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7話
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来週には騎士試験があり、騎士長ヨシュアから私が試験管になって欲しいと頼まれてしまう。
どうしてそうなるのか理解できず、私が試験管になるとどうなるのだろう?
前回の試験的に、絶対にナドクは激怒するはずだ。
「あの、私が試験管になると、ナドクがどんな行動を起こすかわかりませんよ?」
「だからこそルミナには試験管になって欲しい。冷静でいられない受験者は、騎士団に必要ないからな」
「なるほど……2度目の警告で騎士試験が受けられなくなりますから、それがヨシュア様の狙いということですね」
「他の騎士長も了承している。前回の試験でナドクは目障りだったから、次で確実に排除しておきたい」
ヨシュアはナドクに苛立っていそうで、前試験の言動が相当不愉快だったのでしょう。
恐らくラギド騎士長も同意見だから、私が試験管となって欲しいのか。
提案と理由になっとくして、私は頷く。
「わかりました……それでも、受験者の評価とかできる気がしませんよ?」
「構わない。これから騎士長になる逸材と紹介して、試験管を担当する時に備え見学させるだけさ」
どうやら私はヨシュアの傍で試験を眺めるだけで構わないようで、それなら問題なさそうだ。
問題があるとすればナドクがどんな行動をとるのかわからないことだけど、何が起きても私には関係なかった。
◇◆◇
「ルミナが騎士長候補だと!? 俺に対する嫌がらせをしたいだけだろ!!」
1週間が経って試験日となり、説明してすぐにナドクの暴言が広場に響く。
前回と同じような説明の後に、ヨシュアが私のことを紹介する。
列の先頭でずっと私を睨んでいたナドクは「彼女は騎士長候補だ」と聞くとすぐに叫んでいた。
似たような暴言を、半年前に聞いたから懐かしくもある。
あの時は不愉快でしかなかったけど、今は――普通に不愉快ね。
これで2度目の警告は確定でしょうし、もう2度と会うことはなさそうだ。
他の受験者達には悪いけど、私が悪役扱いされるのも嫌だから対応するとしよう。
「私は結果を出してこの場にいます。口だけのナドクは試験に合格することで結果を出してください」
「ふざけたことを言うな! 子爵家の分際で、伯爵家の俺を見下すな!!」
「それなら、俺の部下を見下すなと言いたい」
「あっっ……そ、それは――」
「――ルミナはこの半年間で結果を出したからこの場にいます。それに比べてお前は口だけの愚者……警告を受けていますし、試験をするまでもないでしょう。今すぐ出て行ってください」
ラギドの宣言により、広場が静まり返る。
試験に邪魔だから出て行けと、ナドクは受験者達に冷めた目を向けられていた。
自らの暴挙でキャサリンを苦しめ、そのせいでセルクトラ伯爵家の評判も悪い。
騎士試験を合格して汚名返上したかったのに、感情を抑えられないから試験を受ける前に出禁になろうとしていた。
「この俺が……これも全て! ルミナのせいだ!!」
激昂したナドクは自暴自棄になったのか、腰に差した剣を持ち鞘から刃を引き抜く。
魔力を籠めた全力の一撃を私に振り抜くけど、それを指で受け止める。
この半年もの間に私は実戦経験を経たことで、この程度の暴徒なら剣を使うまでもなく対処できた。
「え……?」
「全力を出してこの程度の力なら、試験するまでもないでしょう」
「ルミナの言うとおりだな。出て行かないのなら追い出すがどうする?」
ナドクは力を込めても剣が動かないことに唖然として、私が刃を掴んでいた指を離す。
力の差を理解したのかナドクは項垂れながら広場を去っていき、私の目的は果たされようとしていた。
どうしてそうなるのか理解できず、私が試験管になるとどうなるのだろう?
前回の試験的に、絶対にナドクは激怒するはずだ。
「あの、私が試験管になると、ナドクがどんな行動を起こすかわかりませんよ?」
「だからこそルミナには試験管になって欲しい。冷静でいられない受験者は、騎士団に必要ないからな」
「なるほど……2度目の警告で騎士試験が受けられなくなりますから、それがヨシュア様の狙いということですね」
「他の騎士長も了承している。前回の試験でナドクは目障りだったから、次で確実に排除しておきたい」
ヨシュアはナドクに苛立っていそうで、前試験の言動が相当不愉快だったのでしょう。
恐らくラギド騎士長も同意見だから、私が試験管となって欲しいのか。
提案と理由になっとくして、私は頷く。
「わかりました……それでも、受験者の評価とかできる気がしませんよ?」
「構わない。これから騎士長になる逸材と紹介して、試験管を担当する時に備え見学させるだけさ」
どうやら私はヨシュアの傍で試験を眺めるだけで構わないようで、それなら問題なさそうだ。
問題があるとすればナドクがどんな行動をとるのかわからないことだけど、何が起きても私には関係なかった。
◇◆◇
「ルミナが騎士長候補だと!? 俺に対する嫌がらせをしたいだけだろ!!」
1週間が経って試験日となり、説明してすぐにナドクの暴言が広場に響く。
前回と同じような説明の後に、ヨシュアが私のことを紹介する。
列の先頭でずっと私を睨んでいたナドクは「彼女は騎士長候補だ」と聞くとすぐに叫んでいた。
似たような暴言を、半年前に聞いたから懐かしくもある。
あの時は不愉快でしかなかったけど、今は――普通に不愉快ね。
これで2度目の警告は確定でしょうし、もう2度と会うことはなさそうだ。
他の受験者達には悪いけど、私が悪役扱いされるのも嫌だから対応するとしよう。
「私は結果を出してこの場にいます。口だけのナドクは試験に合格することで結果を出してください」
「ふざけたことを言うな! 子爵家の分際で、伯爵家の俺を見下すな!!」
「それなら、俺の部下を見下すなと言いたい」
「あっっ……そ、それは――」
「――ルミナはこの半年間で結果を出したからこの場にいます。それに比べてお前は口だけの愚者……警告を受けていますし、試験をするまでもないでしょう。今すぐ出て行ってください」
ラギドの宣言により、広場が静まり返る。
試験に邪魔だから出て行けと、ナドクは受験者達に冷めた目を向けられていた。
自らの暴挙でキャサリンを苦しめ、そのせいでセルクトラ伯爵家の評判も悪い。
騎士試験を合格して汚名返上したかったのに、感情を抑えられないから試験を受ける前に出禁になろうとしていた。
「この俺が……これも全て! ルミナのせいだ!!」
激昂したナドクは自暴自棄になったのか、腰に差した剣を持ち鞘から刃を引き抜く。
魔力を籠めた全力の一撃を私に振り抜くけど、それを指で受け止める。
この半年もの間に私は実戦経験を経たことで、この程度の暴徒なら剣を使うまでもなく対処できた。
「え……?」
「全力を出してこの程度の力なら、試験するまでもないでしょう」
「ルミナの言うとおりだな。出て行かないのなら追い出すがどうする?」
ナドクは力を込めても剣が動かないことに唖然として、私が刃を掴んでいた指を離す。
力の差を理解したのかナドクは項垂れながら広場を去っていき、私の目的は果たされようとしていた。
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