11 / 74
11話
しおりを挟む
婚約破棄を言い渡されたばかりなのに、お母様は私に別の貴族の人と婚約して欲しそうにしている。
「パトリシアは婚約破棄を受けたばかりなんだ……すぐに新しい婚約者を決めなくてもいいだろう」
「そ、それもそうですね……この機会を逃したくなくて、つい焦ってしまいました」
お父様に宥められて、ようやくお母様は冷静になっていた。
少し落ち込んでいる様子のお母様に対して、お父様が呟く。
「パトリシアの凄さを知ったカルス様は、再び婚約したいと言ってくるかもしれない……婚約破棄したことはできる限り早く会いたがっている貴族に伝えるべきだろう。パトリシアは、それでいいかい?」
「はい。私はもうルジャス家とは関わりたくありません」
「急いだ方がよさそうね……明日からすぐに、婚約を破棄されたと話を通してきます!」
お母様が真剣な表情を浮かべながら決意して、私は安堵する。
これで――もし婚約破棄を取り消すなんて言われたとしても、拒む理由ができた。
どうなるかと思っていたけど、婚約破棄されたタイミングがよかったわね。
そう考えていると、お父様が申し訳なさそうに私を眺めて。
「パトリシア。婚約破棄されたばかりなのに男性と関わることになるが……大丈夫かい?」
相手の方が立場が上ということもあって、拒むことはできないらしい。
それも知っているし、相手が多いから婚約するかどうかは私が選べる。
婚約破棄されたばかりだと理由をつければ、すぐに婚約者が決まるわけでもないでしょう。
「話をするぐらいなら、大丈夫です」
今後の予定は大変そうだけど、ルジャス領に居た時より遙かに楽だ。
これも全て、魔法機関に研究の成果を提出したお陰でしょう。
試しにやったら巧くいっただけだから、運がよかったと思うしかない。
どうやらルジャス家としては、子爵令嬢の考えなんてマイナスになると考えて受け入れなかったらしい。
それでも私の研究成果は本物で……このことを知っている僅かな貴族達は、私に価値があると考えていそうだった。
「パトリシアは婚約破棄を受けたばかりなんだ……すぐに新しい婚約者を決めなくてもいいだろう」
「そ、それもそうですね……この機会を逃したくなくて、つい焦ってしまいました」
お父様に宥められて、ようやくお母様は冷静になっていた。
少し落ち込んでいる様子のお母様に対して、お父様が呟く。
「パトリシアの凄さを知ったカルス様は、再び婚約したいと言ってくるかもしれない……婚約破棄したことはできる限り早く会いたがっている貴族に伝えるべきだろう。パトリシアは、それでいいかい?」
「はい。私はもうルジャス家とは関わりたくありません」
「急いだ方がよさそうね……明日からすぐに、婚約を破棄されたと話を通してきます!」
お母様が真剣な表情を浮かべながら決意して、私は安堵する。
これで――もし婚約破棄を取り消すなんて言われたとしても、拒む理由ができた。
どうなるかと思っていたけど、婚約破棄されたタイミングがよかったわね。
そう考えていると、お父様が申し訳なさそうに私を眺めて。
「パトリシア。婚約破棄されたばかりなのに男性と関わることになるが……大丈夫かい?」
相手の方が立場が上ということもあって、拒むことはできないらしい。
それも知っているし、相手が多いから婚約するかどうかは私が選べる。
婚約破棄されたばかりだと理由をつければ、すぐに婚約者が決まるわけでもないでしょう。
「話をするぐらいなら、大丈夫です」
今後の予定は大変そうだけど、ルジャス領に居た時より遙かに楽だ。
これも全て、魔法機関に研究の成果を提出したお陰でしょう。
試しにやったら巧くいっただけだから、運がよかったと思うしかない。
どうやらルジャス家としては、子爵令嬢の考えなんてマイナスになると考えて受け入れなかったらしい。
それでも私の研究成果は本物で……このことを知っている僅かな貴族達は、私に価値があると考えていそうだった。
166
お気に入りに追加
6,459
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄されたユニコーンの乙女は、神殿に向かいます。
秋月一花
恋愛
「イザベラ。君との婚約破棄を、ここに宣言する!」
「かしこまりました。わたくしは神殿へ向かいます」
「……え?」
あっさりと婚約破棄を認めたわたくしに、ディラン殿下は目を瞬かせた。
「ほ、本当に良いのか? 王妃になりたくないのか?」
「……何か誤解なさっているようですが……。ディラン殿下が王太子なのは、わたくしがユニコーンの乙女だからですわ」
そう言い残して、その場から去った。呆然とした表情を浮かべていたディラン殿下を見て、本当に気付いてなかったのかと呆れたけれど――……。おめでとうございます、ディラン殿下。あなたは明日から王太子ではありません。
妹に全てを奪われるなら、私は全てを捨てて家出します
ねこいかいち
恋愛
