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42話 フルディ視点
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元第二王子フルディは最初、1カ月間の学園生活は兄として与える最後の優しさだと思い込んでいた。
実際は違う――醜い兄による報復だということを、新生活初日から知ることとなる。
× × ×
授業を終えてフルディはマルーア家の屋敷へ戻り、ミラーナの部屋で蹲っていた。
「楽しかった学園生活が、どうしてここまで苦しいものとなっている……」
クラスメイト、先輩、後輩。
今までは親しく接してくれた全ての人が、フルディを避けるようになっていた。
敵意を持たれたわけではなく、無関心でいるだけ……それでも、今までと違い過ぎる環境にフルディは精神を蝕まれていく。
王子と言う肩書がなければ、自分の存在はどうでもいいのかと……自己嫌悪に陥るしかない。
「もう俺が何をしたか広まっているのか……それに、あの教師共……」
今までは何も言わなかったというのに、今日の教師達は明らかにフルディを見下していた。
どうやら今までは第一王子だから最高位のクラスに置いていたようで優しく教えられているも、もうフルディは王子ではなくなっている。
そうなればクラスの中でも成績の悪い落ちこぼれとなり……自分がどれだけ甘い生活を送っていたのか、ようやく理解することができていた。
そんな中、ミラーナだけが、フルディを愛しく眺めて。
「私はどんな目に合っても……フルディ様と一緒なら幸せです」
「ああ……そうだな」
返事こそ普通でいるも内心フルディは苛立ち、屈辱を受けた怒りで馬鹿なことを言うミラーナを殴りたくなるも、必死に我慢している。
今この場でミラーナに暴力を振るえば、屋敷を追い出される可能性が高い。
そうなれば更に惨めな末路を辿るのは間違いなくて――ミレイユのせいでここまで落ちぶれるのかと、フルディは憎悪を抱いていた。
実際は違う――醜い兄による報復だということを、新生活初日から知ることとなる。
× × ×
授業を終えてフルディはマルーア家の屋敷へ戻り、ミラーナの部屋で蹲っていた。
「楽しかった学園生活が、どうしてここまで苦しいものとなっている……」
クラスメイト、先輩、後輩。
今までは親しく接してくれた全ての人が、フルディを避けるようになっていた。
敵意を持たれたわけではなく、無関心でいるだけ……それでも、今までと違い過ぎる環境にフルディは精神を蝕まれていく。
王子と言う肩書がなければ、自分の存在はどうでもいいのかと……自己嫌悪に陥るしかない。
「もう俺が何をしたか広まっているのか……それに、あの教師共……」
今までは何も言わなかったというのに、今日の教師達は明らかにフルディを見下していた。
どうやら今までは第一王子だから最高位のクラスに置いていたようで優しく教えられているも、もうフルディは王子ではなくなっている。
そうなればクラスの中でも成績の悪い落ちこぼれとなり……自分がどれだけ甘い生活を送っていたのか、ようやく理解することができていた。
そんな中、ミラーナだけが、フルディを愛しく眺めて。
「私はどんな目に合っても……フルディ様と一緒なら幸せです」
「ああ……そうだな」
返事こそ普通でいるも内心フルディは苛立ち、屈辱を受けた怒りで馬鹿なことを言うミラーナを殴りたくなるも、必死に我慢している。
今この場でミラーナに暴力を振るえば、屋敷を追い出される可能性が高い。
そうなれば更に惨めな末路を辿るのは間違いなくて――ミレイユのせいでここまで落ちぶれるのかと、フルディは憎悪を抱いていた。
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