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20話

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 カルスが逃げ帰った夜――結局この日は誰も来なかった。

 食卓では満面の笑顔を浮かべているお母様の姿があって、話は順調に進んだのがよくわかる。

「伯爵家、侯爵家と侯爵家……そして、公爵家のジャック様がパトリシアと会いたいと言ってくれたわ!」

 それはお父様がカルスに告げた貴族達で、お母様は上手くいったようだ。

 それにしても……伯爵家や侯爵家をどうでもよさそうに言った辺り、お母様は公爵貴族のローウォン家しか狙っていない気がしてくる。

 そんなお母様を、お父様が注意していた。

「決めるのはパトリシアだよ。僕としてはジャック殿下はその、奇抜な人だと聞いているからね……」

「そうですわね! パトリシア、誰を新たな婚約者にしても私は何も言いませんが、私としてはジャック殿下を勧めるわ!」

 圧が強い……お父様は気弱に見えるけど、怒らせると怖いことをお母様は理解している。

 お父様としては、婚約破棄したばかりだから、別に婚約しなくても構わないと思っていそう。

 私としてはカルスみたいな人と婚約したくないけど……立場が上の人はカルスのイメージがあって不安になる。

 どうやらお母様はこれから会う予定も決めて来たようで、皆まずは私と話をしたいらしい。

 もう明日から1人目の方と会うことになり、お母様の本命ジャック様が一番最後、2週間後となっている。

「パトリシア。ポーションの件で一度話をしたいというだけだから、婚約者になるとかそんなに深く考えなくていいよ」

「わかっています」

「そ、そうか……なんだか誰かと婚約するという意志を感じるけど、そこまで気にすることはないからね」

 私は子爵家の令嬢として、役目を果たすべきだと思っている。
 それがお母様と似ていそうで、お父様は納得しつつも気遣ってくれていた。

 私として婚約者が決まらず、カルスと再び婚約する可能性が出るのが嫌だから、誰かと親しくはなりたい。

 相手が私を好きだと思ってくれるのが理想だと考えて――翌日から、私は貴族の人達と会うことになっていた。
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