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2話
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婚約者だったナドクに呼び出されてすぐ追い出された私は、トイスノー子爵家の屋敷に戻っていた。
騎士試験に合格して元婚約者の心を折るという目標ができたけど、試験までに調べたいことが幾つかある。
まずは今日の出来事を報告しようと執務室に行くと仕事中のお父様がいて、私を目にして驚き椅子から立ち上がる。
「さっき行ったはずなのにもう戻ったのか! ナドク様は今度こそ騎士試験に合格しそうか?」
「婚約破棄を言い渡されました」
「一瞬で彼の合否がどうでもよくなってしまった……ルミナを愛人として置くとか提案しなかっただけ、マシだな」
「あの人はキャサリン様が好きなので、私はタイプじゃなかったのでしょう」
小柄で丸々とした可愛い系のキャサリンと違い、私は女性にしては長身だ。
成長期に鍛え続けたからなのか、とにかく長い銀髪が似合っていると自負している。
それでもナドクがキャサリンと浮気していた辺り、彼の好みは私じゃなかったようだ。
「そもそもルミナがいるのに浮気をするとはな。原因はナドク様にあるのだから、婚約破棄でこちらに被害はない」
「婚約破棄された令嬢と私の評判が下がりそうですが、すぐに浮気したナドク様がクズだったと噂されるでしょう」
キャサリンと浮気しているかもしれないと話していたからか、婚約破棄の報告を聞いてもお父様はそこまで驚いていない。
悪いのは間違いなくナドクの方だから、慰謝料をとれるだろうし構わないのでしょう。
口元に手を置くお父様は、私に尋ねたいことがありそうだ。
「これからどうするべきか……ルミナはどうしたい?」
「来月ある騎士試験を受けようと思います」
「合格すれば私達の家は安泰だが、騎士試験の合格者は1人、多くて2人とされている」
どうやら最低でも1人は合格者が出るようで、合格ラインを越えられない人ばかりのようだ。
それほど厳しいけど騎士になることは名誉であり、1年務めれば肩書がつく。
求められるのは実力だけで子爵令嬢でも問題ないらしく、お父様としては合格できるか不安になっていそう。
「試験内容は知りませんけど、私がナドク様より優れているのは間違いありません」
ナドクに試験で何があったのか聞くと機嫌が悪くなり教えてくれなかったから、何も知らないのよね。
お父様は知っているようで、指を3本立てて私に見せる。
「試験内容を説明すると、身体能力・魔力・実技の試験があり、その総合評価で決まる。身体能力は用意された岩を剣で攻撃だ」
「岩なら両断できそうです」
「そ、そうなのか……岩をどれだけ破壊できるか評価されるらしいぞ」
それなら両断するのはダメなのかもしれない。
加減した方がよさそうで、次は魔力ね。
「魔力は魔法の性能を見るようだ。ルミナは炎魔法に長けていたから、火球を操作できるかどうかだな」
「火球を手の平に作ることはできますよ」
「優秀だが、それで合格は無理だ。火球を自由自在に動かすことができるかどうかで、15歳なら前方に飛ばせば上出来とされている」
「火球程度なら複数出して、こんな風にできますよ?」
「ちょっと待て! 私が知らない間にどれだけ成長している!?」
お父様の話を聞きながら私は火球を3つ手の平から順に出し、お手玉をしているかのように宙に浮かべ動かしてみせた。
手を一切動かしていないから魔力による操作と一目でわかり、唖然としたお父様が叫ぶ。
「ナドク様が実行して私にもやれと命令した、元騎士によるトレーニングを頑張りました」
「凄まじいな、流石は元騎士様……そういえば、ルミナはナドクに「昔の話」をしたのか?」
「聖獣の存在についてはは隠しましたけど、私と関わった人は疲労しにくいとは以前から伝えています。それでもキャサリンが使える癒しの魔法によるものと思ったみたいです」
