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6話 結界魔法の力

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 大きいテントぐらいのスペースでしか身動きがとれない状態で、馬から降りたラザンが見えない壁を力強く叩く。

 結界の端に触れて強度を確認できたのか、出られない現状に焦り私を睨んできた。

「結界だと!? まさかミーシアは本当に結界を国の全土に張っていたのか!?」

「どうやら結界魔法のことを、殿下は信じていなかったようですね。国土に張り巡らせた結界は解除しています。これから何が起きても私には関係ないことです」

 王子は結界魔法を信じず、新たに聖女となった妹ミリザの嘘を国民達も信じて私を糾弾した。

 今まで耐えてきたけれど限界で、引き留めたい王子は暴力で従えようとした。

 結界で抑えるのは当然の行動なのに、憤ったラザンが叫ぶ。

「本気で国から出て行くつもりか! とにかくここから出せ!!」

「貴方達の攻撃を防いでいる結界を、私が解くわけないでしょう」

「そ、それは……今までのことば全て謝る! 頼むからこの狭い結界から俺達を解放してくれ!!」

 馬に乗った私がこの場から去ろうとしたら、不安になったのかラザンは頭を下げて懇願する。

 見えない壁に囲まれて出られないことが不安なようだけど、私を痛めつけようとした人達だ。

 許せるわけがなくて、それでも私は言っておく。

「ラザン殿下を閉じ込めている結界は数時間で消えますが、その間は出ることができません。どんなことをしても壊れないので、色々と試して時間を潰すことをオススメします」

「数時間もこの狭い場所から出られないだと!? 役立たずの聖女が、さっさとここから出せ!!」

 怒声が謝罪に変わったけど再び怒声に変わり、私は結界から出す気がない。

 他の人が来る前に、私はここから去ることに決めた。

「さようならラザン殿下。最後に結界魔法を知ることができましたね」

「待ってくれ! せめてこの結界を解除して――」

 発言を無視して、私は馬と一緒にラザン王子から離れていく。

 全て謝ると言われた時は悩んだけど、すぐ怒声に変わったことで悩んだことを反省していた。

 あれでも婚約者で、ミリザから離れることができた人でもある。

 それでもミリザが聖女と判明してから、ラザンも私ではなくミリザを愛するようになってしまった。

「……メルアーツ国はどうでもいいですが、去る前に行かなければならない場所があります」

 ラザンのことは忘れることにして、本来の目的を果たすため行動する。

 この国には精霊の森があり、その名の通り森に精霊が住んでいる。

 そこには精霊が張っていた結界があり、私の結界魔法によって二重の結界で守られていた。

 精霊からは感謝されていたけど、そのことは他言無用と言われたから誰にも言ってない。

 国を見捨てることにした私は国を守る結界を解除したから、精霊の森を守っていた私の結界も消えてしまう。

 そのことは報告するべきで、私は精霊に会う必要があった。
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