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第一章 御伽の土地
新たな(1)
しおりを挟む第一茶室を後にした俺達は今、トキノコの先導で竹林の中を歩いていた。
近道だからと勧められた順路に、道という道はない。
曰く、ここは彼女達が使用する秘密の抜け道で、しばらく進むと街がある通りに出るらしい。
その言葉を信じ、足場に注意を払い場がら、必死に小さな背中を追う。
出発の間際、シュンセイからある忠告を受けた。
「いいか、ヨミトを信用し過ぎるなよ。基本的に善人面で接しやすい男だが、中身は破綻してるからな」
破綻。……そんな相手に保護されるのか、俺。
「あいつが何を考えてるか……まあ十中八九、碌でもないことだろうが。ユメビシ、お前は自分の意思で生き方を決めろよ」
その言葉を最後に、シュンセイは隣の部屋へ引き篭もってしまい、それきりだ。
こうして現在、指定された『傘ザクラ』という場所に向かっている訳だが……。
――これで、良かったのだろうか?
依然として何一つ解決してなければ、次から次へと何かが起き、成り行きに身を任せている状態だ。
自分のことだというのに、分からないことが多過ぎる。
今は何を、特に誰を信用するか、慎重に見極めて行動すべきだな。
その上で、当面の目標は……やはり目覚めるより以前の記憶を思い出すこと。
当初は第一茶室がある場所からの転落事故と予想したが、シュンセイの証言によって候補から外れてしまった。
あの一帯は神域で、簡単に入れないはずなのに、俺という部外者が現れた。
それに心当たりがあるらしい、ヨミトという危険人物から直接話を聞くのが、最も真相に近づける手段らしい。
今は無事に合流することだけを、考えて先を急ごう。
……などと考え耽っていたせいで、トキノコが立ち止まったと気づかず、追い抜かしていた。
振り返ると彼女は進路から外れて、大きな岩の物陰から、じっと何かを見つめている。
俺も屈みながら、なるべく音を立てない様、彼女の側に戻る。
「どうかしたのか?」
「……ほら、あそこ。見た事ない女の子がいるの。どうしてあんな所に」
小さな手が指し示す先に目を凝らす。
ここより更に深緑が生い茂げ、薄暗くなる竹林の更に奥。
辺りをキョロキョロと見渡し、落ち着きない動作を繰り返している人影が一つ。
やや距離も離れ、あまつさえ背景に溶け込んでいるのだ。
普通なら見落としてしまうであろう、発見しずらい異変。
「あー……よく気づいたな」
「これも仕事だからね」
――仕事、か。
あまり深く考えない様にしていたが、トキノコとシュンセイ……普通の人間じゃないよな。
姿形は人と遜色ない。でも纏っている空気が明らかに違う。
そもそもこの場所に来てから、一般的な人間に会っただろうか。
……どうしよう、あの女子さえも突然襲ってくる側の存在だとしたら。
愈以て、危ない地に足を踏み入れたことになる。
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