隠している理由は、助けた聖獣に加護のことは話さないで欲しいとお願いされたからだ。
私に癒しの力がある程度で説明は構わないみたいだけど、聖獣について知っているのはお父様と私だけ。
「聖獣様を私は実際に見ていないし、ルミナが助けたというのも生命力を分け与えた程度だったな」
「はい。与えた後に聖獣はいなくなり、私は眠くなってしまいました。眠れば回復する程度の生命力を与えただけですけど……聖獣からすれば、命の恩人だったみたいです」
助けた聖獣は龍の子供みたいな姿をしていて、私と会話することもできた。
助けを求める声が聞こえたから、声の場所に向かっただけなんだけど……助けて加護を授かり、私や私と関わる人を癒やすことができる。
その力はお父様も実感していたようで、ナドクも婚約者の時は恩恵があったのは間違いない。
これからその恩恵がなくなっても、婚約を破棄したのだから私には関係のないことだ。
「話を戻そう……騎士試験に合格、できそうだな」
「私も同じことを考えていました」
「騎士になったルミナには、騎士の婚約者を見つけてきて欲しいものだ」
「婚約者を探しにいくわけではありませんよ」
「私が勧めた人があれだったから、次は自分で決めた方がよくないか?」
「それはそうかもしれません。お父様は人を見る目がなさ過ぎました」
お父様の評判がいいから私に縁談が幾つかきたようで、一番立場がいい伯爵家のナドクを選んでしまう。
思わず文句が出てしまうと、お父様は私に頭を下げる。
「すまなかった。騎士試験の手続きはしておくが、落ちても気にしないから気楽に受けてくるといい」
「絶対に受かってみせます。ナドクがどうなるのか楽しみです」
騎士試験に合格して心を折り、騎士として活躍することで更に折る。
話を一切聞かずに見下してきた人達は不愉快で、特に婚約破棄の元凶であるナドクは許せない。
その後の私は元騎士のトレーニングを更に多くこなしていき、騎士試験に備える。
合格するため全力を出すつもりで、それが騎士試験の時に騒動を引き起こすことになるなんて――この時の私は考えていなかった。
騎士試験に合格して元婚約者の心を折るという目標ができたけど、試験までに調べたいことが幾つかある。
まずは今日の出来事を報告しようと執務室に行くと仕事中のお父様がいて、私を目にして驚き椅子から立ち上がる。
「さっき行ったはずなのにもう戻ったのか! ナドク様は今度こそ騎士試験に合格しそうか?」
「婚約破棄を言い渡されました」
「一瞬で彼の合否がどうでもよくなってしまった……ルミナを愛人として置くとか提案しなかっただけ、マシだな」
「あの人はキャサリン様が好きなので、私はタイプじゃなかったのでしょう」
小柄で丸々とした可愛い系のキャサリンと違い、私は女性にしては長身だ。
成長期に鍛え続けたからなのか、とにかく長い銀髪が似合っていると自負している。
それでもナドクがキャサリンと浮気していた辺り、彼の好みは私じゃなかったようだ。
「そもそもルミナがいるのに浮気をするとはな。原因はナドク様にあるのだから、婚約破棄でこちらに被害はない」
「婚約破棄された令嬢と私の評判が下がりそうですが、すぐに浮気したナドク様がクズだったと噂されるでしょう」
キャサリンと浮気しているかもしれないと話していたからか、婚約破棄の報告を聞いてもお父様はそこまで驚いていない。
悪いのは間違いなくナドクの方だから、慰謝料をとれるだろうし構わないのでしょう。
口元に手を置くお父様は、私に尋ねたいことがありそうだ。
「これからどうするべきか……ルミナはどうしたい?」
「来月ある騎士試験を受けようと思います」
「合格すれば私達の家は安泰だが、騎士試験の合格者は1人、多くて2人とされている」
どうやら最低でも1人は合格者が出るようで、合格ラインを越えられない人ばかりのようだ。
それほど厳しいけど騎士になることは名誉であり、1年務めれば肩書がつく。
