幽縁ノ季楼守

儚方ノ堂

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序章

白い箱 後編

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 嫌なほど精巧に作られた、きっとは、目を薄く開いた状態で時を止められている。 
「こんなの、悪夢だ……」
 ――あぁ、それならこれまで埋めたもの達は?
 
 一度知ってしまうと、引き返すしかない。
 知らなかった事には出来ない。
 

 
 真っ青な大地には、綻びのような穴が空いている。
 それを塞ぐために箱を埋めていた。
 よく目立つ、真っ白の箱を。
 
 かつて埋めた箱を掘り起こすたびに、仲間達は言った。
「わざわざ確かめる必要はないよ」
「思い出さない方が、辛くないのに」
「君はここにいる方が幸せになれるよ」

 都合の良い、甘い言葉で引き留めようとするが、実際彼らは何もしてこない。
 ただ、こちらを光の無い瞳で眺めているだけ。
 
「あのさ、ここは何処?」
 ……いくら待っても、核心に迫る答えは返ってこない。
 きっと、こんな問答に意味などないのだろう。
 ここはそういった場所なのだ。
 
 誰もが答えを知っているのに、口にしない。
 それで成り立つ世界。
 
 箱を全て掘り起こし、一つずつ中身を暴いていく。
 そこからは、脚、胴体、腕……頭部以外の、各関節ごとに分断されたが現れた。
 組み立てると一体の人形が完成する。
 
 ……そうだ。嫌な予感はずっとしていた。
 顔を見ても、実感を得られなかったのに。
 皮肉にもが決め手となったのだ。
 
 ――これは、わたし? 



 

 

「……いいや、

 これはただの人形じゃない。
 ユメビシの身体を模した、等身大の紛い物マガイモノだ。

 どうしてこんな物を埋めていたのか。
 自分に酷似した人形をバラバラにして埋める、なんて。
 ……悪趣味が過ぎるだろ?
 
 
 ――あぁ。いい加減、戻るべきだ。
 
 
 こんな場所で油を売ってる暇はない。
 ――間に合うだろうか?

「誰かを……探して、いたのに」
 あぁ、眩暈がする。
 霧がかった様に上手く思い出せない。
 その「誰か」に関する記憶が、すっぽり抜け落ちている。
 
「とにかく帰ろう。元の場所に」
 たとえ行き着く先が……この悪夢より過酷な、現実だとしても。
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