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16話 王子視点
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フルディは今まで受けたことがないほどの屈辱を受け、怒りの感情を必死に抑えていた。
このまま兄上……いや、ドルーダをいい気にさせて終わりたくはない。
咄嗟の思いつき――フルディは勝ち誇りながらミラーナを背後から抱き寄せ、右腕で首を折ろうとしていた。
「フ、フルディ、様ぁぁっ!?」
ミラーナの口から苦し気な声を出させるため、フルディは右腕に力を込めて首を絞めていく。
まだチャンスはあると、力を込めればミラーナの首が折れる状況を見せつけ、フルディは勝ち誇った表情を見せつけながらドルーダに告げる。
「この女はお前の好きなミレイユの妹だ……俺が右腕に力を籠めれば、お前が行動する前に首をへし折ることができるぞ!」
「フ、フルディ様……っっ!?」
必死に名前を呼ぶミラーナに対し、フルディは腕の力を強めて更に苦しめる。
その光景を目にしてもドルーダが呆れ果てた表情を浮かべているのが気に障り、激昂したフルディは叫ぶ。
「いい気になるなよドルーダ! さっきこの俺を殴った借りは返させて――」
「――思いつきで考えなしの行動をとる。それは今まで何もかも上手くいっていると思い込んでいた貴様の弱点だが、結局改めることはなかったな」
「はぁっ!?」
この状況でもどうでもよさそうな反応を見せて、ドルーダが2人に告げる。
「俺が好きだったのはミレイユで、そんな女はどうでもいい……殺したければ殺せ」
当然の反応だった。
やり返す方法がこれしかないからとフルディが行動に出るも、まったく意味がない。
むしろ悪化するだけだと、自分がどれだけ愚かな行動をとったのか理解し、フルディは腕の力を緩める。
拘束から解放され、手足を床につけて、ミラーナは苦しげに絶望の表情を浮かべて。
「嘘、嘘よ……こんなの……」
フルディが茫然としている中、絶望したミラーナは嘘だと何度も声に出して現実逃避をしていた。
そんなミラーナを眺めながら、ドルーダはフルディに告げる。
「この女は貴様の本性を見て心が壊れたか……それでも貴様を信じていることには、驚かされたがな」
そう言いながらドルーダが去って行き――フルディとミラーナは城から追い出されていた。
門の前で茫然として項垂れ動こうともしないミラーナを、フルディは見定めるように眺めて。
「……ミラーナ。俺がとったさっきの行動は、君を想っての行動だった」
「えっ……」
「あの状況で何をしても無意味だとは気付いていたが、君の命を使えばドルーダと交渉できるかもしれないと考えていた。俺は、君を殺す気なんて一切なかったんだ」
「フルディ様……私は、信じていました」
それからフルディが抱きしめることでミラーナは元に、いや――今まで以上にフルディを依存する。
もしミラーナがこの場で抵抗したり、立ち直らなかった場合……使えない駒は捨てるとフルディは決意しているも、まだミラーナには利用価値があった。
このまま兄上……いや、ドルーダをいい気にさせて終わりたくはない。
咄嗟の思いつき――フルディは勝ち誇りながらミラーナを背後から抱き寄せ、右腕で首を折ろうとしていた。
「フ、フルディ、様ぁぁっ!?」
ミラーナの口から苦し気な声を出させるため、フルディは右腕に力を込めて首を絞めていく。
まだチャンスはあると、力を込めればミラーナの首が折れる状況を見せつけ、フルディは勝ち誇った表情を見せつけながらドルーダに告げる。
「この女はお前の好きなミレイユの妹だ……俺が右腕に力を籠めれば、お前が行動する前に首をへし折ることができるぞ!」
「フ、フルディ様……っっ!?」
必死に名前を呼ぶミラーナに対し、フルディは腕の力を強めて更に苦しめる。
その光景を目にしてもドルーダが呆れ果てた表情を浮かべているのが気に障り、激昂したフルディは叫ぶ。
「いい気になるなよドルーダ! さっきこの俺を殴った借りは返させて――」
「――思いつきで考えなしの行動をとる。それは今まで何もかも上手くいっていると思い込んでいた貴様の弱点だが、結局改めることはなかったな」
「はぁっ!?」
この状況でもどうでもよさそうな反応を見せて、ドルーダが2人に告げる。
「俺が好きだったのはミレイユで、そんな女はどうでもいい……殺したければ殺せ」
当然の反応だった。
やり返す方法がこれしかないからとフルディが行動に出るも、まったく意味がない。
むしろ悪化するだけだと、自分がどれだけ愚かな行動をとったのか理解し、フルディは腕の力を緩める。
拘束から解放され、手足を床につけて、ミラーナは苦しげに絶望の表情を浮かべて。
「嘘、嘘よ……こんなの……」
フルディが茫然としている中、絶望したミラーナは嘘だと何度も声に出して現実逃避をしていた。
そんなミラーナを眺めながら、ドルーダはフルディに告げる。
「この女は貴様の本性を見て心が壊れたか……それでも貴様を信じていることには、驚かされたがな」
そう言いながらドルーダが去って行き――フルディとミラーナは城から追い出されていた。
門の前で茫然として項垂れ動こうともしないミラーナを、フルディは見定めるように眺めて。
「……ミラーナ。俺がとったさっきの行動は、君を想っての行動だった」
「えっ……」
「あの状況で何をしても無意味だとは気付いていたが、君の命を使えばドルーダと交渉できるかもしれないと考えていた。俺は、君を殺す気なんて一切なかったんだ」
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