求められるのは実力だけで子爵令嬢でも問題ないらしく、お父様としては合格できるか不安になっていそう。
「試験内容は知りませんけど、私がナドク様より優れているのは間違いありません」
ナドクに試験で何があったのか聞くと機嫌が悪くなり教えてくれなかったから、何も知らないのよね。
お父様は知っているようで、指を3本立てて私に見せる。
「試験内容を説明すると、身体能力・魔力・実技の試験があり、その総合評価で決まる。身体能力は用意された岩を剣で攻撃だ」
「岩なら両断できそうです」
「そ、そうなのか……岩をどれだけ破壊できるか評価されるらしいぞ」
それなら両断するのはダメなのかもしれない。
加減した方がよさそうで、次は魔力ね。
「魔力は魔法の性能を見るようだ。ルミナは炎魔法に長けていたから、火球を操作できるかどうかだな」
「火球を手の平に作ることはできますよ」
「優秀だが、それで合格は無理だ。火球を自由自在に動かすことができるかどうかで、15歳なら前方に飛ばせば上出来とされている」
「火球程度なら複数出して、こんな風にできますよ?」
「ちょっと待て! 私が知らない間にどれだけ成長している!?」
お父様の話を聞きながら私は火球を3つ手の平から順に出し、お手玉をしているかのように宙に浮かべ動かしてみせた。
手を一切動かしていないから魔力による操作と一目でわかり、唖然としたお父様が叫ぶ。
「ナドク様が実行して私にもやれと命令した、元騎士によるトレーニングを頑張りました」
「凄まじいな、流石は元騎士様……そういえば、ルミナはナドクに「昔の話」をしたのか?」
「聖獣の存在についてはは隠しましたけど、私と関わった人は疲労しにくいとは以前から伝えています。それでもキャサリンが使える癒しの魔法によるものと思ったみたいです」
隠している理由は、助けた聖獣に加護のことは話さないで欲しいとお願いされたからだ。
私に癒しの力がある程度で説明は構わないみたいだけど、聖獣について知っているのはお父様と私だけ。
「聖獣様を私は実際に見ていないし、ルミナが助けたというのも生命力を分け与えた程度だったな」
「はい。与えた後に聖獣はいなくなり、私は眠くなってしまいました。眠れば回復する程度の生命力を与えただけですけど……聖獣からすれば、命の恩人だったみたいです」
助けた聖獣は龍の子供みたいな姿をしていて、私と会話することもできた。
助けを求める声が聞こえたから、声の場所に向かっただけなんだけど……助けて加護を授かり、私や私と関わる人を癒やすことができる。
その力はお父様も実感していたようで、ナドクも婚約者の時は恩恵があったのは間違いない。
これからその恩恵がなくなっても、婚約を破棄したのだから私には関係のないことだ。
「話を戻そう……騎士試験に合格、できそうだな」
「私も同じことを考えていました」
「騎士になったルミナには、騎士の婚約者を見つけてきて欲しいものだ」
「婚約者を探しにいくわけではありませんよ」
「私が勧めた人があれだったから、次は自分で決めた方がよくないか?」
「それはそうかもしれません。お父様は人を見る目がなさ過ぎました」
お父様の評判がいいから私に縁談が幾つかきたようで、一番立場がいい伯爵家のナドクを選んでしまう。
思わず文句が出てしまうと、お父様は私に頭を下げる。
「すまなかった。騎士試験の手続きはしておくが、落ちても気にしないから気楽に受けてくるといい」
「絶対に受かってみせます。ナドクがどうなるのか楽しみです」
騎士試験に合格して心を折り、騎士として活躍することで更に折る。
話を一切聞かずに見下してきた人達は不愉快で、特に婚約破棄の元凶であるナドクは許せない。
その後の私は元騎士のトレーニングを更に多くこなしていき、騎士試験に備える。
合格するため全力を出すつもりで、それが騎士試験の時に騒動を引き起こすことになるなんて――この時の私は考えていなかった。
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