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11話

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 婚約破棄を言い渡されたばかりなのに、お母様は私に別の貴族の人と婚約して欲しそうにしている。

「パトリシアは婚約破棄を受けたばかりなんだ……すぐに新しい婚約者を決めなくてもいいだろう」

「そ、それもそうですね……この機会を逃したくなくて、つい焦ってしまいました」

 お父様に宥められて、ようやくお母様は冷静になっていた。

 少し落ち込んでいる様子のお母様に対して、お父様が呟く。

「パトリシアの凄さを知ったカルス様は、再び婚約したいと言ってくるかもしれない……婚約破棄したことはできる限り早く会いたがっている貴族に伝えるべきだろう。パトリシアは、それでいいかい?」

「はい。私はもうルジャス家とは関わりたくありません」

「急いだ方がよさそうね……明日からすぐに、婚約を破棄されたと話を通してきます!」

 お母様が真剣な表情を浮かべながら決意して、私は安堵する。

 これで――もし婚約破棄を取り消すなんて言われたとしても、拒む理由ができた。

 どうなるかと思っていたけど、婚約破棄されたタイミングがよかったわね。

 そう考えていると、お父様が申し訳なさそうに私を眺めて。

「パトリシア。婚約破棄されたばかりなのに男性と関わることになるが……大丈夫かい?」

 相手の方が立場が上ということもあって、拒むことはできないらしい。

 それも知っているし、相手が多いから婚約するかどうかは私が選べる。

 婚約破棄されたばかりだと理由をつければ、すぐに婚約者が決まるわけでもないでしょう。

「話をするぐらいなら、大丈夫です」

 今後の予定は大変そうだけど、ルジャス領に居た時より遙かに楽だ。

 これも全て、魔法機関に研究の成果を提出したお陰でしょう。

 試しにやったら巧くいっただけだから、運がよかったと思うしかない。

 どうやらルジャス家としては、子爵令嬢の考えなんてマイナスになると考えて受け入れなかったらしい。

 それでも私の研究成果は本物で……このことを知っている僅かな貴族達は、私に価値があると考えていそうだった。
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