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83話
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あれから数日が経って――トールズ魔道具店は一度も開けていない。
ノーチスが言うには冒険者ギルドから警告がきて、調査が入るらしい。
洗脳の魔道具はもう解体しているけど、洗脳の魔道具を作る素材を入手していたのは事実だ。
そこを突かれればどうしようもなくて……私は居間で、ラッセルと対面している。
「名前を偽り、どこか別の場所で魔道具店を開こうと考えている」
「えっ……」
提案を聞いて、私は驚くしかない。
ラッセルはこの状況を諦めていて、新たな魔道具店を始めようと考えている。
「それって……大丈夫なの?」
「バレたらどうしようもないが、今回の件は反省しよう……地道にやれば大丈夫だ」
そう言うけど……私達は普通に魔道具店を経営していただけだ。
それなのに全てを捨てて、まだ一から始めなければならない。
いいえ……リバイスの協力がない以上、更に辛くなるのはわかっている。
最初の赤字経営を知っているからこそ……私は悔しくて堪らない。
「ミレイユ。これはどうしようもないことだったんだ……俺は割り切るが、ミレイユはどうする?」
ラッセルが不安げに尋ねているのは、一緒に来てくれるかを尋ねているのでしょう。
今回の件はフルディに原因があり……フルディを追い詰めたのは私でもある。
それでも……今までの生活を思い返すと、私はラッセルと離れたくない。
そこまでラッセルのことを想うようになっていて、それを伝えようとした瞬間にベルが鳴る。
私達は裏口の扉を開けると……そこにはリバイスともう1人、青年が居る。
「2人とも――諦めるにはまだ早いぞ」
そう言ってくれるのは……フルディの兄、ドルーダ殿下だった。
「ド、ドルーダ殿下!?」
私とラッセルが驚いていると、ドルーダ殿下は頷きながら。
「アイレス商会との件……全て解決したから、その報告にきたんだ」
「……えっ?」
「アイレス商会は終わらせた。もう大丈夫だ」
ドルーダ殿下が宣言して、リバイスも微笑みを浮かべている。
ラッセルはトールズ魔道具店を捨てるつもりでいたけど……そうしなくてよくなったのかもしれない。
ノーチスが言うには冒険者ギルドから警告がきて、調査が入るらしい。
洗脳の魔道具はもう解体しているけど、洗脳の魔道具を作る素材を入手していたのは事実だ。
そこを突かれればどうしようもなくて……私は居間で、ラッセルと対面している。
「名前を偽り、どこか別の場所で魔道具店を開こうと考えている」
「えっ……」
提案を聞いて、私は驚くしかない。
ラッセルはこの状況を諦めていて、新たな魔道具店を始めようと考えている。
「それって……大丈夫なの?」
「バレたらどうしようもないが、今回の件は反省しよう……地道にやれば大丈夫だ」
そう言うけど……私達は普通に魔道具店を経営していただけだ。
それなのに全てを捨てて、まだ一から始めなければならない。
いいえ……リバイスの協力がない以上、更に辛くなるのはわかっている。
最初の赤字経営を知っているからこそ……私は悔しくて堪らない。
「ミレイユ。これはどうしようもないことだったんだ……俺は割り切るが、ミレイユはどうする?」
ラッセルが不安げに尋ねているのは、一緒に来てくれるかを尋ねているのでしょう。
今回の件はフルディに原因があり……フルディを追い詰めたのは私でもある。
それでも……今までの生活を思い返すと、私はラッセルと離れたくない。
そこまでラッセルのことを想うようになっていて、それを伝えようとした瞬間にベルが鳴る。
私達は裏口の扉を開けると……そこにはリバイスともう1人、青年が居る。
「2人とも――諦めるにはまだ早いぞ」
そう言ってくれるのは……フルディの兄、ドルーダ殿下だった。
「ド、ドルーダ殿下!?」
私とラッセルが驚いていると、ドルーダ殿下は頷きながら。
「アイレス商会との件……全て解決したから、その報告にきたんだ」
「……えっ?」
「アイレス商会は終わらせた。もう大丈夫だ」
ドルーダ殿下が宣言して、リバイスも微笑みを浮かべている。
ラッセルはトールズ魔道具店を捨てるつもりでいたけど……そうしなくてよくなったのかもしれない。
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