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12話 ディオン視点

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 ディオンは屈辱だと考えながらもエレナの力を認めていると……ルドロス王は第二王子ジェロンに目をやり、隣に居た新たな聖女リーノに告げる。

「聖域は完成していないのならば、新たな聖女リーノが聖魔力を籠めて聖域を稼働させればいいだけだ……エレナは数分程度で終わらせていたことだ、何も問題はあるまい」

「そんなっ!?」

 リーノが驚き、ルドロス王との間にジェロンが入ることで対面して。

「無茶です! リーノはまだ聖魔力を巧く扱えない……後任になる予定だった聖女候補に任せるべきでは!?」

 エレナが聖女に選ばれる前に、聖女候補者として聖魔力を扱える者が何人も居た。

 彼女達はリーノよりも聖魔力を巧く扱えるから――お飾りの聖女リーノではなく、本来の聖女になる予定の者に頼る。

 そうしなければ、ルドロス国が終わる。

 最悪の事態を想定していると、宰相ライオスが首を左右に振って。

「彼女達は、聖女候補を求めていた国に差し出しました。今更返せと言っても、もう聖女になっているので無理でしょう」

「なっ……そんな話は聞いていないぞ!」

 第二王子ジェロンが叫ぶも、ライオスではなくルドロス王が苦い顔をして。

「私が許可を出した……向こうの提案してきた条件がよすぎたからな。まさか、こうなるとは……」

「馬鹿な……」

 どうやらルドロス国には聖女として聖域に問題なく聖魔力を与える者は、リーノだけらしい。

 いつワイバーンが襲ってくるか解らない状況下である以上、リーノに頼るしかなかった。

「とにかく一度、聖域に行くとしよう……聖域が完成してたるとしても、時々は僅かでも聖魔力を流す必要があったのかもしれない」

「そ、そうですよね! 行きましょう!!」

 ディオンはそう言ってリーノを安心させるも、これは問題を先延ばしにしているだけに過ぎない。

 安堵できるのは推測が本当の時だけで、それ以外は最悪の状況となる。

 ディオンはそこまで予想することができていて――不安になるしかなかった。
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