上 下
194 / 2,140

ー天災ー16

しおりを挟む
 未だに炎が上がっているマンションの十階。

 階下では沢山の消防士が消化活動にあたっているのにも関わらず未だに鎮火しそうにもないようだ。

 雄介は下にいた親にこのマンションに自分の子供がいると言われて雄介は勝手な行動で来てしまっていた。

 その親の子供さんを見つけたまでは良かったのだが、空気ボンベの方も携帯型消化器の方ももう残りが少なくなってしまっている状態でもある。

 人間空気が無ければ生きていく事は出来ない。

 勝手に人命活動に来て空気ボンベはいよいよ無くなってしまったという事だ。

 子供の方は助ける事が出来たのに、このままではこの子供さえも今は危ない状況となっている。

 意識が朦朧としている中、雄介の頭の中に出て来たのは望がこの前言っていた言葉だ。

『死ぬんじゃねぇぞ』

 だが雄介は子供も自分も助かる前に意識を失ってしまったらしい。



「……い、桜井!」

 そう何処から自分の名前を呼んでいる声が聞こえてくる。 だがその声はその自分が想っている人の声ではないらしい。

 前にテレビで臨死体験したという人の話を聞いた事があるのだが、そういう場合には大抵親か自分が想っている人の声が聴こえてくるんだと思うのだが、それとは違う声のようだ。

「桜井! 気付いたか?」
「……へ?」

 雄介は薄ぼんやりとする意識の中、少しずつなのだが視界が開けて来ているという事なのか? それとも、ここは俗に言われている天国という所なのであろうか?

 先程まで雄介はあの火の海の中に居た筈だ。 さっきまでは地獄のような熱さだったのに今は全然熱くはない。 そりゃ暑いと言えば暑いのだが先程の熱さとは比べものにならないほどの暑さだという事だ。

 雄介は未だ回らない頭で辺りを見渡す。

 その視界に入って来たのは親友の坂本だった。

「……ん? 坂本?」
「良かったぁ。 気が付いたみたいだな」
「……ああ、おう」

 一応、雄介は坂本の問いに対して答えてみると、ちゃんと答えていたのだから生きているのは間違いない。

 しかし今は何処にいるのかさえ自分の中では分かってないようだ。

 現実なのか? それとも天国なのか?

 意識がハッキリとしていく中で周りの景色を確認し始める。

 青い空に眩しい太陽。

 天国にもこんな所があるのであろうか?

 いや多分ないだろう。

 地球にいるからこそ、地上にいるからこそ、その太陽と空が見えているのではないだろうか?

「そっか……」

 雄介はやっと今の自分のいる状況を確認する事が出来たのか、やっと動き出した頭の中で太陽に向かって自分の腕を上げてみると、そこには自分の手があった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

淫紋付けたら逆襲!!巨根絶倫種付けでメス奴隷に堕とされる悪魔ちゃん♂

朝井染両
BL
お久しぶりです! ご飯を二日食べずに寝ていたら、身体が生きようとしてエロ小説が書き終わりました。人間って不思議ですね。 こういう間抜けな受けが好きなんだと思います。可愛いね~ばかだね~可愛いね~と大切にしてあげたいですね。 合意のようで合意ではないのでお気をつけ下さい。幸せラブラブエンドなのでご安心下さい。 ご飯食べます。

出産は一番の快楽

及川雨音
BL
出産するのが快感の出産フェチな両性具有総受け話。 とにかく出産が好きすぎて出産出産言いまくってます。出産がゲシュタルト崩壊気味。 【注意事項】 *受けは出産したいだけなので、相手や産まれた子どもに興味はないです。 *寝取られ(NTR)属性持ち攻め有りの複数ヤンデレ攻め *倫理観・道徳観・貞操観が皆無、不謹慎注意 *軽く出産シーン有り *ボテ腹、母乳、アクメ、授乳、女性器、おっぱい描写有り 続編) *近親相姦・母子相姦要素有り *奇形発言注意 *カニバリズム発言有り

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

勇者よ、わしの尻より魔王を倒せ………「魔王なんかより陛下の尻だ!」

ミクリ21
BL
変態勇者に陛下は困ります。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

叔父さんと一緒♡

らーゆ
BL
叔父とショタ甥がヤッてるだけ。ガチのヤツなので苦手なひとは回避推奨。

「どスケベ変態おじさま(40↑)専用ボーイ♂ハメハメ店『あましじょ♡』へようこそっ♪」~あやくん(22)とたつみパパ(56)の場合~

そらも
BL
四十歳以上の性欲満タンどスケベ変態おじさまであれば誰でも入店でき、おじさま好きの男の子とえっちなことがた~っぷりとできちゃうお店『あましじょ♡』にて日々行われている、お客とボーイのイチャラブハメハメ物語♡ 一度は書いてみたかったえっちなお店モノ♪ と言いつつ、お客とボーイという関係ですがぶっちゃけめっちゃ両想い状態な二人だったりもしますです笑♡ ただ、いつにも増して攻めさんが制御の効かない受けくん大好きど変態発情お猿さんで気持ち悪くなっている他、潮吹きプレイや受けくんがビッチではないけど非処女設定とかにもなっておりますので、読む際にはどうぞご注意を! ※ R-18エロもので、♡(ハート)喘ぎ満載です。 ※ 素敵な表紙は、pixiv小説用フリー素材にて、『やまなし』様からお借りしました。ありがとうございます!

処理中です...