子爵令嬢のティファニアは、婚約者のアーデルとの結婚を間近に控えていた。全ては順調にいく。そう思っていたティファニアの前に、ティファニアのものは何でも欲しがる妹のフィーリアがまたしても欲しがり癖を出す。「アーデル様を、私にくださいな」そうにこやかに告げるフィーリア。フィーリアに甘い両親も、それを了承してしまう。唯一信頼していたアーデルも、婚約破棄に同意してしまった。私の人生を何だと思っているの? そう思ったティファニアは、家出を決意する。従者も連れず、祖父母の元に行くことを決意するティファニア。もう、奪われるならば私は全てを捨てます。帰ってこいと言われても、妹がいる家になんて帰りません。
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?
よどら文鳥
恋愛
デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。
予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。
「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」
「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」
シェリルは何も事情を聞かされていなかった。
「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」
どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。
「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」
「はーい」
同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。
シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。
だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。
人質王女の婚約者生活(仮)〜「君を愛することはない」と言われたのでひとときの自由を満喫していたら、皇太子殿下との秘密ができました〜
清川和泉
恋愛
幼い頃に半ば騙し討ちの形で人質としてブラウ帝国に連れて来られた、隣国ユーリ王国の王女クレア。
クレアは皇女宮で毎日皇女らに下女として過ごすように強要されていたが、ある日属国で暮らしていた皇太子であるアーサーから「彼から愛されないこと」を条件に婚約を申し込まれる。
(過去に、婚約するはずの女性がいたと聞いたことはあるけれど…)
そう考えたクレアは、彼らの仲が公になるまでの繋ぎの婚約者を演じることにした。
移住先では夢のような好待遇、自由な時間をもつことができ、仮初めの婚約者生活を満喫する。
また、ある出来事がきっかけでクレア自身に秘められた力が解放され、それはアーサーとクレアの二人だけの秘密に。行動を共にすることも増え徐々にアーサーとの距離も縮まっていく。
「俺は君を愛する資格を得たい」
(皇太子殿下には想い人がいたのでは。もしかして、私を愛せないのは別のことが理由だった…?)
これは、不遇な人質王女のクレアが不思議な力で周囲の人々を幸せにし、クレア自身も幸せになっていく物語。
妹が嫌がっているからと婚約破棄したではありませんか。それで路頭に迷ったと言われても困ります。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるラナーシャは、妹同伴で挨拶をしに来た婚約者に驚くことになった。
事前に知らされていなかったことであるため、面食らうことになったのである。
しかもその妹は、態度が悪かった。明らかにラナーシャに対して、敵意を抱いていたのだ。
だがそれでも、ラナーシャは彼女を受け入れた。父親がもたらしてくれた婚約を破談してはならないと、彼女は思っていたのだ。
しかしそんな彼女の思いは二人に裏切られることになる。婚約者は、妹が嫌がっているからという理由で、婚約破棄を言い渡してきたのだ。
呆気に取られていたラナーシャだったが、二人の意思は固かった。
婚約は敢え無く破談となってしまったのだ。
その事実に、ラナーシャの両親は憤っていた。
故に相手の伯爵家に抗議した所、既に処分がなされているという返答が返ってきた。
ラナーシャの元婚約者と妹は、伯爵家を追い出されていたのである。
程なくして、ラナーシャの元に件の二人がやって来た。
典型的な貴族であった二人は、家を追い出されてどうしていいかわからず、あろうことかラナーシャのことを頼ってきたのだ。
ラナーシャにそんな二人を助ける義理はなかった。
彼女は二人を追い返して、事なきを得たのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる