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55話

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 私をマルーア家に連れ戻そうとした捜索隊を対処して、一週間が経っていた。

 あれからクイム達は発見できなかったと報告したのか、別の場所を探しているのかもしれない。

 クイムはかなり高位の冒険者のようで、複数の捜索隊よりも精鋭の方がいいとマルーア家は考えたようね。

 まさか倒されて、更にラッセルが禁忌とされている記憶操作の魔道具を作っているとは思わないでしょう。

 記憶操作の魔道具は強力だけど、条件がかなり厳しい。

 バレたらトールズ魔道具店は終わりだから、使うタイミングに注意する必要がある。

 そう考えて……私のために破滅するかもしれない記憶操作の魔道具を使ってくれたことに、嬉しさを感じていると。

「ミレイユ。何かあったのか?」

「えっ!? な、なんだか最近、お客様が多いような気がしたけど……そこまで忙しい気はしなくて、成長したことを実感していたのよ」

 つい顔がほころんでしまったようで、ラッセルが尋ねてくる。

 私は誤魔化すけど……最近お客様が多いのに、今までより疲れていない気がするのは事実だ。

 これも嬉しかった点だけど、ラッセルは肩をすくめながら。

「いや、それなんだが……最近買わずに眺めているだけの多いから、人が増えても買う人は変わってないんだよ」

「えっ!?」

 そういえば、確かに魔道具を眺めたりしている人は多いけど、購入する人はいつもの人のような気がする。

 他にも魔道具店があるし、値段を確認して他の魔道具店に行くのは当然だと思うけど……ここ最近は、そんな人が特に多い。

 私が驚いていると、ラッセルのフォローが入る。

「それでも売上はいつも通りだから、ミレイユが成長しているのは事実だ」

「そ、そうよね!」

 流石に慣れてきたと思っていたのが、思い込みじゃなくてよかった。

 そう考えていると――お得意様の冒険者、ノーチスがやって来る。

 ノーチスは1人なのに冒険者のランクはこのケルクト国でもトップクラスのようで、かなりの頻度で店にやって来てくれる人だ。

 そんなノーチスはいつも通り買物を済ませて、私が会計を行っていると。

「ありがとう……閉店後、店主と話ができないだろうか?」

「ラッセルと、ですか?」

「かなり重要な話になる……まだ後でくるから、話だけは聞いて欲しい」

 深刻そうな様子で告げて、目が合ったラッセルも頷いている。

 店内にお客様が多いから、閉店後に話すことにしたようだけど……眺めて帰るお客様の多さと関係しているのだろうか?

 高位冒険者が話があると言ってきて、私は何が起きたのかが気になっていた。 
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