上 下
145 / 2,140

ー記憶ー88

しおりを挟む
  未だ話を先に進めようとしない雄介。

 だが兎に角、今は雄介の気持ちの整理が着くまで和也は雄介の言葉を待つしかない。

 そして雄介は一回生唾を飲み込むともう一度和也の腕を握り、

「あんなぁ、望の奴、記憶喪失になったしもうたみたいなんや」
「……はぁ!?」

 確かに望は救急車で病院へと運ばれて来たのだから最低でも大怪我をしているとは思っていたのだが、まさか記憶喪失という事なんて誰が想像した事だろうか。

 そんなに雄介が言葉を詰まらせていた意味がやっと分かったような気がする。 その言葉に和也の方もワンテンポ遅れて返事するのだ。

「それ、マジなのか?」
「ああ」

 和也にそう言われて雄介は返事と一緒に頭を頷かせる。 和也は今一瞬思考回路停止状態になりそうだったのだが、そこは直ぐに冷静になったのか、

「あぁ……うん、分かった。 そういう事なら、ずっと病院では俺が望の様子見て、それで、随時お前に連絡するようにするからさ、手離してくんねぇか? 俺も行かないとだしよ」

 和也はそう言いながら雄介が掴んでいる腕を離し、

「なぁ、お前……ちょ……え? へ? お前って、望の事好きやったんと違うの? 何で、俺にそんな優しくしてくれるん?」
「まったく、お前こそ何言ってんだよ。 この前の話はあくまで脅し、そうでも言わねぇと、お前動いてくれるとは思わなかったからさ」

 その和也の言葉に雄介の方は何が言いたいのかが分かったのか、和也に向かって頭を下げる。

 そしてもう次の瞬間には和也の姿はなかった。 きっと和也は直ぐに望の元に向かったのであろう。

 そして和也は雄介との話を終えると処置室の方に向かった望の元へと向かうのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白雪王子と容赦のない七人ショタ!

ミクリ21
BL
男の白雪姫の魔改造した話です。

孤児が皇后陛下と呼ばれるまで

香月みまり
ファンタジー
母を亡くして天涯孤独となり、王都へ向かう苓。 目的のために王都へ向かう孤児の青年、周と陸 3人の出会いは世界を巻き込む波乱の序章だった。 「後宮の棘」のスピンオフですが、読んだことのない方でも楽しんでいただけるように書かせていただいております。

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ
BL
生前、社畜だったおれの部屋に入り浸り、男のおれに乙女ゲームの素晴らしさを延々と語り、仮眠をしたいおれに見せ続けてきた妹がいた 人間、毎日毎日見せられたら嫌でも内容もキャラクターも覚えるんだよ そう、例えば…今、おれの目の前にいる赤い髪の美少女…この子がこのゲームの悪役令嬢となる存在…その幼少期の姿だ そしておれは…文字としてチラッと出た悪役令嬢の行いの果に一家諸共断罪された兄 ナレーションに 『悪役令嬢の兄もまた死に絶えました』 その一言で説明を片付けられ、それしか登場しない存在…そんな悪役令嬢の兄に転生してしまったのだ 社畜に優しくない転生先でおれはどう生きていくのだろう 腹黒?攻略対象×悪役令嬢の兄 暫くはほのぼのします 最終的には固定カプになります

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

どうぞ二人の愛を貫いてください。悪役令嬢の私は一抜けしますね。

kana
恋愛
私の目の前でブルブルと震えている、愛らく庇護欲をそそる令嬢の名前を呼んだ瞬間、頭の中でパチパチと火花が散ったかと思えば、突然前世の記憶が流れ込んできた。 前世で読んだ小説の登場人物に転生しちゃっていることに気付いたメイジェーン。 やばい!やばい!やばい! 確かに私の婚約者である王太子と親しすぎる男爵令嬢に物申したところで問題にはならないだろう。 だが!小説の中で悪役令嬢である私はここのままで行くと断罪されてしまう。 前世の記憶を思い出したことで冷静になると、私の努力も認めない、見向きもしない、笑顔も見せない、そして不貞を犯す⋯⋯そんな婚約者なら要らないよね! うんうん! 要らない!要らない! さっさと婚約解消して2人を応援するよ! だから私に遠慮なく愛を貫いてくださいね。 ※気を付けているのですが誤字脱字が多いです。長い目で見守ってください。

処理中です...