがいいんだよっ!」
「あ! そういう事だったのかー!」
「この鈍感ヤロー……」

 望は和也に向かって冷めたような視線を送るとため息を吐き和也に向かって軽く足蹴りを食らわせる。

「痛っ……」
「お前さぁ、他人の事に関しては真剣なのに、自分の事に関しては鈍感なんだよな」
「悪かったって……まったくもう……本当に望って乱暴なんだからな……さっきお前が蹴った場所がまだ痛いってーの……」

 和也の性格というのは大袈裟な性格だからなのか例え望が軽く小突いても痛いと嘆く。

「お前が鈍感なのがいけねぇんだろうが……」

   そう今度は和也の耳側で普通の声で言うのだが望はわざとそこは裕実に聞こえるように言うのだ。

 だが、そんな耳側で普通の声で言われたら和也の方はたまったもんじゃない。

「あー、耳がくすぐってぇー!」
「だってさぁ。 裕実、どうやら和也は耳が弱いらしいぜ……」
「ちょ、違げぇっ!   耳なんか弱くねぇぞ!」
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